浜松方式医療体制とは、浜松市を中心に静岡県西遠地区75万人を対象とした1次夜間救急室を中心に2次病院の輪番制を併用し、開業医、勤務医が一体となって行うもので、昭和49年に発足したシステムである(図1)。一方、集団災害時の救急体制についても昭和59年以来、この浜松方式救急体制に準じ、過去に発生した静岡県内の救急対応を検討して、救急隊と2次病院連携を中心に重症度識別によるtriageを訓練実施してきた。
静岡県では過去20年間に1977年7月東名高速日本坂トンネル内で発生した173台の車両追突事故による延焼で死傷者9名を出した災害をはじめ、静岡市駅前地下街ガス爆発事故(死傷者237名)、掛川市“つま恋”ガス爆発事故(死傷者42名)の集団災害を経験している。これらの集団災害のうち前述2者の都市ガス爆発事故における救急医療の対応について検討すると、静岡市駅前地下街ガス爆発事故では現場に最も近く収容能力最大と考えられた総合病院に軽症者が集中し、その対応に追われ重症者は私的救急病院に運ばれ、15名全員が死亡した。続いて発生した掛川市“つま恋”ガス爆発事故でも救急の対応は類似している。負傷者は28名(重症16、中等症4、軽症8)と病院到着までに死亡14例が発生したが、現場より約15分で収容可能な浜松市内の総合病院には何ら連絡することなく、現場近くの市民病院と私設病院の2ヵ所で対応し、市民病院に死亡例を含め34人収容している。この2つの集団災害時の救急医療活動を反省すると、集団災害時のtriage(重症選別)が救命手段に欠かせない方法と結論した。そこで浜松方式救急体制では集団災害時の対応として、その日の輪番2次病院の医師と看護婦は出動する救急隊と共に災害現場で、赤(重症)黄(中等症)青(軽症)の順に重症度識別を患者に結びつけるtriageを応急処置と平行して行い、重症度に応じて2次病院群に振り分けることを協約訓練してきた。
1994年1月にロサンゼルスで発生したマグニチュード6.6の強震に伴う大災害時の救急活動は、現場およびその近郊の病院が災害時のマニュアルを持っており、これに従って行き届いた救急活動が行われた例として高く評価されている。
1993年7月、北海道奥尻島沖で発生した地震に伴う災害では、地震の5分後に発生した津波によって死者201名、行方不明33名、負傷者236名を出した。この時には報道機関が関与した連絡の早さが、救急活動の開始を早めたとされる。しかし、救急医療の活動は開始から1〜2日完了した。その理由として津波による死亡者が多く、死亡か無傷かという状態であった点が通常の地震災害と異なった特徴とされる。
集団災害時の救急システムについては、現状では消防署の仮想災害マニュアルに沿って、その日の輪番当番病院が災害現場に出動して重症患者の識別を優先するtriageを行う事になっている。しかし、前述した大災害時の対応を検討すると、未熟なマニュアルと考えざるを得ない。
ロサンゼルス地震災害では1419名の入院者を出したにもかかわらず、7地区病院で災害マニュアルに従ってtriageと駐車場を緊急野外病院に変更し対処している点、大いに学ぶべきところがある。さらに、北海道奥尻島沖津波災害では死者の数が負傷者対比で多く、津波災害時の救急医療システムを考える上で参考になる。
以上のことから、大災害時の救急制度において整備を急ぐべき点として次のような事があげられる。
b. 生命維持管理装置、マルチモニタなどへのバッテリー内蔵の義務付け
b. キャスタつきの機器の暴走
b. 設備側;貯留槽の大容量化・確実な固定など
災害医療の中での人、機器、設備等の役割と重要度を適正に評価する方法が必要である。災害医療の内容・規模による分類、災害発生後の時系列的な必要性の変化、操作者の確保と関係等について検討する必要がある。
災害に強い機器・設備
b. 駆動エネルギーが遮断されることを織り込んだ用手法との共存
c. 駆動エネルギーの確保;災害時に外部からのエネルギー供給が途絶することを念頭に置いた内部電池や発電機の設置
d. 異常が発見しやすく、修理や保守がしやすい設計の、復帰の早い機器の検討・開発
対策済機器が平常時に果たす役割
災害時のみ利用可能なものは、ユーザーが割高感・無用感・煩わしさなどのマイナスイメージを持ちやすい。これを、安全を買うという思想に転化していく教育や体制が必要である。さらに、災害時対策機構が平常時にも役に立つ機構であれば、安全と経済の両立が成り立つ。また災害時機能を普段使用することによって、災害時の操作に慣れることもできる。
設備の対策
機密の保持
壊れた機械内部から、機器の企業機密に属するものや、患者の個人情報に関するものが盗難される可能性があるのでその対策も必要である。
救急患者が発生した場合は、まずは客室乗務員が対応し、それで対応できないと判断した場合はドクターコールを行う.過去4年間のデータ-を見ると、ドクターコールも国際線の方で多く見られ、それに対する医師・看護婦の援助の申し出があった確立は、国際線、国内線ともに約90%と高い.
I:機内傷病発生を抑制するための対策
II、傷病が発生した場合の対策
航空機内への医療品搭載
日本航空で現在使われている救急医療品は次のようなものである。
ドクターキットは1993年より搭載が開始され、ドクターコールに対し援助を申し出た医師によって使用される。このキットの搭載によって、援助を申し出た医師ができる救急処置の範囲が拡大した。
*1998年から国内線にもドクターキットが搭載されている。
カリブ海地域は、暴風、洪水、火山、地震から油や化学物質の流出まで様々な自然および技術災害の危険に対して脆弱であるため、早期警報地域対策および保険を含めた対応戦略を改善する必要性が大きい。地球温暖化、海水面の上昇、一層厳しい天候がより長期的な脅威になる可能性がある。また、各島単独の対応能力が限られており、訓練された人員が少ない、通信設備が悪い、経済基盤が弱い等の理由のため、危険性が一層高くなる。
1996年 9件のハリケーンを含む名前の付いた暴風雨が13件
事故
洪水
地震
火山
また、カリブ海地域の災害の国家経済に対する影響は重大である。米州機構(OAS)の地域開発・環境省のデータによれば、1960年から1994年までの間に、自然災害のために16のカリブ海諸国で90億ドル以上の損害があった。カリブ海諸国の災害は、GDP(国内総生産)や成長率に重大な影響を及ぼしうる(図1)。
図1
世界気象機関(WMO)は人命を奪い、大きな破壊を引き起こす単一の災害によって、何年にもわたって開発活動が後退してしまうことがありうることを強調してきた。高騰する保険料や高い再建・復興コストは、観光と漁業への依存度が高い小さな島の経済に対し、かなりの負担となっている。
カリブ共同体の保険および再保険に関する特別調査委員会は、数多くの危険が併発し、脆弱な人々が広範に存在し、対策が限られている状況に対し、「社会のあらゆる部分で危機管理および脆弱性軽減活動に対し強力かつ慎重な努力を行うこと」を勧告し、あらゆる教育カリキュラムにおいて包括的な危険地図や適切な資料を用い、国家戦略の政策および活動レベルでこの勧告を制度化した。
<訓練>
<物資の輸送>
<無線通信>災害対策機器・システム・設備のあり方に関する提言
小野哲章、医器学 67: 77-81, 1997機器・設備の実態と問題点
災害に強い医療機器・設備のあり方
災害対策の規格化
二重化構造、用手法確保
飛散物防止、危険ガス噴出防止
有害物質の使用禁止
危険状態の放置機器・設備破壊時の安全確保
航空機内救急医療(法的な問題点を含めて)
安藤秀樹ほか、Biomedical Perspectives 8 (2): 219-226, 1999
はじめに
【現状】
【対策】
カリブ海地域の高コストの災害の脅威
国際赤十字・赤新月社連盟.世界災害報告 1997年版、p.79-89
カリブ海地域の災害
国 GDP平均成長率
1980-1988年GDP平均成長率
1989-1991年ドミニカ国 4.9 4.3 モンセラット 3.7 4.4 セントキッツ・ネイヴィス 6.0 4.9 アンティーグア・バーブーダ 6.8 2.2 ジャマイカ 5.0 0.8
訓練、物資の輸送、無線通信を三本柱とした、地域に根ざした災害対策事業
<目的>