Subject: [eml-9: 02582] 中四国地方会(長文) From: YZ Date: Sat, 15 May 1999 21:34:44 +0900 (前略) さて、今日の救急医学会中国四国地方会での特別講演「脳死臓器移植 を経験して」に関する新聞報道を要約してご紹介します。 ●高知赤十字の西山部長 脳死移植で講演 第15回日本救急医学会中国四国地方会が15日、高松市で開かれ、臓 器移植法に基づく全国初の脳死判定が実施された高知赤十字病院の西山 救急部長が「脳死臓器移植を経験して」との題で講演した。西山部長は、 患者のプライバシー確保や家族への配慮の大切さなどについて、集まっ た医学者らに語った。 西山部長は、反省点の一つとして、患者の家族に、脳死を納得できる ように説明する人がいなかった点を挙げた。また医師の側から家族に脳 死判定を切り出すことの難しさを痛感したという。さらに、脳死移植に 反対している人たちがいる現状をふまえ、「臓器移植はプライバシーの 確保でなりたっているもの」とし「リアルタイムで報道することが、医 療の透明性につながるとは思わない」と指摘した。 (朝日新聞高松版 990515より) (後略)
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Subject: [eml-9: 02597] 中四国地方会:西山先生の講演 From: Genro Ochi Date: Sun, 16 May 1999 23:18:35 +0900 愛媛大学救急医学の越智です。YZさんより、西山先生の講演につい て、貴重な記事をご紹介いただき、有難うございました。私は報道の人 が会場にいるのは知りませんでした。西山先生のご講演は、患者さんの 細かな情報については外部に持ち出さないで下さいという前置きのもと に行われました。 emlでご紹介できる部分、特に西山先生のお考えなど について、幾つかのメールでご紹介したいと思います。 ◎ YZさんは書きました(eml-9: 02582): >●家族への配慮大切に 高知赤十字の西山部長 脳死移植で講演 高松 (中略) >「家族側から臓器提供の申し出があったが『救急で運ばれてきた患者 >の家族には聞けない』と、医師の側から家族に脳死判定を切り出すこ >との難しさを痛感したという。」というくだり、救急の現場におられ >るみなさんはどう思われますか? この部分は私にはよく理解できました。受け持ち患者さんが脳死 → 心臓死の経過をたどりそうなケースで、、 ・今回実際には、患者家族から患者さんが臓器提供の意思を持っている という情報をいただいた。そうでない場合に、 ・診療側から家族に、患者さんが臓器提供の意思をお持ちかどうか聞く ことは、「医療の継続に対して消極的。早く脳死診断して臓器提供に 持ってゆきたいと考えている」と受け取られる恐れがある。 ・診療側が、家族に患者さんが臓器提供の意思をお持ちかどうか聞くこ とが、患者さんの自己実現をお手伝いするために必須の(これも広い 意味では診療上の)行為と思うことができれば、家族に質問すること は可能でしょう。 ◎ 今回の西山先生のご講演をお聞きしていて、患者さんの住所を報道し たN○Kに、改めて憤りを感じました。 イ)脳死での臓器提供者が特定されていけない理由 ・誰から誰へという臓器の動きが特定されてはいけない(謝礼とか、 売買といった問題が生じうる)。 ・脳死判定に反対のグループから、脳死での心臓摘出を許した家族や それを遂行した医療担当者に、不当な反発が向けられうる。 ロ)患者さんの住所を報道してはいけない理由 ・地方都市では患者さんの住所の一部(地区名など)が漏れただけで も、十分に患者さんが特定されうる。 ハ)N○Kがこの患者さんの住所を報道しても、患者さんが特定された り、家族や近隣の人が取材の嵐にさらされるようなことはないと考 えていたとすれば、それは結果として判断の誤りであり、局として 反省、謝罪の必要がある。 ニ)N○Kはこの件で今何をなすべきか。 ・報道番組や出版物の中で、組織の誤りを認めること。 ・今回の経過の中で、誤りを生じた背景について自己説明をする。 ・例えば本年の人気番組「紅白歌合戦」を中止して、今回の事態の重 要性を示す。 ホ)N○Kに対しどのような形で意見表出をするか。 ・西山先生の講演、著作などとして ・日本赤十字社からの意見表出 ・移植ネットワークからの意見表出として ・日本救急医学会からの意見表出として *受信料を支払っている一市民としての意見を、NHKの刊行物や新 聞などに表出。 *)今回の移植報道には報道全体としての問題があるわけですが、NHK についての問題にしぼれば、特に患者さんが特定されうる報道をしたこ とについての私の意見は上記の通りです。皆様のご意見は如何でしょう か。
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Subject: [eml-9: 02602] Re:中四国地方会:西山先生の講演 From: WK Date: Mon, 17 May 1999 00:52:59 +0900 WKです。 YZさん、越智さん、ありがとうございます。 当事者として関わられた方々の貴重な経験を 今後に生かして行くことが大切だと思います。 少し付け加えさせて下さい。 On Sun, 16 May 1999 23:18:35 +0900 Genro Ochiさん いわく : > イ)脳死での臓器提供者が特定されていけない理由 > ・誰から誰へという臓器の動きが特定されてはいけない(謝礼とか、 > 売買といった問題が生じうる)。 > ・脳死判定に反対のグループから、脳死での心臓摘出を許した家族や > それを遂行した医療担当者に、不当な反発が向けられうる。 ・移植を待っている患者が不必要に大きな心理的精神的衝撃を受ける。 脳死臓器移植は本来的に他者の死を前提としているとはいえ、 その死者が特定されたり、あるいは臓器提供が確定する以前に 不確実な情報がもたらされることは、自らも死に直面している 待機患者にとっては耐え難い事態である。 > ロ)患者さんの住所を報道してはいけない理由 > ・地方都市では患者さんの住所の一部(地区名など)が漏れただけで > も、十分に患者さんが特定されうる。 ・患者さんが特定された結果、ご家族の日常生活に大幅な支障を来す 可能性がある。 > ハ)N○Kがこの患者さんの住所を報道しても、患者さんが特定された > り、家族や近隣の人が取材の嵐にさらされるようなことはないと考 > えていたとすれば、それは結果として判断の誤りであり、局として > 反省、謝罪の必要がある。 ・N○Kはただ第一報を流しただけはなく、「ニュース」の内容を 繰り返して連呼し、率先してヘリコターによる中継を行うなど、 報道合戦の加熱を促進した。 毎日新聞3月7日の曽野綾子さんの文には以下のように書かれています。 *これは、原文ママなので、伏せ字にはしません。 > 今度、何よりも目を覆うほどのしつこさで無礼を極めたのが、NHKで > あった。NHKには、人間の悲しさを理解する力があるのだろうか。地震 > のニュース並みに「繰り返します」と三度も続けて同じ内容を読み上げ > 「では高知から中継でお伝えします」と飛行機の墜落事故並みのけたたま > しさだった。 > 一人の人が今、亡くなろうとしているのに、と私は心の中で反抗的につ > ぶやいていた。その方は、家族にとって愛された娘、大切な妻、とりすが > って泣きたいほどのいとしい母であったかもしれない。大切な人の突然の > 死を前にして、家族はその悲しい事実に生きた意味を付加したいと願い、 > 看病に疲れ果てた中で、世間の雑音と闘った。しかしマスコミはまさにハ > イエナのようにその死に群がった。 > ホ)N○Kに対しどのような形で意見表出をするか。 > ・西山先生の講演、著作などとして > ・日本赤十字社からの意見表出 > ・移植ネットワークからの意見表出として > ・日本救急医学会からの意見表出として > *受信料を支払っている一市民としての意見を、NHKの刊行物や新 > 聞などに表出。 やはり、ここは学会レベルでも動いていただきたいと思います。 厚生省記者クラブとの交渉には、日本救急医学会も関わっていましたので。
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Subject: [eml-9: 02609] Re:中四国地方会:西山先生の講演 From: "Joji (George) TOMIOKA" Date: Sun, 16 May 1999 23:09:57 -0400 冨岡譲二@サンタクルス医療供給システムプロジェクトです。 越智さん、WKさん、みなさま、こんにちは。 At 11:18 PM +0900 99.5.16, Genro Ochi wrote: > 今回の西山先生のご講演をお聞きしていて、患者さんの住所を報道し > たN○Kに、改めて憤りを感じました。 (中略) > ホ)N○Kに対しどのような形で意見表出をするか。 (中略) > ・日本救急医学会からの意見表出として At 0:52 AM +0900 99.5.17, WK wrote: (中略) > やはり、ここは学会レベルでも動いていただきたいと思います。 > 厚生省記者クラブとの交渉には、日本救急医学会も関わっていましたので。 現在、国外にいますので、今回の移植については、詳しい事情を知り得ずにい ましたが、N○Kのとった態度が、越智さんの書かれた通りだとしたら、これ は、救急治療を受けている患者さん・家族へのマスコミによる暴力であり、治 療に携わっている救急医への冒涜ですから、救急患者さんの治療に携わる身と して看過することはできません。一救急医としての立場だけではなく、日本救 急医学会の会員としても何らかの活動をすべきではないかと考えています。 幸い、このemlには日本救急医学会の会員の方も多数いらっしゃいます。この emlの中だけでも、ある程度の意見がまとまれば、日本救急医学会への働きか けができると思うのですが。みなさんのご意見はいかがでしょうか? +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+- Dr. Joji TOMIOKA(冨岡譲二) ボリヴィア サンタクルス医療供給システムプロジェクト +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
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Subject: [eml-9: 02641] Re: 中四国地方会:西山先生の講演 From: NG(報道関係者) Date: 18 May 99 08:55:37 +0900 ・・さん、WKさん、皆さん。NGです。 さっきのxxさんの自殺ケースの提供の場合の議論で、・・さんから紹介があった 厚生省の発表ルールは第2次バージョンですが、以前、私が「こっちが良かった」 (が救急医学会の反対でつぶれた)という第1次バージョンでも、死因は事故死か病 死か程度しか明かされないということになっており、記者サイドはやむを得ないだろ うと言う雰囲気だったと思います。 今回の移植のケースが、手法としては第1次バージョンに近い形であり、情報コン トロールに振れすぎたかなとのコメントもあったようですから、西山さんの講演にあ ったように、事前の取り決めごとによって、もう少しスマートに行くようになり、現 場の混乱がより少なくなり、関係者が悩まずにすむようになることを望んでいます。 大きく言えば、悪い方向には向いていないと思うので、安行さん、もう少しの辛抱か な。YZさん、私ははずしてませんよね? 1999年 5月 17日 (月) 0:52 AM, wrote WK > ・N○Kはただ第一報を流しただけはなく、「ニュース」の内容を > 繰り返して連呼し、率先してヘリコターによる中継を行うなど、 > 報道合戦の加熱を促進した。 あおられた面があるのは事実でしょう。今回、N○Kが押さえた報道をしたことも あって、新聞2紙が2度目の判定終了後まで待ったし。確かに、N○Kが初っぱなか ら病院名を明らかにしたのはびっくりしました。想定では病院名を明かさないででも 現場から病院の全景を背景にレポートが始まって「あれはどこだ」と、あわてて追い かけるということを想定していましたから(^_^;)。 >> 一人の人が今、亡くなろうとしているのに、と私は心の中で反抗的につ >> ぶやいていた。その方は、家族にとって愛された娘、大切な妻、とりすが >> って泣きたいほどのいとしい母であったかもしれない。大切な人の突然の >> 死を前にして、家族はその悲しい事実に生きた意味を付加したいと願い、 >> 看病に疲れ果てた中で、世間の雑音と闘った。しかしマスコミはまさにハ >> イエナのようにその死に群がった。 これは、全マスコミに言えることです。 >> ホ)N○Kに対しどのような形で意見表出をするか。 (中略) >やはり、ここは学会レベルでも動いていただきたいと思います。 >厚生省記者クラブとの交渉には、日本救急医学会も関わっていましたので。 かつて [eml-9: 01617] Re: 週刊誌の報道(移植)について(長文) で私がかなりつっこんで紹介したように、救急医学会も混乱を予想できなかった当 事者として、一定の反省を持って登場せざるを得なくなります。そうでないと、あの 場での議論に関わった当事者として、N○Kだけを非難はしにくい。「絶対混乱しま す」との度重なる説明にも、当時の学会幹部からは「厚生省が出すことも含めて摘出 後でないと同意できない。マスコミは勝手におやりなさい」的な発言になって、物別 れで終わったわけですから。 あの時は、穏健派記者の意見で、提供施設サイドの会見などは摘出後でもやむを得 ないかもしれないが、厚生省が2度目の判定終了後からそれまでの間、限られた情報 を出すことは、法で求められている開かれた移植のあり方にふさわしいのに、なぜ学 会側は法に基づいた移植をしてもらおうと思う厚生省と記者クラブの準備に横やりを 入れるのかとの疑問の声が強かった。結局、その横やりに対して厚生省も救急医学会 に協力をしてもらわねば移植が実施できないこともあって、より配慮をして、学会サ イドの要望を受けた段取り案を示してしまったわけで、今回はそれを反省して自らと ネットが表に出て会見したわけですよね。方式や良しですが、つぎはその関係責任者 にどこまで事前に了解事項をかためて(以下省略)