救急医療・関連判例集

資料提供:弁護士 藤田康幸


目 次

判決期日キーワード
東京地裁昭和63年12月19日乳児、髄膜炎、ベッド満床、転送、ルンバール検査、検査義務、脳障害
神戸地裁明石支部平成 2年10月 8日転落、頭部外傷、脳損傷、硬膜下出血、問診義務、説明義務、帰宅、予後不良、死亡
大阪地裁平成 3年 1月28日腹痛、自宅で経過観察、観察の方法・内容、緊急時における対応に関する指示説明義務、緊急時の受入態勢整備義務、外傷性腹膜炎、死亡、因果関係
神戸地裁平成 4年 6月30日 応招義務、交通事故、救命救急センター、受入れ拒否、正当事由、死亡
水戸地裁土浦支部平成 5年11月30日 休日診療、当番医、幼児、肺炎、喘息性気管支炎の診断、スメルモンコーワの 注射、呼吸管理義務、検査義務、経過観察義務、転医義務、他の病院での治療の 機会の提供義務、急変、死亡
静岡地裁沼津支部平成 5年12月 1日 急性喉頭部浮腫、急性呼吸不全、呼吸困難、バイタルサインの把握、重症度・ 緊急度の的確な判断義務、窒息の予見、救急医療センター、搬送、救急車の利 用、気道確保、付添・介助義務、死亡
静岡地裁沼津支部平成 6年11月16日マラソン、熱射病、意識不明、転倒、脳しんとうとの診断、診断義務、経過観察義務、急性心不全、死亡


1 東京地裁昭和63年12月19日判決

  昭和55年(ワ)第4041号

<キーワード>
 乳児、髄膜炎、ベッド満床、転送、ルンバール検査、検査義務、脳障害

<出典>
 
判例時報1301号102頁、判例タイムズ686号169頁
  (パスワードがないと参照できません)

<判示事項>

1 乳児(生後4か月)について髄膜炎の疑いがあると診断しながら、満床を理 由にルンバール検査を実施しないまま診療経過等を告知する依頼状を添えて、第 2次病院へ転送した第1次病院の医師の注意義務違反を認めなかつた事例

2 転送先の第2次病院の医師について、診療行為についての医師の裁量権に基 づく独自の診療経過と第1次病院の依頼状とを勘案して診断すれば、客観的にみ て化膿性髄膜炎を疑うべき症状を認めることができたのに、ルンバール検査を実 施しなかつたことが、髄膜炎を疑わせる症状の変化に迅速に対応できるような診 療体制下で診療すべき注意義務に違反したものと認められた事例

3 近親者(母親)による付添看護費として日額6000円(昭和63年2月以 降)が認められた事例


2 神戸地裁明石支部平成2年10月8日判決

  昭和61年(ワ)第161号

<キーワード>
 転落、頭部外傷、脳損傷、硬膜下出血、問診義務、説明義務、帰宅、予後不 良、死亡

<出典>
 判例時報1394号128頁

<判示事項>

1 自宅の階段から酔つて転落し頭部外傷を負った患者が、救急診療を受けて帰 宅した後に、容体が急変し、硬膜下出血等によつて死亡した場合について、救急 診療を担当した医師に、問診義務を尽くさないまま脳損傷の可能性はないものと 速断した過失、患者を帰宅させるに当たって付添人に今後の容体変化に対する留 意点や採るべき措置についての説明義務を尽くさなかった過失を認めた事例

2 医師の過失を肯定したが、予後不良事例であることを考慮して、全損害の5 0パーセントの限度で損害賠償義務を認めた事例


3 大阪地裁平成3年1月28日判決

  昭和63年(ワ)第11579号・第11581号

<キーワード>
 腹痛、自宅で経過観察、観察の方法・内容、緊急時における対応に関する指 示説明義務、緊急時の受入態勢整備義務、外傷性腹膜炎、死亡、因果関係

<出典>
 判例タイムズ779号253頁

<判示事項>

 腹痛患者を自宅で経過観察させる場合において、医師の家族に対する観察の 方法・内容、緊急時における対応に関する指示説明、及び緊急時の病院受入態勢 整備に過失があるとしたが、結果(外傷性腹膜炎による死亡)との因果関係がな いとして、請求を棄却した事例


4 神戸地裁平成4年6月30日判決

  平成元年(ワ)第1569号

<キーワード>
 応招義務、交通事故、救命救急センター、受入れ拒否、正当事由、死亡

<出典>
 判例時報1458号127頁、判例タイムズ802号196頁、判例地方自治 101号59頁

<評釈>
 手嶋豊・判例評論421号44頁(判例時報1479号198頁)、斉藤隆・ 判例タイムズ臨時増刊852号94頁、村田哲夫=京極務・判例地方自治109 号6頁)

<判示事項>

 救命救急センターである病院(第3次救急医療機関)が、交通事故により受 傷した重篤な救急患者の受入れを拒否し、その後患者が死亡した場合において、 受入れ拒否に正当事由が認められないとして、不法行為に基づく損害賠償責任を 認めた事例


5 水戸地裁土浦支部平成5年11月30日判決

  昭和61年(ワ)第190号

<キーワード>
 休日診療、当番医、幼児、肺炎、喘息性気管支炎の診断、スメルモンコーワの 注射、呼吸管理義務、検査義務、経過観察義務、転医義務、他の病院での治療の 機会の提供義務、急変、死亡

<出典>
 判例時報1511号123頁、判例タイムズ844号224頁

<判示事項>

 休日診療の当番医が、喘息性気管支炎との診断の下に注射をして帰宅させた 幼児(1歳1か月)が、診察の約1時間後に容態が急変して死亡した事案につい て、当番医の過失、過失と死亡との因果関係を認めた事例


6 静岡地裁沼津支部平成5年12月1日判決

  昭和62年(ワ)第278号

<キーワード>
 急性喉頭部浮腫、急性呼吸不全、呼吸困難、バイタルサインの把握、重症度・ 緊急度の的確な判断義務、窒息の予見、救急医療センター、搬送、救急車の利 用、気道確保、付添・介助義務、死亡

<出典>
 判例時報1510号144頁

<判示事項>

 急性喉頭部浮腫による急性呼吸不全により呼吸困難を訴える救急患者が死亡 した事故について、担当した医師に、診察の際にバイタルサインの把握を通じて 重症度・緊急度の的確な判断を行い、症状の急激な進行により窒息状態に陥るこ とを予見し、救急医療センターへの搬送にあたっても救急車を利用し、臨機応変 に気道確保の措置が採れるよう準備するとともに、付添って介助すべき注意義務 違反を認めた事例


7 静岡地裁沼津支部平成6年11月16日判決

  昭和63年(ワ)第535号

<キーワード>
 マラソン、熱射病、意識不明、転倒、脳しんとうとの診断、診断義務、経過観 察義務、急性心不全、死亡

<出典>
 判例時報1534号89頁

<判示事項>

 全校マラソンに参加し、途中で熱射病で意識不明となり転倒した高校1年生 を脳しんとうと診断し入院させたが、急性心不全で死亡した場合について、担当 した医師の診断及び経過観察につき過失を認めた事例