血液吸着(hemoadsorption,HA)と血漿吸着(plasma adsorption,PA)
1.目的
吸着療法(adsorption)は,吸着の原理を応用して体内,血中に存在する種々の病因物質を除去する方法で,その病因物質が吸着剤で吸着可能で,かつその物質を取り除くことで病気が改善する可能性がある疾患に対して施行する。
2.吸着療法の種類と原理
a.血液吸着(hemoadsorption,HA)
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現在,血液吸着で最も広く使われている吸着剤は活性炭である。活性炭の表面は発達した多孔性構造で,非常に大きな表面積(約1000m2/g)をもち,その表面にはカルボキシル基や水酸基等の活性点が存在し,様々な物質を吸着する。活性炭の分子量に対する吸着特性は,分子量 100以上10000以下の物質の吸着率が高く,透析では除去しにくい尿毒 素や蛋白結合性の高い薬物の除去に優れている。この活性炭をカラムに充填し,血液と接触させることで血液内の病因物質を除去する方法が血液吸着である。血液が活性炭に直接接触すると,赤血球が破壊されたり,白血球が刺激されて各種mediatorを放出したり,凝固系が亢進して血液凝固をおこすため,活性炭の表面をコーティングしているが,このコーティング剤の材質,厚みによって吸着性能が大きく左右される。
b.血漿吸着(plasma adsorption,PA)
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吸着の原理はHAと同じだが,血漿分離器を用いて血漿のみを吸着カラムに潅流させるので,赤血球の破壊,白血球の刺激,血液凝固などが少ない。
2.吸着剤
HAとしては,活性炭の表面をヒドロキシメタクリレートでコーティングしたもの(DHP−1,クラレ)を薬物中毒に使用し,ポリスチレンとポリプロピレンの合成線維にポリミキシンBを固定した吸着剤(トレミキシン,東レ)をエンドトキシン血症に用いる。
PAとしては,ノンコーティングの活性炭(プラソーバN-350,旭メディカル)を肝性昏睡に,トリプトファンをポリビニルアルコールゲルに固定したもの(イムソーバIM-TR350,旭メディカル)を重症筋無力症の治療などに使用している。他にも,免疫複合体を吸着する
カラムは色々市販されている。
3.抗凝固剤
活性炭は,メシル酸ナファモスタット(フサン)や低分子ヘパリンを吸着してしまうので,ヘパリンを用いる。イオン交換樹脂はヘパリンを吸着してしまうので,フサンを用いる。ヘパリンは1000〜2000単位/hr,フサンは40〜60mg/hrの速度で使用する。
4.Blood access
ダブルルーメンカテーテル(クイントンR)を内頚静脈,鎖骨下静脈,大腿静脈などから挿入する。
5.回路
HAでは血液ポンプ,動静脈回路,吸着カラムがあればよいが,PAでは,血液ポンプ,動静脈回路,吸着カラムに血漿分離ポンプ,血漿分離フィルターがいる。
設定 血液ポンプ…100〜200 ml/min
血漿分離ポンプ…30〜40 ml/min
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