平成10年度愛媛救友会総会・第6回愛媛救友会(松山大会)記録


3.シンポジウム「呼吸管理」

   座 長  松山市消防局 貞徳 正人
   助言者  県立救命救急センター
         副センター長 渡辺敏光 先生


(1)演 題  「救急隊員の行う気道確保について」

   演 者  今治地区事務組合消防本部  菅野  悟

 今回は、呼吸管理をメインテーマに進めているわけですが、救急隊員がどのような器具を用いて気道確保をしているのか、この救友会の会員の方には消防以外の方も多いので、知らないこともあると思います。これより「救急隊員の行う気道確保」についてお話ししたいと思います。

 まず、救急隊員によって使用できる器具に違いがありますので、簡単な表でご説明致します。お手元にお配りしてあります資料1をご覧ください。

 この表には、救急隊員が行う応急処置の中から気道確保に関するものだけを取り上げております。

(資料1)救急隊員が行う気道確保法の種類

 ─次に器具を用いない用手的気道確保と、器具を用いた気道確保についてどのようなものか、カメラ映像を見ていただきながらご説明いたします。

(救急隊員の行う気道確保の映像)  デジタルカメラ・ビデオプロジェクター使用

 まず、器具を使わない用手による気道確保は三種類の方法があります。

(映像1)
1.頭部後屈法 これが頭部後屈法で、従来推奨されていた方法で、一般住民に対する人工呼吸 の指導にはこの方法をよく指導しましたが、頸椎損傷患者では後屈により悪化させる可能性があり、現在では用いられない。

(映像2)
2.頤部挙上法 これが頭部後屈法にかわって、現在、住民への心肺蘇生法の指導に行っ ている方法です。頤部挙上法または頭部後屈顎先挙上法などといいます。

(映像3)
3.下顎挙上法 これが下顎挙上法で、医療従事者や救急隊員が現在行っている方法です。 バックマスクによる人工呼吸が効果的に行えるので救急隊員は習熟しなければいけない方法です。この映像は用手のみの方法ですが、バックマスクでの方法は東温消防のデモンストレーションで見ていただいたとおりです。

 これらの三種の方法でどの方法を選択すべきか
 気道の開放により、1回換気量が400mlに達した患者数の割合(気道開放効率)

 この評価は自発呼吸が残る程度に麻酔で意識をとり、舌根沈下を起こしたボランティアに対し、この三種の気道確保で、どの程度の換気量が得られたかを調べたものです。

 1回換気量400mlを満足いく換気量とし、その達成度を%表示したもので、1の頭部後屈法ではわずかに6.7%が1回換気量400mlを達成したにすぎないのに対し、2の下顎挙上法では70.0%、の頤部挙上法では63.3%が満足のいく結果を示した。

 下顎挙上法、頤部挙上法との間には統計学的に有意の差はなく、この結果から下顎挙上法、もしくは、頤部挙上法を選択すべきであるといえる。

 バックマスクを使用する際には下顎挙上法を、全く器具のない場合には頤部挙上法を選択することが望ましいと言えます。

 次に器具を用いた気道確保を紹介いたします。写真をお願いします。
(映像 − 喉頭鏡・マギール鉗子)
(映像 − 喉頭鏡とマギール鉗子で異物除去)
 これは気管内挿管、咽頭や喉頭の異物除去時に喉頭展開をするために用いる喉頭鏡と異物除去に使用するマギール鉗子です 老人が餅を喉に詰めた時などに必要な器具です。

(映像 − 電動吸引器・手動式吸引器)
 これは携帯用の電動吸引器で、傷病者の口腔内、鼻腔内の嘔吐物や血液等を吸引するために用いる。こちらが手動式吸引器です。

(映像 − ゲデル氏型とバーマン型)
 これは経口エアウェイで、通常この2種類が主に使われています。形状が内腔型のものと、両側溝型となっているものとがあり、外傷がある患者などで用手による気道確保では十分な気道確保が困難な傷病者に用います。

 スライドお願いします。(映像 −コパ社製のカフ付口咽頭チューブ)
 これは八幡浜大会で新田先生が紹介されましたコパ社製のカフ付口咽頭チューブです。 会場の方も初めて見たという人がほとんどだと思います。救急隊はまだ使っておりません。

(映像 − 経鼻エアウェイ)
 これは経鼻エアウェイで、鼻から挿入する器具です。経口エアウェイが使えない口腔内損傷の患者などに使用することができ、口咽頭反射も起きにくく非常に有効な気道確保ができます。

(映像 − 気管カニューレ)
 これは気管カニューレで、在宅療法継続患者で気管切開され挿入されている気管カニューレの内腔が、分泌物の付着等により狭窄し、呼吸困難を起こしているいる場合の交換用として用います。これまでが最初に資料1で見ていただいた救急標準課程修了者(250H)が行うことができます。これより救急救命士が行う気道確保で、人工呼吸を行うために使用する器具を紹介いたします。(映像 − ラリンゲアルマスク)

 これがラリンゲアルマスクで私たちはLMと言っています。病院でも短時間の手術や子供に使われています。卵円型の柔らかいカフを膨らませることにより、食道入口部に密着させて閉鎖するとともに、喉頭蓋を包み込むようにして気道が確保される。 喉頭部にちょうどマスクをするような構造のため、ラリンゲアル(喉頭部の)マスクと命名されている。
サイズは現在は増えており7種類と多く新生児から70以上の大柄な成人までに使用可能です。

(映像 − ツーウェイチューブ)
 これはコンビチューブといい、食道気管合体チューブです。このチューブは1本 の管内に二つの内腔を持ち、通常は食道内に挿入され咽頭カフと先端カフの二つで 閉鎖されカフの中間に穴が開いておりそこから気管内に送気されます。もし気管内 に入った場合は短いチューブから送気します。この場合は気管内挿管チューブによ る気道確保と同じ効果があります。

 このチューブのサイズは2種類しかなく120cm以下の子供には使用出来ません。

映像 ( 食道閉鎖式エアウェイ − EGTA・EOA )
 これは食道閉鎖式エアウェイといい、EGTA型とEOA型があり、EGTAはチューブより別の口からマスクを通して送気しますが、EOAはチューブの側孔から送気するという構造に違いがあり、また、EGTAにはチューブ内に胃チューブを通す事により、胃内容物の吸引ができます。現在、EOA型は販売されておりません。

以上が救急救命士が行う気道確保の器材ですが、各消防本部で運用開始の時期や特定行為の実施した回数も違いますが、LM・コンビなどの特定行為についてアンケートをとった結果について述べたいと思います。

(県下の10消防本部の合計)
特定行為205回の内
  LM    22回
  コンビ  183回
  EGTA   0回
  EOA    0回

 救急車にはLMとコンビチューブは積載しているが、EGTA・EOAは積載していない本部がほとんどであり、実施回数は圧倒的にコンビチューブが多いという結果でした。

 また、LM挿入補助具を使用している本部はありませんでしたが、挿入時に喉頭鏡を使用すると答えたのは4本部ありました。

 EGTAをなぜ使わないか、器具には大きな問題点があります。それは、救急隊は3名で救急活動しており、患者搬送、その他多くの器材を救急現場から救急車まで搬送しなければいけません。EGTAを使った場合、搬送中も常にマスクを保持しなければならず活動が制限されるうえに、気道確保を確実に維持することが容易でないという点に尽きると思います。

 これとは対象的にLM・コンビは携帯用の人工呼吸器を付けることにより、隊員1名は他の活動に移れるわけです。それでは、LMの実施回数が少ないのは、どうしてでしょうか。LMに比べてコンビのほうが挿入が容易で確実に行えるということだと思われます。

 LMの挿入は比較的熟練を要するものでありますが、東京法令出版のプレホスピタル・ケア(1998年第11巻第1号)において非常に参考にしたい研究発表がされておりましたので紹介いたしたいと思います。

 「ラリンゲアルマスク挿入における手技検討」というタイトルで、旭川厚生病院において、救急救命士の就業前教育時に手技検討が行われたものです。LMは標準的な挿入方法として、喉頭鏡などの器具を使わず盲目的に、カフを脱気した状態で挿入するわけですが、LMを短時間で確実な気道確保を得る方策を検討した結果、カフを脱気した状態とカフを半分膨らませた状態では、膨らませた状態の方が挿入しやすく、換気確認できる事例も有意に多かったという結果が出たという内容でした。今後の活動の参考になると思います。

 次の映像 (ベットサイドモニター)
 (映像は心電図や血圧なども計れる一体型のベットサイドモニタです。)
 今までに述べた器具を使って気道確保し、呼吸管理をしながら病院へ搬送するわけですが、換気が有効に行われているかをつかむために必要なものがあります。それがパルスオキシメーターです。 動脈血酸素飽和度を知ることにより酸素流量なども調整できるわけです。

 私達救急隊員は、このような器具を用いて気道確保し、傷病者の状態を悪化させないように呼吸管理しながら二次救命処置を行う医療機関に迅速に搬送するよう努力しているわけです。

 (救急車の映像) 私たち今治消防救急隊救急救命士3名です。

 以上で救急隊員の行う気道確保についての発表を終わります。


(2)演 題 「喘息傷病者の搬送事例」

   演 者  大洲地区消防  大野 真弘

1 日時
  平成10年1月26日 04時38分覚知

2 発生場所
  大洲市郊外の住宅地

3 傷病者
  54才 女性、既往症〜喘息、腎不全

4 覚知時の状況
  就寝中、妻が急に喘息発作を起こしたので救急車をお願いします。(夫からの通報)

5 現場到着時の状況
  傷病者が、玄関踊場で側臥位で倒れており、その横で夫が抱きかかえている。夫の説明によると、発作直後、寝室から玄関まで、自分でなんとか 移動してきたが、この場所で動けなくなり、徐々に意識がなくなったとのことである。

6 観察結果及び処置(現場にて)
  (観察結果)
   意識  JCS 300         瞳孔  5ミリ
   呼吸  12回/分・努力呼吸     顔貌  蒼白・チアノーゼ
   脈拍  50回/分          皮膚  冷感
   血圧  122/60 mmHg      その他 下顎部強直性ケイレン
   SpO2 70%             便失禁

  (判断)
   喘息発作に伴う極度の低酸素血症

  (処置)
   現場にて、経鼻エアウェイ(7ミリ)により気道確保を行うとともに、低流量から酸素吸入 (2リットル)を開始する。

   なお、ストレッチャーに収容中、呼吸数が5回/分となったため、直ちに、マスクバックを使用し補助呼吸(酸素ホース接続)を開始、毛布にて保温を実施した後、救急車に収容する。

7 搬送中(救急車内にて)
  (観察結果)
   意識  JCS 300        瞳孔  5ミリ
   呼吸  5回/分・下顎呼吸    顔貌  蒼白・チアノーゼ
   脈拍  52回/分         皮膚  冷感
   血圧  90/52mmHg      モニター波形 洞調律
   SpO2 82%

  (処置)
   救急車内にて心電図モニター接続し、搬送先病院に生体情報を伝送する。併せて、補助呼吸 を継続する。

8 病院到着後
  (処置)
  ・挿管し補助呼吸
  ・IVH
  ・血液ガス検査結果
    pH    6.87      BE    −19.8
    PaCO2 81 Hg     PaO2   407.8 Hg
・ステロイド、気管支拡張剤投与し、尿道留置カテ−テル挿入

  (傷病名)
   喘息発作重積状態

10 反省

(1) 搬送中、徐呼吸になったため、マスクバックを使用した補助呼吸を実施したが、先般開催された「全国救急隊員シンポジュウム」の席上、助言者から「喘息発作の場合、肺胞自体が過膨脹状態になっているため、補助呼吸をする場合はゆっくり送気すること」及び「呼吸に併せて胸部圧迫を実施すること」とのアドバイスがあったが、今回の現場活動では、上記の配慮が欠けていた。

(2) 状況によっては、コンビチューブ等による気道確保を考慮してもよかったのではないか。

11 考察

 今回の事例を通じて、現場での傷病者観察が非常に重要であり、病院に対して正確な情報を提供することが大切であると改めて感じた。つまり、病院では、その情報によって事前準備ができ、結果、迅速な処置へとつながるからである。

 本件では、呼吸様式や呼吸回数、SpO2 値、心電図波形等が正確に病院に伝わっており、情報提供に関しては成功したと思う。

 また、本件は、呼吸管理の重要性を改めて感じさせられた症例であり、収容病院の医師から、救急隊の処置が適切であったとのアドバイスがあったものである。

 救急処置の基本は呼吸管理であることを再認識し、現場活動にあたりたい。


(3)演 題 「高等学校における過換気発作時の対応について」

   演 者  愛大附属高等学校 三並 めぐる

 今保健室を訪れる児童生徒の中で、70%〜90%が内科的な訴えです。これは全国的な傾向であり、成長期の児童生徒がおかれている社会的・心理的状況をしめしているように思われます。

 学校の保健室では10分間の休み時間に、さまざまな訴えで保健室を訪れる生徒たちに対して優先順位をつけながら対応しています、外科的な救急処置は、多くは目で認めることの出来る変化を伴っており、すべき救急処置もそれに要する時間もある程度予想することができます。これに対し、内科的な訴えに対する処置は、本人の訴えを中心として状況把握をし、とるべき救急処置を考えます。生徒の訴えが弱かったり心因性のものが背景にある場合も多く、一般状態の観察とともにカウンセリングは重要な柱となります。

 今回発表させていただく過換気症候群は、呼吸器を中心とした心身症です。神経症のヒステリーと同じ機序で発生することが多く、ヒステリー性格をもった女子、特に中学・高校生に多い疾患です。

 突然、ハッーハッーという過呼吸発作がおこり、息がくるしいという呼吸困難、胸がドキドキするとか、胸が痛いとなど心悸亢進や胸内苦悶、手足がしびれるなどの訴えがあります。続いて、四肢および顔面の筋肉に強直をおこし、倒れ、意識不明におちいることがあり、呼吸や脈拍など一般状態の観察をしながら、症状や周囲の者の情報から過呼吸症候群による発作であると予想された場合には、安心感をあたえることに気を配りながら、必要な呼吸管理を行っています。

 また、症状の持続時間は長く、30分から時に2時間くらい症状を呈している時もあります。突然発作にであったまわりの者は、その症状に驚き、あわてて救急車をよばなくてはいけないという不安にかられることが多くあり、実際に救急車で病院受診をした経験をもつ学校関係者も少なくありません。また養護教諭が不在時にはその症状から大騒ぎになり、救急車を呼んだケースもあります。今年の3月、松山市内の8つの高校の養護教諭に尋ねたアンケートでは、全ての養護教諭が過換気症候群を経験していると答えています。

 養護教諭が過換気症候群と判断した理由として、全員が過呼吸の症状をあげ、ついで脈拍・ 手足のしびれ・意識状態などが特徴的な症状であると答えています。

 発作時の対応としては、「大丈夫だから」と安心感を与える言葉をかけ、「ゆっくり息をはきなさいね」と呼吸管理ができるようにするという二つの対応を全員の養護教諭があげています。次に、保健室などで安静にさせた後、できる限りまわりの者を教室に返すなどの指導をしています。そうして状態が落ち着いた後に、今回の様子を聞いて、今後の対処の方法や原因と考えられるストレスなどについて話し合っていることがわかりました。

 また、すぐ過換気症候群と判断できなかった体験をもつ養護教諭は75%いました。 なぜ判断できなかったか尋ねたところ、症状がはっきりしなかったためと答えています。 具体的なケースとしての症状は、脱水症状があり、そのための意識混濁があったケース。 過換気発作の典型的な症状がないのに、意識混濁があったケース。 手足のふるえとけいれんがあると連絡があり、卒倒していてわからなかったケース。 ショック状態があり、一般状態も良くなかったため、わからなかったケースと答えています。

 養護教諭が居ない場合に過換気症候群と考えられる生徒が発生した場合、適切な処置ができたケースは50%、救急車を呼んだケースが63%ありました。過換気症候群の知識がなく困ったケースが63%、病院受診をしたケースが50%であり、居合わせた者たちで何らかの対応をしてますが、養護教諭がいた対応したケースにくらべ、病院受診や対応に苦慮したケースが多い傾向がありました。 次に実際に過換気症候群の発作が発生した場合を再現し、今後の課題につなげたいと思います。

 S=生徒 T=養護教諭
S:先生!大変!きて−!マルコちゃんが倒れたんよ!
T:えっ!どこで?
S:教室なんよ。P太先生がみてくれよるんやけど。はよ来て!マルコしんどそうなんよ。
  夕べ寝てないとかゆうて、今朝からしんどそうだったんよ。先生、はよはよ!
T:何かしてて倒れたの?
S:授業の終わりに倒れたけん、ようわからんのよ。
T:動けるかな?
S:きっとたてんと思う。
T:じゃ、担架が必要やね。何か持っていくもんないかな。
  (担架とタオルケットとガーゼナイロン袋をもってかけつける)
  マルコちゃん!わかる?と呼びかけてみる。
意識不明瞭。顔色良好。脈拍は不整結代なくリズムもよく、66回/分、呼吸はハッーハッーと苦しそうな表情で100回/分である。
どんなにして倒れたの?頭は打ってないかな?と情報を集める
周りの生徒たちはしんどそう。かわいそう。大丈夫?。の連呼。(大丈夫? 大丈夫?がやけに聞こえる)

 状況からして急を要する状態ではなく、保健室で経過観察することが必要と判断し、3階の教室から保健室に運搬することになる。運搬は友人たちがすすんでしてくれる(高校生は体力もあるので、非常に助かる)
 保健室のベットに休養させて様子をみる。相変わらずハッーハッーと苦しそうな表情で呼吸をしている。
S:マルコ大丈夫?かわいそう!先生、マルコ大丈夫??
何人かの友人が付き添って離れようとしないので、私に任せれば大丈夫 だから授業に行くように指導する。それでもマルコ大丈夫?の連呼である。友人たちが声をかけている間はマルコもヒーハーの呼吸と苦しそうな表情が続いている。
T:ゆっくり呼吸をしなさい。1.2.....そうそう、ゆっくり吐きなさい。
と呼吸指導をするが、苦しい苦しいといいながら、表情をゆがめて手足の筋肉を硬直させている。ナイロン袋を口にあてて、自分の呼気を吸うようにする。(呼吸を楽にするためにナイロン袋をするからと説明をする。)
S:足がいたい。心臓が痛い。と次々訴える。(心臓が痛いを繰り返すので内心かなりあせるが、顔色脈拍その他の状態から経過観察を続けることにする)
足の筋肉緊張や痛みを訴えるので、手足をマッサージしたりする。(この処置が、症状を長引かせることにつながる?)
一人にして経過観察をしていると、そのうち呼吸も落ち着いてきて、眠り始める。眠りから覚めると表情も落ち着き、授業に出ることができる。
昨日の状態や睡眠などを尋ねるとマルコだけでなくほとんどの者が、過換気発作をおこすことで、まわりから注目を集め、何とか自分を守ることや自尊心を維持しようという傾向を感じる。また、家庭や学校でのいろいろな出来事を抱えており、そのために睡眠不足や体調不良気味であることが多いように思われる。過換気症候群をおこす背景に、ストレス源となるものと本人の性格的なものの存在があるように感じられる。しかし、すぐには解決しえない問題を抱えていることが多いので、その子の訴えを受け入れるという態度で接するよう心がけている。学校という場はその後のフォローや経過観察をする場となるため、家庭と担任と保健室などの連携が重要な鍵となるように思う。

過換気症候群を初めて体験した教職員は、僕は救急車をよばんといかんとおもっとったのに、先生が来てくれて本当に助かりましたよ。ところでマルコはなぜあんなになったのでしょうか?という言葉が返ってくる。ここから、病気の理解と対応、生徒理解の話し合いがはじまっていく。その話し合いの中で今後、過換気発作をおこさせない対応と自分をコントロールする力を養うことを目標にしようということとなる。これからもいろいろな出来事に出会っていくだろうけれども、生徒が自分を大切にし、自分で成長していく力を育てられることを大切にしていこうと思う。

 今回の発表後、校内では常にペンライトを携帯するようになりました。観察の大切さや事後指導の大切さなどもあらためて認識することができました。発表の機会を与えて下さり、本当にありがとうございました。


(4)演 題 「119番通報時の口頭指導による気道異物除去」

   演 者  松山市消防局 竹村 武士

 本事例は、通信指令課員が 119番受信時に固形物による気道異物で窒息状態と判断して通報者に対し、側臥位にして背部叩打法を指導し実施したことによって、気道内異物の除去に成功し、救命した事例です。

1.事故概要

 平成9年6月20日11時40分頃、74才のお婆ちゃんと40才のお嫁さんの2人で昼食、ゆで卵を食 べたお婆ちゃんが卒倒、呼吸停止し顔色が悪くなったので、慌てて119番通報したもの。

2.時間経過および症状観察等

 11時45分:事故発生 現場まで約1.2キロメートル
   46分:覚知   「74才女性、気道異物により意識不明」との通報
   48分:車内より現場にTEL、通報時指導により異物除去し呼吸回復した旨聴取し、
      口腔内確認して見える範囲のものをかき出すよう指導。
   52分:現場到着
   53分:観察・処置・事情聴取 傷病者の頭部あたりに卵片散乱
      意識レベル:JCS300 仰臥位
      状況から直ちに喉頭鏡にて口頭展開し口腔内確認、喉頭部固形異物なし、
      液状異物および少量の食物残渣をマギール鉗子とガーゼにて拭い取りと
      同時に事情聴取すると、背部叩打法にて約2センチ角の白身が飛び出た
      あと呼吸回復し顔色が戻ったとのこと。

      呼吸:浅く、15回/分  瞳孔:R=L 4mm
      脈拍: 強く、80回/分  対光反射: 正常
      顔貌: 無表情      呼吸音:正常
      顔色: 正常       失禁: 尿失禁あり
      既往症:特になし

   57分 車内収容・モニタリング
      脈拍:87回/分、血圧:203/105 mmHg、SpO2:90%

      これににより、特に低酸素血症を考慮して、下顎挙上しO2(6L/min)
      を投与する。

   59分 HR:84、 BP:166/117、 SpO2:97
      病院選定・連絡および収容依頼する。

 12時01分 搬送開始 病院まで約2キロメートル
      HR:83、 BP:180/94、 SpO2:98
   02分 HR:82、 BP:160/87、 SpO2:99
   05分 HR:83、 BP:158/85、 SpO2:99
   06分 病院到着 意識レベル:300変化なし 呼吸状態:良好

3.程度等

 同日16時頃、他の出動で同病院へ行った際医師に確認しますと、約1時間後に意識が回復し、何の後遺症もなく夕食後退院するとのことでした。

4.終わりに

 気道異物は、小児と高齢者に多く、喉頭異物と気管・気管支異物に分類され、また完全閉塞と 不完全閉塞とがあり、完全閉塞の場合には緊急に除去しないと致命的となります。本症例は、完全閉塞でしたが、 119番受信者が元救急隊長であっ たため、通報段階で適切な指導により、バイスタンダー(今回は家族)が早期に異物除去したことによって救命できた事例であります。しかし、多くの場合はそうはいきません。

 私はこの体験以降、CPRや気道異物除去などの救急指導のときにはこの症例を話し、 自分にとってとても大切な人が気道異物によって窒息した場合、救急車が来る6分間に何もしなければ 死に至る人が簡単な手技によって助かること。また、何かすることによってたとえ1%でも可能性があることを訴え続けています。

 指導に行かれる皆様の参考になれば、という思いで発表させていただきました。


(5)演 題 「人工呼吸患者の院内搬送の問題点」

   演 者  愛大附属病院 竹森 香織

 スライドをお願いします。

 当ICUでの様子です。この患者は低酸素脳症の状態であり、低体温療法などの集中治療を行っています。患者には人工呼吸器が装着されており、その他にも多種多様のME機器が装着されています。今この患者は、急性期であり、脳の状態を精査するためにCTに向かうところです。

 スライドをお願いします。

 ICUで人工呼吸患者の搬送が必要となる場合は
(1)中央部門での検査、CT、MRI、血管造影、内視鏡、透視、
(2)手術や処置、転棟、転院などです。

 スライドをお願いします。

人工呼吸患者搬送の原則は
A)気道確保の維持
・搬送開始までに気道内分泌物を吸引しておきます
 必要に応じてポ−タブル吸引器を携帯します
・気管内チュ−ブなどの自然抜去や片肺挿管の防止に努めます
B)人工呼吸の継続
・酸素ボンベの残量確認、動脈血酸素分圧の維持(SpO2の確認)
・分時換気量の維持(1回換気量と回数の維持)
・自発呼吸がある場合はfightingを防止します
C)循環器系をはじめとする全身管理
・移動開始前に機器の充電と正常に動くことを確認します
・血圧、脈拍の確認
・カテコ−ルアミン類の投与量確認
・カテ−テル類の接続を確認
・体温の維持に努めます

 スライドをお願いします。

 次に人工呼吸患者に装着されている機器・カテ−テルを説明します
・気道には、気管内チュ−ブ(経口または経鼻)、または気管切開チュ−ブが挿入されています。
・脈管ラインとしては、末梢点滴、中心静脈栄養、肺動脈カテ−テル、動脈ラインがあります。
・その他のカテ−テルでは、脳室ドレ−ン、胃管、胸腔・腹腔ドレ−ン、膀胱カテ−テルがあります。
・モニタ類は必ず充電を確認しておきます。
  心電計、自動血圧計、観血的動脈圧波形モニタ、パルスオキシメ−タ
  CO2モニタ、体温計(直腸温度計など)などがあります

 スライドをお願いします。

人工呼吸器具の比較
A)ジャクソンリ−スの非自動膨脹式の手押しバッグ
<利点>は・患者の自発呼吸に合わせた呼吸補助が可能です。片手で操作が行えます。
     ・バッグを押す手の感触で、肺の硬さや痰の貯留を知ることができます。
     ・換気量、酸素流量の調節が容易で、高濃度酸素を投与できます。
<欠点>は・酸素源が無いと換気が行えません。

B)アンビュ−・バッグの(自動膨脹式の手押しバッグ)
<利点>は・周りの空気を取り込み、酸素源が無くても換気が行えます。
<欠点>は・患者の自発呼吸に合わせた換気が困難であり、片手での操作が困難です。
 また、酸素をつないでも酸素濃度は40%位までで、1回換気量が分かりにくいところです。

※バッグの押し方は12〜20回/分を目安とし、1回換気量は、成人で500 〜700mlまたは、
10〜15ml/kg とします。吸気、呼気時間比は1:2

 ※酸素ボンベ残量
残量(L)=(ボンベ容器の容量(L) ) ×(現在のボンベ内圧( / 2))

 ※吸入酸素濃度
  酸素流量  吸入酸素濃度
   1 L/min   24%
   2       27%
   3       30%
     これ以上は流量を上げても、吸入酸素濃度は
     あまり上がらず、最高40%までといわれている

C)簡易人工呼吸器の
 <利点>は人手を省くことができます。
 <欠点>は気道内圧が高い例や自発呼吸がある患者では換気困難となる場合があります。

 スライドをお願いします。

 これは実際に、気管切開を行っている患者に、ジャクソンリ−スを用いて、換気を行っているところです。気切チュ−ブが抜けないように片手で接続部を支えながら換気を行っています。右側がアンビュ−バックになります。

 スライドをお願いします。

 搬送中に起こりうる合併症としては
1.呼吸器系:呼吸停止、低酸素血症、高二酸化炭素血症、低二酸化炭素血症、気道閉塞、
   気管チュ−ブの抜去などが予想されます。
2.循環器系では:心停止、不整脈、低血圧、高血圧です
3.その他:出血増多 チュ−ブ、カテ−テル類の抜去 疼痛、不穏の増強なども考えられます。

●合併症の原因としては
1)不十分な搬送前準備(チュ−ブ固定の確認の怠り)
2)不十分なモニタ監視
3)不適切な換気法や酸素療法
4)薬剤の中断(血管作動薬、鎮静薬など)などが挙げられます。

搬送中のチェックポイントは
1.搬送決定責任者は誰か
2.搬送は必要か、搬送が適当か
3.最適な搬送用モニタ−は何か
4.必要な搬送用治療器材は揃っているか
5.搬送チ−ムの編成は、各自の役割は明確にされているか
6.搬送前に状態を改善したか
7.モニタ−の配置は適切か
8.患者の四肢およびライン類の固定は確実か
9.搬送先への事前連絡は行っているか
10. 予想される緊急事態への対応は
11. 搬送の速度は適切か 以上の項目に注意し患者搬送を行います

 スライドをお願いします。

 以下のようにまとめています。

 これは実際にCT撮影を行っている場面です。右側のオレンジ色のボックスが簡易人工呼吸器で、撮影中の患者の呼吸を補助することができます。

 スライドをお願いします。

 最後に人工呼吸患者の院内搬送のまとめは
1.人工呼吸患者のCT室などへの院内搬送は、救急・集中治療スタッフにとって避けては通れない重要な業務です。
2.人手を確保し、十分な準備の元に行わなければ、思わぬ危険をまねく恐れがあります。また、搬送全般の責任を負う責任者を明確にしておく必要があります。
3.気道確保(A)、呼吸維持(B)、そして循環器系をはじめとする全身管理(C)が重要です。またプライバシ−の保護、感染症への配慮なども重要です。

 以上のことも踏まえて、検査以外の搬送にも役立てることができると考えます。

 以上で発表を終わらせていただきます。


(座長)
 ディスカッションを始めます。救急車搬送が3人、院内が3人ということで同じ人数運ばれていますが、菅野さんの発表した資器材によって人工呼吸をするのですが、搬送中等での注意事項がたくさんあると思います。その注意事項について、どのように工夫されているかお話し頂きます。

(菅野 悟)
 デマンドについては、救急救命研修所では高圧だからなるべく使わない、ということでバッグ換気をするように指導されていますが、搬送中は隊員が3名ですからデマンドも使うことがあります。救急車内ではバッグ換気に切り換えています。

(竹 村 武 士)
 松山消防においてもほとんどの場合がバッグマスクを使った人工呼吸を行っています。内容は菅野さんが言われたとおりです。あとは車内において自動式の人工呼吸をつけた場合にLMを入れたり、コンビチューブを入れたりしますが、コンビチューブですとチューブ自体が長くなりますので、切ったりとかの工夫をしています。

(大 野 真 弘)
竹村さんが言われたような工夫は気づかなかったのですが、他に蛇腹の部分が邪魔になっ て、時々警報音が鳴るときがありますが、いま参考になりましたので活動に役立てたいと思います。

(座長)
竹森さん、ジャクソンリースから人工呼吸の時に外れないよう1名が支えていると言われていましたが、我々は挿管が出来ないのですが、救急隊が医療機関に引き継いでそのまま処置を継続するのであれば挿管がベストだと思いますが、今の法律では無理なので、気管内に入った場合は一度抜いて食道内に入れ直しています。その点何かお考えがありましたら。

(竹 森 香 織)
 挿管をして搬送というのは少ないかも知れませんが、緊急手術をして挿管をされた状態で運ばれてくる患者さんもおられますので、その時は救急隊の人も口元を支えながら換気をして頂くという事に注意をしてもらったり。病院では全部そろっての搬送になります。救急隊の人もジャクソンリースの使い方とか、口元を支えて欲しいとか、もし参考になればと思っていましたが、今回は人工呼吸も挿管もされているということでお話しをさせて頂きました。機械の装置の事、点滴ルートが抜けないとか、病院に搬送されて来たときに、救急外来のベッドに移るときに患者さんだけに目がいってしまって、挿管チューブが抜けそうになったりとか、点滴を引っ張ったりとかがありますので、私も皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

(座長)
救急隊の気管内挿管については、この場で議論すべき問題ではないかも知れませんが、今日も喘息患者のお話しがありましたが、今後の問題で近い将来できるようになるとは思いますが、先生いかがでしょうか。

(助言者 渡 辺 敏 光)
 現在では、喘息の患者さんですと一番いいのは、間違ってコンビチューブを気管内に入れるのが一番いいですね。間違って入れてそれを知らずに換気するのが良いと思いますが、それも法律的には許されていませんから、将来的には改善が必要になってくると思います。
医師との連携で今後それが許されるのであれば、そのような方向に進んでいかないと喘息の心停止の患者はバッグ、ラリンゲアルマスクでは対処できないと思います。

(座長)
 次に過換気症候群の問題が出ていました。養護の先生としての対応に限界があるのではないか。そしてその対応にどうしたら良いか。という問題点があると思いますが、救急車の中での対応はどのようにされていますか。また、ペーパーバッグも使用されていると思いますが、有効性もよろしかったらお話し下さい。

(菅 野 悟)
 過呼吸状態で意識障害のでるひどい場合は、紙袋によって行います。病院到着時には回復しつつあるのを何回も経験しました。

(大 野 真 弘)
 100%過換気であると私たちは判断できない事もあります。以前高校生でしたが教室で走っていて後頭部を打ち、そのまま呼吸が荒くなったというのがありますが、結果的には過換気症候群でありましたが、そういう発生状況によりまして決めつけることが出来ないのが救急隊の現状だと思いますので、ペーパーバッグ等は大洲では積極的には行っていません。

(竹 村 武 士)
 松山消防でもペーパーバッグをしています。先程から言われていますが、100%ではないと言うことです。それまでの経過を聞くと大体想像は付く。三並先生が言われたように、 手が硬直する、テタニー症状、その3つがそろうと私は過換気症候群ではないかと疑ってみます。ただよく似た症状でテタニーがありますが、低カルシューム血症とかで嘔吐、汗を半日くらいかいて、その後に筋肉けいれんがあったりして、同じような症状がでる場合がありますので、いちがいにテタニーと過換気とか言えないと思っています。

(三 並 めぐる)
 倒れたと言って保健室に近づいてくる足音で私が過呼吸を起こしそうなのですが、 てんかんとか、心臓とかでない事を祈りながら行って、周りに惑わされたりとか、胸が痛いと言われたら非常に不安になります。そこで、養護教諭が陥りやすい事がありましたら渡辺先生に教えて頂きたいのですが。

(助言者 渡 辺 敏 光)
 過呼吸を起こす病態というのはそんなに無いのですね。中枢神経の障害から一番多いのは、高いところに住んでいる人ですね。アンデスとか酸素の少ない所で実際には鑑別が必要としたら、中枢神経系の障害が鑑別が必要になると思います。

 きっかけは良く分からないのですが、どんな時でも必ず1回目はあるわけですから、それが運動をしている時かも分からない。家に居る時かも分からない。ですから中枢神経系の障害を鑑別には入れて置かないといけないと思います。で、必ず治まっても病院には連れて行った方がいいと思います。我々も救急外来に来て患者を診た場合に過呼吸症候群だなとは大体気が付くのですが、診断出来ない事が多々ありますから、中枢神経系の疾患を頭に入れる事と、病院には絶対に連れて行った方がいいと思います。

(座長)
 過呼吸発作そのものの症状が続いている時は、その症状についてどうなっているか。例えばハーハーしている状態ですとCO2が無くなっているよ。それで脳血管が死んでいるよ。と説明して安心させてあげる事が重要だと思います。

 救急車内においては当然酸素投与も考える必要がある。渡辺先生、搬送中であればそれでよろしいでしょうか。

(助言者 渡 辺 敏 光)
 そうですね。酸素はあまり下がらないんですね。CO2が出ていきますからその分酸素が上がっている事が多いので、それと肺呼吸法をするとき必ず低流量の酸素を流すこと。酸素を流さずにやりますと袋の中の酸素が段々減ってきて、今度は低酸素の症状が出てきますから必ず低酸素を流すことが重要ですね。

(座長)
 次ぎに気道内異物についてですが、私の勤務する松山南消防署管内は知的障害者、 あるいは身体障害者、特別養護老人ホームの施設が20施設くらいあります。当然気道内異物が考えられるわけです。勤務されている看護婦(士)さんが、マギール鉗子、喉頭鏡、マスクバッグを置いて使ってくれれば助かるチャンスも多いと思われます。その点、置いていない所が多いのですが、我々も指導したいと思いますが、竹森さん一般病院あるいは特老あたりの看護婦(士)さんはそういう知識、技術はお持ちだと思いますか。

(竹 森 香 織)
 看護婦であれば気道内異物の除去に対してマギール鉗子等を使って行えるとは思いますし、一般の方もお箸を使ったりとか、救急外来に来た時、この程度は出せたがあとは出ませんでした。という知識も持っておられる方が最近は多いように感じられます。あと、お子様とかは小さな電池を鼻に詰めたとか、食事中でない事故も多いので、家族の方とか一般の方に完全閉塞なのか、不完全閉塞なのかを落ち着いて判断する事とか、家でもできるお箸を使ってとかの方法があることを指導していく必要はあるかと思います。

(座長)
 ある施設で非常勤の嘱託医から、医療行為だから喉頭鏡、マギール鉗子は使ってはいけない。と言われた看護婦さんがおられましたが、先生どうお考えでしょうか。

(助言者 渡 辺 敏 光)
 医師がいる場では特にする必要はないのですが、居ない時は当然やるべきではないかと思います。トレーニングがあまり出来ていないのですが、やはりそのような機会があれば看護婦、医療従事者で資格のある人はやるべきで、やれるようにトレーニングをする必要があると思います。

(座長)
 最後に渡辺先生、締めの言葉をお願いします。

(助言者 渡 辺 敏 光)
 プレホスピタルケアが着実に進歩しているような印象を受けました。治療の基本と思うのですが血液の中に炭酸ガスがいくら溜っても死ぬことは無い。不整脈が出たり、頻脈になったり血圧が上がりますが、酸素が無くなると確実に死にます。

 まず、救急の現場では、酸素を投与する事を考えたらいいと思います。それによっ て、呼吸が止まったら皆さんは人工呼吸の技術を身につけているのですから、人工呼吸をしたらいいわけです。酸素を投与する指標として一番いいのが、パルスオキシメーターです。パルスオキシメーターで飽和度が90%で、酸素分圧が60mmHくらいです。パルスオキシメーターで酸素飽和度が80になりますと酸素分圧が50。酸素飽和度が70になりますと酸素分圧が40くらいで、10くらいずつ下がって来ます。 ですから、サチュレーションで90を目標にやったらいいと思います。

 それからもうひとつ、喘息の時の人工呼吸ですが、基本は呼気時間をいかにして保ってやるかという事です。補助呼吸でゆっくり膨らませてやると言っておられましたが、今は我々が人工呼吸をする時は、呼気流速を上げてやって、呼気時間をできる限り短くして、呼気時間をできる限り長くしてやるというのが基本です。呼気流速を上げてやりますと、人工呼吸をしていると気道内圧がものすごく高くなるのですが、気道内圧と肺胞の内圧はあまり一致していないのではないか。気胸はあまり起こりにくい。起こさないことは無いのですが、という事をいわれています。あまりゆっくりやりますと、呼気が出なくなって肺胞がどんどん膨らんで来ますから、 なるべく患者さんの呼気に合わせて早めにグッと押してやるのが、喘息の時の人工呼吸の基本です。 最後にバイスタンダーと救急隊員と医師の連携が、これからもっと基本的に改善されていかなければならないという印象を受けました。


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