災害医学・抄読会 990625

第1章.都市災害の問題に対応する

国際赤十字・赤新月社連盟.世界災害報告 1998年版、9-18
(担当:吉田)


990610. 第4章 棒きれとビニールシートを超える避難所対策 (国際赤十字・赤新月社連盟.世界災害報告 1998年版、44-53) Date: Fri, 25 Jun 1999 17:30:27 +0900 To: gochi From: gochi@m.ehime-u.ac.jp (Genro Ochi) 災害医学レポート「避難所対策」 19班 39番 坂本香奈  個人、家族、コミュニティーのもっとも基本的なニーズの1つは、安全で快適な 生活空間である。緊急項目としての避難所は「家」である。家は防護手段であり、安 全で、プライバシーが保たれ、環境から守ってくれるものである。家並みはコミュニ ティーを構成する。このような広範なニーズは、避難所を計画し、提供する上で、数 平方メートルの生活空間と水の入手のための用件と同様に重要である。 人道援助における戦略 A 人々が家に留まる場合  自然災害に被災した地域の人々が、自分たちの家やその近くに留まる場合。たと え家が破壊されたり損傷してしまった場合でも、人々がそこで援助することによって 、生命維持能力が著しく高まり、早くもとの生活に戻りやすくする。支援は、人々が 生活し、互いを知り、社会構造の維持が可能で、生活ができるだけ正常に保たれてい る地域に直接入っていく。   B 人々が別の場所へ避難し、その受け入れ側地域社会に留まる場合  国内紛争の最中や大規模な自然災害の後は、地域社会全体がその家や地区から逃 れなければならない場合がある。人々は、大部分の所有物を残したまま立ち去ること が多い。  避難民が、家族あるいは歴史、宗教その他の絆を共有する人々とともに受け入れ 先の地域社会に吸収された場合は、事態はスムーズに運ぶ。  地元の人々と避難民の双方が実質的に災害の被災者であるため、政府や担当機関 は、必要性に応じて全住民に対して援助を提供する必要がある。  安全の問題、環境に対する長期的作影響、さらに避難所、診療所、学校、商店の すべてを共有することができれば、援助に総合的に取り組むことができ、被災者が自 分の家に戻った後も受け入れ側地域社会にポジティブな影響を持続的にもたらす可能 性がある。 C 人々が集団で別の場所に避難し、その集団のままそこに留まる場合  避難民の規模が大きすぎる場合、避難民が自らの地域社会もしくは受け入れ地域 社会の要素による迫害や暴力を恐れている、安全や政治上の問題が発生する、などの 潜在的な問題が存在する場合、避難民がキャンプ生活をすることになる。  受け入れ側政府がキャンプ地を選定する場合が多く、通常水辺や衛生設備のある 箇所に設置される。  将来のキャンプ地と定住地の最初の選定は、その後の環境ダメージに関するアセ スメントを実施し、環境管理分野の専門家に相談することが必要である。緊急を要す る段階では通常生命を救うことに重点が置かれるが、有効な環境アセスメントと事業 計画は、救援活動の全期間を通じて環境に及ぼす結果の質と全体コストを決定する上 で重要な決め手となる。 女性とキャンプの重要性  キャンプ内の生活は、女性にとっては男性に比べてかなり苛酷になることが多い 、これは、多くの人が移動する際に、社会構造が崩壊し、女性の社会的立場や支援構 造が危うくなるためである。家族が女性に求める欲求が増えるだけでなく、レイプや 窃盗の脅威のために彼女たち自身のみの安全も低下する。  したがって、キャンプでは女性とその安全確保には特に配慮しなければならない 。女性はキャンプの同じ場所にグループで生活させ、夜間は地元の警察によってキャ ンプ内をパトロールする必要がある。 各種要素からの保護  避難所のニーズは、予想される滞在期間とその地域の気候によって決定される。  既存の家を使用することは、常に最前の短期的解決策であり、それが利用できな い場合は、シート、テント、仮設住居、安定した煉瓦でできた建造物が利用可能であ る。被災者自身が持つ既存の建造物を修理するか、または受け入れ家族の施設を拡充 することを優先実施すべきである。  環境を損なうことなく、不慮のけがや疾病を減少させ、安全性、人間の尊厳、プ ライバシーを尊重するためには、避難民が家族のために十分な避難所を得なければな らない。家庭には、肉体的安全と精神的安全、プライバシー、気象からの保護が必要 である。  家族ごとの避難施設は、複数家族の共同避難施設よりもよい。たとえ大型テント にいくつかの家族が収容されていたとしても、生活空間を家族単位のセクションに分 けることは可能である。人間の尊厳と各家庭の特性を重んじるなら、人々が自分のも のだといえるスペースは必要であろう。 調理と衣類  避難民は十分な衣類を持っていない。そのため、女性、子供、男性のそれぞれに 適した衣類を提供しなければならない。また、天候や文化的な問題も考慮しなければ ならない。女性は、衛生上の理由や個人の尊厳を保つために特別な衣類を必要とする。  家を出てきた避難民家族には、家事用品(ストーブ、鍋、バケツ、洗面器、スプ ーン、皿、コップなど)や清潔に保つための石鹸を提供する必要がある。 避難民の自助努力を支援する  数週間以上避難生活を続けた人々には、自助努力が必要となってくる。たとえば 、農作業は食事の改善に役立ち、健康的な仕事であるとともに自立心が高まる。いく つかの簡単な農作業の道具や家庭菜園のための土地を確保するよう努力し、農業及び 栄養についての研修事業の開始を検討しなければならない。  避難所は、水、食料、医療と並んで、災害の初期の段階において生き残るための 決定的な要素である。避難所が、人々の心の状態、病気に対する抵抗力、環境に対す る防御力、家族の生活を支える能力に影響力を及ぼし、それによって人々が生き残る チャンスを著しく増大させることができるのだ。


阪神・淡路大震災と集中治療:大阪地区での受け入れ体制

当院の初期対応と近隣3次救急センターの診療状況について

月岡一馬、ICUとCCU 19: 491-8, 1995(担当:青野)


990607. 阪神・淡路大震災と集中治療:大阪市立大学集中治療部での受け入れの状況 (行岡秀和、ICUとCCU 1995 6 19, 499)


被災から半年、現状と今後の課題

―被災者を支える開業医の報告―

広川恵一、メディカル朝日 1995-9, 36-41(担当:藤田)


地震に対して器械はこうあるべきだ ―臨床検査技師の立場から― (田中千鶴見ほか、医器学 67: 62-7, 1997) 救急医学レポート              19班 99番 山本 祐司  阪神淡路大震災は平成7年1月17日午前5時46分に発生した兵庫県南部を震源とするマグニチュード7.2の大震災で最大震度7を記録し、日本で初めて近代的な大都市を襲った直下型地震で、死者6,400人を超え、全半壊20万戸という未曾有の大災害をもたらした。 震災の影響 1.医療機器(破損機器)  ・共通部門:予浸槽、流し台、熱風循環定温乾燥器、無塵熱風強制循環式定温乾燥器、プレートウオッシャー、プレハブ冷蔵室、プレハブ冷凍室、化学天秤、上皿天秤  ・血液:ディスカッション顕微鏡MACROX、FACSCANレーザー  ・病理:多室型孵卵器1台、パラフィン包埋ブロック作製装置  ・脳波:脳波計EEG4113、ビデオデッキ、モニター  ・緊急検査:自動血球計数期K-4500、卓上遠心器  ・聴力・平衡:電気眼振計、オーディオメーター、ボックス型無響室・電気味覚計、顔面神経刺激装置  ・一般:全自動尿分析装置  2.患者資料保存:患者保存資料のうち現物保存を行っていた資料は破損ないし、散乱し、ビデオテープも含めて、全て壊滅状態であった。 フロッピーディスクをデータベースとする電子ファイリングシステムを用いた資料は破損を受けることはなかった。  3.スライド標本:病理標本や血液像は、多くが破損してしまった。  4.患者血清保存:血清を3〜4ヶ月保存していたが、水冷式冷凍庫のため、水の供給ができない原因で、全てこれらの試料は使用不可となった。  実施した対策 1/17 職員の安否確認の連絡並びに二次災害防止のため漏電、有機溶媒の漏れのチェック、薬品、破損検体の処理および各医療機器の点検、整備し不良機器についてはメーカーに至急にメンテナンスを依頼。 1/19 震災前の24時間緊急検査体制を強化。 1/22 震災から5日後に、救援のタンク車から飲料水の大量供給があったため、これにより化学自動分析器の稼動が再開された。 1/23 ドライケミストリーを借り受け、緊急検査項目の追加(血中アンモニア、緊急生化学10項目)。電解質測定用機器およびCRP測定用機器を借り受け、緊急検査項目の充実を図り検査の24時間体制を敷いた。 1/29 緊急自動化学分析器のシステムを変更し、可動人員を減少できた。 2/1 臨床検査部、放射線科、核医学科で、現在検査可能な項目を挙げ、院内各科に連絡通知した。 2/7 ルーチーンの臨床化学検査の自動分析を開始。 復旧・回復状態 1/17・18 緊急検査機器をチェックしてNa/K、血糖、各種血液検査、血液ガス、トロンボテストの測定が可能であることが判明し、測定開始。 1/19 感染症関係の検査項目を追加。 1/21 細胞診開始。 1/22 緊急検査全項目測定可能。尿検査開始。血液一般・尿・便検査開始 1/23 アンモニアの測定開始。組織検査、RIインビトロ、聴力検査、腹部超音波、血液像、心電図、凝固検査開始。 1/24 生理機能検査(心エコー、心電図、ホルター)開始。HBA1c、腫瘍マーカー項目追加。 1/27 脳波検査開始 2/9 全検査項目測定可能  今後の対策  停電対策:自動機器を中心に機器のほとんどすべてを電気に頼っている。震災後挫滅症候群の診断を始め、被災者の救急対応にとって検査の重要性は周知である。特に緊急検査室には停電しても自家発電が作動するように空冷式に変更した。  断水対策:水を必要としない緊急測定機器を常備して置く必要がある。 医療機器対策:床にボルトを打ち込んで機器を固定するのが望ましい。緊急検査に必要な機器(自動化学分析器、自動血球計算機、交差試験関係、心電計、超音波装置)にはバッテリーなどを搭載し、それが数日間使用できるものが望ましい。しかし、実際には自家発電コンセントの確保が先決であると考える。冷蔵・冷凍庫は固定の必要があり、水冷式から空冷式への変更が望ましい。水を必要としないドライケミストリーが開発されているが、ランニングコスト等でなかなか導入されていない。震災当初は、医療機器メーカー並びに代理店も被災したため、連絡がとれず、早期の点検修理が困難であったので、充分に話し合う必要がある。  患者試料保管対策:電子ファイリングシステムの利用も一例としてあげられ、現物保存の試料については、保管庫等の転倒防止金具や耐震マット等の設置が必要である。  連絡網対策:電話以外の連絡方法を考えておく必要がある。  まとめ:医療機器、コンピュータ関係、冷蔵庫類、試薬棚は固定し、動かないようにする。生理機能検査等の画像やパターンのデータも光ディスク等をデータベースとする電子ファイリングシステムを用いた試料保管を勧めたい。さらに重要なことはライフライン確保があれば、現状の機器を臨機応変に使用することで対応できるのではないかと思われる。


大事故災害:第15章 病院の対応

小栗顕二・監訳、大事故災害の医療支援、東京、へるす出版、1998年、p.99-104
(担当:中野)


大事故災害:第16章 トリアージ (小栗顕二・監訳、大事故災害の医療支援、東京、へるす出版、1998年、p.107-16) 救急医学レポート <災害医学>                                       19班 59番 徳和子 ◇災害現場での処置について◇  大事故災害が発生すると、非常に多数の負傷者や病人に対し、処置を施さなければならない。処置の内容は、事故災害発生直後から救急隊員の到着までの間にその場にいる人によって行われる初期処置と、救急隊員らが到着してから行われる処置に分けられる。  事故災害現場での処置の目的は、受傷前の状態に戻すことにあるのではなく、十分診察され治療を受けられる施設への移動に十分耐えうるようにし、安全に病院に到着できるようにすることである。 1)事故直後の初期の応急処置  大事故災害時において、事故災害直後の最初の処置は、事故災害が起こった時にすぐ近くにいた人によって行われる。また、自身も負傷している事故の生存者である可能性もある。事故直後の応急処置を行う人は基本的な応急処置の訓練を受けている可能性もあるが、このような事態に不慣れな人による場合が多い。  そしてまた、これらの応急処置の大部分は、事故現場で事故発生直後数分以内に始められるものである。 2)救急隊員による応急処置  救急隊員が事故現場に到着することにより、本格的な高次救命処置をが可能となる。救急隊員には、病院外での全ての処置を行う全般的な責務がある。さらに救急隊の業務は、現場に送り込まれた医師や看護婦により追加補足される。  ここでの、医療対応の管理には (1)トリアージ、(2)治療、(3)搬送といった、医療支援の順序を忘れないことが必須である。そして現場で施される処置の程度はトリアージの優先度(患者の治療優先順位)に対応する。  緊急サービス部門が到着し、医療サービスの指揮命令系統が構築されると、高度な救護活動は、負傷者避難救護所で行われる。緊急サービス部門の人々は全て救命応急処置の訓練を受けており、特別な技術をもっている。そして、これらの人々は救急救命訓練が適切な水準に達していることを認定されている。 3)現場での処置  ほとんどあらゆる処置が病院到着前までに行われる。処置の目的はあくまでも病院への負傷者の安全な搬送にあり、実施される処置の程度は搬送が可能であることが確認された者に限られるべきである。  したがって、現場での処置は気道、呼吸、循環に関した処置に限られる。また、脊椎損傷がある場合には、増悪しないための処置が必須である。  以下に具体的な処置を示す。 a.気道  基本的処置として、下顎挙上、顎突き出しによる気道の開通があげられる。高度処置としては、口・咽頭エアウェイ、鼻・咽頭エアウェイ、経口気管内挿管、外科的なものとして輪状甲状軟骨穿刺、輪状甲状軟骨切開術があげられる。 b.呼吸管理  基本的処置としては口対口換気、口対鼻換気がある。高度処置としては、口対マスク換気、バッグ-弁-マスク換気、胸腔穿刺、胸腔ドレーン留置があげられる。 c.循環  基本的処置は、外出血処置である。高度処置としては、輸液準備、末梢静脈路確保、中心静脈路確保、骨髄内輸液、除細動があげられる。 d.脊椎  基本的処置としては、用手的頚椎固定である。高度処置は体位変換、頚椎カラー装着、脊椎板装着、迅速救出があげられる。  最後に、大事故災害時の問題点の一つとして指揮者の欠如があげられている。事故現場においてはトリアージや指揮をすることよりむしろ治療の必要性を感じるものである。しかし治療は階層的な医療援助の第二段階であり、第一段階であるトリアージによる治療の方向付けが絶対的に重要である。  


第3章.人々に心理的サポートを提供する

国際赤十字・赤新月社連盟.世界災害報告 1998年版、32-41
(担当:加嶋)


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大事故災害:大事故災害:第14章 現場での医師および看護婦

小栗顕二・監訳、大事故災害の医療支援、東京、へるす出版、1998年、p.94-8
(担当:佐藤) 大事故災害:第17章 処置 (小栗顕二・監訳、大事故災害の医療支援、東京、へるす出版、1998年、p.117-21)



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