シガテラ中毒:Ciguatera Fish Poisoning
(9/12/96、eml 1688)
emlの皆さんこんばんわ。
先日沖縄県の◯◯診療所にて「シガテラ中毒」と思われる症例に出会いました。
皆さんは御存知かも知れませんが、私は「シガテラ中毒」を知りませんでした。
中年の女性で、朝釣った魚「ビタロー(沖縄名)・ヨスジフエダイ」を食べたとこ
ろしばらくして四肢や身体のしびれが出現し自宅で様子をみていたがあまり変わらな
いとのことで受診して来ました。一緒に食べた旦那さんもしびれがあるが時々あるこ
とだから自分は受診しないとのことでした。
患者さんが「時々あること」というため、看護婦さんに「知ってる?」と聞くと、
「たぶんシガテラ中毒じゃないですか?」とのこと。恥ずかしくなって直ぐに手元に
あった分厚い「沖縄有毒害生物大事典」をめくるとしっかりと記載されていました。
知らない方もいるかと思われますので簡単に紹介します。
シガテラ中毒:Ciguatera Fish Poisoning
神経系に障害を起こすシガトキシンを有する魚を食することによる中毒。食後1-8
時間後より四肢のしびれ、関節痛、筋肉痛、脱力感、視覚障害、知覚過敏、下痢、腹
痛、重症になると呼吸困難、血圧低下、痙攣などを呈する。ほとんどが軽症で予後は
良好で毎年数千件も発症している南太平洋全域でも死亡者はほとんどいない。しかし
、シガトキシン自体はフグ毒と同様致命率の高い毒であり、ほとんどの患者が毒の多
い内蔵を食べていないことが軽症が多い理由と思われる。もともと毒を持たないはず
の魚がシガテラ毒を持っているためそれを食べて中毒が起こる。その機序は「食物連
鎖説」が有力で、もともと毒を持たないサンゴ礁魚類がサンゴに付いている有毒藻類
などを食べることにより体内に毒が蓄積されて草食性魚が有毒化する。またその魚を
食べる肉食魚が毒化し、それを人間が食べることにより発生する。実際、シガテラ毒
魚はサンゴ礁の分布と関連がありサンゴ礁がよく発達した地域で中毒が多い。シガテ
ラ毒にはコリンエステラーゼ阻害作用があり、重症例では「有機リン中毒」と同様の
病態を呈し、治療にはパム・硫アトやビタミンB6 などを用いる。シガトキシンは熱
や加工に対して安定であり有毒化魚は料理法により無毒化することはない。
ちなみに、毒化の可能性が高い魚は「フエダイ科」と「スズキ科(ハタ類)」と「
ウツボ科」とのことです。
皆さんもお気を付け下さい。・・・
では、また・・・
救急・災害医療ホ−ムペ−ジへ
全国救急医療関係者のページへ
救急医療メモのページへ
gochi@hypnos.m.ehime-u.ac.jp
までご意見や情報をお寄せ下さい。