救急処置シミュレーションに関する論議

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【a】

Date: Wed, 28 Apr 1999 15:21:11 +0900
[eml-9: 02319] RE: 02298 に対する反論 研修所シミュレーションの現実

皆さんこんにちは、竹川@北九州市です。
3月まで救急救命九州研修所で教官をしていた関係上
研修所のシミュレーションの考え方また現実など書きたいと思います。

> この中で書きたかったのは、救急隊員(救急救命士)による2次救命
>処置においては「早期の電気的除細動」を主眼におき、シミュレーショ
>ンでもそれを可能とする技術や手順、連携などを磨いてほしいというこ
>とです。その意味で、心肺停止例の前例に自発呼吸確認前に口腔内異物
>確認をすること、バックマスク換気を開始したら補助者よって聴診器を
>左右胸壁に当てさせ呼吸音を確認すること(その間まだ心マッサ−ジは
>開始していない)などは、シミュレーションでもやめてほしいと思いま
>す。
> 私が・・・・会で見たのは、・・救命救急所のシミュレーションと全
>く同じものということでした。・・でもほぼ同様に行われているとお聞
>きしました。emlで九州救命救急所の教官からお聞きした所では、最近
>シミュレーションの内容を変えているということです。この話題は、引
>用メールにも名前が出てくる秋田市立病院の・・先生や、救命救急
>所の教官がおられる、emlの方でもアピールが必要ではないかと考えてい
>ます。

研修所においてのシミュレーションは、あくまで基本行動を習得させるための
施設でありあて一部のスーパー救命士を作っているのではありません。
研修生が、毎期九州研修所では200人東京研修所では300人が入校してきます。
研修生が入校して先ず、バッグマスクと心臓マッサージ等が正確に出来るか
実施させていますが、恥ずかしながら、ほとんどの研修生が正確な手技が
出来ていません。
見様見真似でなんとなく形になっていますが、一つ一つの手技がでたらめです。
救急隊員として、もっとも得意とする基本的手技が出来ていない現状です。
シミュレーションを開始すると、よく研修生が言うことは現場とは違うと言います。
私は、ハッキリ現場とは違うと言います。ここはあくまで基本手技を習得させる
ための施設であり、一般社会で言えば自動車学校と一緒だ。自動車学校で、
片手運転など一般道路走行でやっているような行為を教えますか。あれはあ
くまで応用であって基本ではない。基本が出来ていない人は応用を行ってはだ
めなんだと私は信念を持っています。
応用ばかり行う人は事故を起こす確率が高くなり危険です。
 今、議論されている事は、あくまで理想論であって、現実は研修所に入校
してくる研修生はほとんどが、救急II課程修了でできる基本的な手技も
出来ていないまま研修所に入校しています。この現状の中から、研修生
全員にわかりやすく一つ一つの手技の重要性を指導しています。一人二人
の小人数に指導するのであれば簡単だと思いますが、200人全員に一律
に指導していく難しさは、経験してみないとわかりません。いろいろな議論
の中から今の、研修所のシミュレーションが出来あがっているのです。
今のままでは、いいとは思っていませんが現実ではこれ以上多くの事は
指導できないのです。
 皆さんが議論されている現場に即応したシミュレーションとは、どのような
ものですか。?一つ一つの基本的手技が出来ていない研修生全員に
どのように指導すればよいのか教えてください。
 また、シミュレーションで使っている人形は言葉をしゃべりません。
体温もありません。顔色一つ変えません。この人形を使ってただ想定
だけを与えられた訓練を行った事がありますか。大変難しい事です。
 消防のシミュレーションを見て、考えさせられることも多いと思い
ますが現場に会わせてやればスクープアンドランで終わりです。これでは
訓練にならないのです。時間だけかけるのも問題ですが、観察しないのは
もっと問題です。
 私も4月からまた現場に出て、救命活動を行っていますが、患者に
向かって意識を確認するとき「もしもし」などシミュレーションで使って
いる事は言いません。名前がわかれば名前を呼ぶし、わからなければ
「どうしましたか」と話し掛け意識の確認をしています。
シミュレーションと現場は違う事は十分承知していますが、研修所で
みっちり三年間基本を学んできましたので以前といがった現場活動
を行っています。
 救急隊のシミュレーションを考える上で、救急救命士の教育施設での
シミュレーションを議論する前に救急 I・II課程においてのシミュ
レーションのあり方について議論し、救急隊員全員が基本的手技
を習得して救命士養成所に入校してきたならば、研修所においての
シミュレーションが、今より一歩踏み込んだ事ができると思います。
現場で活躍している救命士は、特定行為だけを行うのではなく
隊員指導にもっと情熱を注いでほしいと思っています。
 最後にemlに参加している研修所教授陣 研修所の基本的考えを
emlに投稿してください。お願いします。

【b】

Date: Wed, 28 Apr 1999 19:25:16 +0900
[eml-9: 02325] 救急救命九州研修所のシュミレーションの実体その2

皆さんこんにちは 最所@救急救命九州研修所です。

我々の救急救命九州研修所のことが遙か遠いところで話題になっているとはびっ
くりです。
シュミレーションの鬼の鬼の鬼である竹川さんの投稿を待っていました。

救急救命九州研修所ではこのメーリングリストに参加している、・・、・・、
・・、・・などその他数人のスタッフでシュミレーションのあり方を考えてき
ました。竹川さんの発言は私と彼が日頃から良く口にしていたことです。

畑中同様、心穏やかでなく考えがまとまりませんので個人的なコメントは今日は
差し控えますが、我々救急救命九州研修所の(とくに救急救命士である教官)の血
のにじむような努力の結晶があのシュミレーションであります。

皆さん我々がどのような教育をしているか是非一度見学にお越しください。
それでは。

追伸
 広島の・・さん。シュミレーションに関わっていたでしょう?何か言うこと有
りませんか。

【c】

Date: Wed, 28 Apr 1999 20:27:06 +0900
From: Keiji Enzan
Subject: [eml-9: 02327] 私の考えるシミュレーション

円山です。現場に則したシミュレーションに対して一言。

ダミーは確かにしゃべりません。
しかし、現場に近い状態での訓練はできます。
基本的な一つ一つの手技ができていないのは、最悪です。
その状態でシミュレーションをやることはもっと意味がないのでは
ないですか?基本的な手技等の教育体制等の見直し、入校前の意識等
を再検討する必要があると思います。

学生が観察している時、観察項目に関する患者の状態を教えていけば
可能です。
学生が血圧を測定している時、血圧60、触診、瞳孔を観察中であれば、
6/6mm、対光反射(+/+)、アニソコリ(-)、呼吸音を聞いているとき、
喘鳴(+)、起座呼吸というように観察している時に、状況を加えて行けば
現場に則した訓練ができるはずです。
当然最初に教えるのは、50歳、男性が卒倒した。この程度でしょう。
あとは、指令課員を入れ、情報収集をさせたり、自分で確認したりすればよいと思います。その時間
は5-6分です(平均現着時間)。
また、当然現場では邪魔をする第3者、警察官、指示要請時の医師の対応の悪さ
、看護婦等の取次の悪さも活動の中にいれても良いと思います。

シミュレーションもしっかりできない学生が国家試験を合格し、
救命士として現場にでるのは訓練でできないよりももっと困ります。
しっかりした教育体制を各研修所で作り上げてもらいたいと思います。

Keiji Enzan

Homepage: http://www.alles.or.jp/~enzan119
     http://apollo.m.ehime-u.ac.jp/~enzan

【d】

Date: Wed, 28 Apr 1999 20:34:01 +0900
[eml-9: 02328] Re: 02298 に対する反論 研修所シミュレーションの現実

 北九州市消防局 竹川さん、皆様、おち@愛媛です。

 私の山陰災害救急医療ML(seml)への以下の投稿に対し、竹川
さんからコメントをいただき、有難うございました。
 eml-9: 02298 = [SEML:399] CPRの手順(消防のシミュレーション)

(中略)

 さて私の SEML:399 は救急救命研修所で指導にあたられる教官の
方々にとっては、ひょっとして失礼な書き方であったかも知れませ
ん。非礼な部分がありましたらどうぞお許しいただき、このテーマ
での論議をどなたにとっても有意義な形で続けさせていただければ
幸いと存じます。

 ここで1回土俵を作りなおす必要がございます。私は SEML:399 
で引用した neweml: 04973 の中で、・・・・会で行われた救急シミ
ュレーションについて書かせていただきました。私の意見はすでに
 SEML:399 の中で書かせていただきましたが、その時に思ったのは
救急救命研修所でのシミュレーションが、救急隊員の職場での自己
訓練や実際の業務に影響を与えるのだとすれば、救急救命研修所で
のシミュレーションはもっと現実に即したものであってほしいと考
えた次第です。

 しかし、救急救命研修所における生徒がこれから救急救命士試験
を受ける前の段階の(まだ発展途上の)救急隊員であること、講義
などに多くの時間を割く必要があり、シミュレーションには十分に
は時間を取れないことなどから、実技内容を網羅した総花的な訓練
にせざるを得ない、という事情があることを知りました。また生徒
の方々には「現場で行うべき処置の流れはまた別物」というご説明
をしていただいているとすれば、救急救命研修所でのシミュレーシ
ョンは教育現場での教育上の一ステップということでは、理にかな
ったものであると言えるかも知れません。

 だとしますと、私は、各消防本部の指導的な立場にある救急救命
士の皆さんには、救急救命研修所でのシミュレーションと現場での
最善の処置の違いを、後輩の方々に十分に教えてあげてほしいと思
います。現場の一線に出ておられる救急隊員の相互研鑽の場である
・・・・会の催しの一つとして、救急救命研修所でのシミュレーシ
ョンがそのまま演じられるなどというのは、残念なことと言わざる
を得ません。

・「狭心症の既往のある老人が意識消失」という最初の前提の重み
・心疾患を想定するなら早期除細動がポイントであり、口腔内異物
 確認やマスク換気中の両肺聴診は飛ばして、はやく ECG確認
・頻度から言って、最初は心静止→やがて心室細動という想定では
 なく、初期リズムが心室細動(もたもたしていると心静止に)と
 いう想定で訓練
・医師の一括指示を求める

 虚血性心疾患を持つ患者が心肺停止に陥ったという想定では、上
記のようにお願いしたいと思います。その他にも溺水、脳血管障害、
窒息、熱傷、外傷性ショック、脊髄損傷など、様々な想定のカード
を作って、トランプのカードを引くように、偶然によって通報内容、
現場の設定が変わってくるようにして欲しいと思います。当然なが
ら、カードの枚数は病態ごとに頻度を変え、虚血性心疾患はかなり
頻繁に選ばれるように作ったらよいと思います。なぜなら、現在の
救急救命士制度で一番の目玉は電気的除細動であり、それが適切に
行われるかどうかで、病院外心肺停止患者の社会復帰率が変わって
くると考えられるからです(現時点では、器具を用いた気道確保や
静脈路確保は、必ずしも社会復帰率に影響しないと思います)。

 現場で働く救急隊員が自己研鑽や仲間への教育のために行うシミ
ュレーションは、上記のような考え方で案を練ってほしいと思いま
す。教育現場でのシミュレーションについても、もし可能であれば
多少なりとも<時間短縮の要素><通報の瞬間まで、どんな患者を
想定した訓練になるのかわからない>といった要素を取り入れてい
ただければよいのではないかと思います。
 
 以上、私見を書かせていただきましたが、竹川さんをはじめ皆様
のご意見をよろしくお願いします。また semlへの転送許可の件、
ぜひお願いしたいと存じます。それでは皆様、また。

竹川さんより(eml-9: 02319)
>3月まで救急救命九州研修所で教官をしていた関係上
>研修所のシミュレーションの考え方また現実など書きたいと思います。
>
>> この中で書きたかったのは、救急隊員(救急救命士)による2次救命
>>処置においては「早期の電気的除細動」を主眼におき、シミュレーショ
>>ンでもそれを可能とする技術や手順、連携などを磨いてほしいというこ
>>とです。その意味で、心肺停止例の前例に自発呼吸確認前に口腔内異物
>>確認をすること、バックマスク換気を開始したら補助者よって聴診器を
>>左右胸壁に当てさせ呼吸音を確認すること(その間まだ心マッサ−ジは
>>開始していない)などは、シミュレーションでもやめてほしいと思いま
>>す。
(以下、省略)

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