越智さん、ごぶさたしてます、森田@高エネ研です。 ところで、GHDNetのページの中にある「医療関係者が病院外で傷病者に遭遇した場合」 http://apollo.m.ehime-u.ac.jp/GHDNet/98/g817web2.html を非常に興味深く読ませていただきました。私自身は医療は全くの素人ですが、 家人が元医療関係者だったこともあって、このあたりの話題にはいつも 関心を持っています。先日も朝日新聞の論壇に一般人への心臓マッサージと 人工呼吸の技術の普及の議論が載っていて、我が意を得た思いでした。 阪神淡路大震災を目のあたりにして、あたらめて基礎的な救急救命医療の 技術を自分でも身に付けておきたいと思ったのですが、このあたりの 啓蒙活動はどこでなされているのでしょうか? 一般の人間がこれらの 技術の習得をするにはどうすればよいでしょうか? 個人的には、21世紀までに心臓マッサージと人工呼吸の実習を大学の 必修科目にするべき、と感じています。2、論檀記事の紹介
(越智元郎、WNN:7297)
愛媛大学救急医学の越智です。 高エネ研 森田さん、こちらこそご無沙汰しております。今回、私ども の「全国救急医療関係者のページ」 (http://apollo.m.ehime-u.ac.jp/GHDNet/jp/ems/)” の「他ネットからの転載情報のコーナー」をご覧いただきまして、有難う ございました。 森田さん(wnn 7293)より、 >先日も朝日新聞の論檀に一般人への心臓マッサージと人工呼吸の技術の 普及の議論が載っていて、我が意を得た思いでした。 森田さん、お気づきになったかどうかわかりませんが、上記の論檀の記事 も全国救急医療関係者のページ、救急医療メモのコーナーに収載されていま す。url は http://apollo.m.ehime-u.ac.jp/GHDNet/98/ga16rond.html、タ イトルは "初期救命の講習をもっと市民に" です。朝日新聞をお読みになれ なかった方はご参照いただければ幸いです。投稿者は私どもの救急医療メー リングリスト(eml)のメンバーです。 森田さんより、 >基礎的な救急救命医療の技術を自分でも身に付けておきたいと思ったので すが、このあたりの啓蒙活動はどこでなされているのでしょうか? お住いの地域をカバーしている消防本部か、日赤の◯◯県支部にご連絡 下さい。日赤の支部はおそらく県庁内に officeがあると思います(知事が 支部長)。もし職場や地域などで10-20人位の受講者をまとめることができ ましたら、消防本部でも日赤でも早速、講習会の段取りをしてくれると思 います。 それでは森田さん、皆様、また。3、蘇生実習用の人形について
(Youhei Morita、WNN:7309)
越智さん、SSさん、ありがとうございました。森田です。 SSさん: >東京都赤十字で、その関係のセミナーをやっていると聞いています。 >(ですね?>MMさん 今は見ていないかな) 越智さん: > お住いの地域をカバーしている消防本部か、日赤の◯◯県支部にご連絡 >下さい。日赤の支部はおそらく県庁内に officeがあると思います(知事が >支部長)。もし職場や地域などで10-20人位の受講者をまとめることができ >ましたら、消防本部でも日赤でも早速、講習会の段取りをしてくれると思 >います。 情報をありがとうございました。もうそこまで世の中は進んでいたのですね。 我が身の不明を恥じるばかりです。時期を見て問い合わせてみたいと思います。 ところで救急処置の実習に用いる人形は、最近では頚動脈の脈動や瞳孔の反射 までシミュレートされていて非常に精巧なつくりになっているとうかがった ことがあります。消防本部や日赤にはこのような人形がすでに配備されている のでしょうか?4、Re:蘇生実習用の人形
(越智元郎、WNN:7314)
愛媛大学救急医学の越智です。 森田さんより(WNN:7309) >救急処置の実習に用いる人形は、最近では頚動脈の脈動や瞳孔の反射 >までシミュレートされていて非常に精巧なつくりになっているとうかがった >ことがあります。消防本部や日赤にはこのような人形がすでに配備されている >のでしょうか? 確かに一部の大学病院や消防本部では、シミュレーションができる精巧な人形 を購入している所がありますね。9月初めの日本蘇生学会でも、これを用いて医 学生の蘇生技術を評価したという演題がありました。 蘇生訓練用の人形は手荒に扱われますので、もともと壊れやすいものです。あ まり精巧なものだと高価だし、もっと壊れやすいのでは、というのがこれを持た ない私どものやっかみです。 蘇生法普及の半分は正確な技術を伝えることですが、残り半分は「危機に瀕し た隣人を助けるんだ」という”愛と勇気”を伝えることだと思います。そういう 意味では、精巧な蘇生人形を作り上げるのは日本人のテクノロジー好みにアピー ルするところはありますが、反面 枝葉末節のことではないかとも思います。安 ければ、どんな精巧なモデルも大歓迎ですが。 以下は救急医療メーリングリスト(eml)でも書いた内容なのですが、わが国で市 民による蘇生処置を受ける病院外心肺停止患者は、全体の高々10%内外であろ うと思います。私はこの「蘇生処置をしないのが当たり前(人並み)」であるわ が国の現状を何とかして変えないといけないと思います。皆様は心肺停止におち いった患者さんの90%が、救急隊員が到着するまで誰も何もせずに「放置されて いる」という事実をご御存じでしょうか? それでは森田さん、皆様、また。5、救急蘇生の合併症について
(M、WNN:7315)
M@実は元ボーイスカウト です。 Genro Ochi さんは書きました: > 蘇生法普及の半分は正確な技術を伝えることですが、残り半分は「危機に瀕し >た隣人を助けるんだ」という”愛と勇気”を伝えることだと思います。そういう >意味では、精巧な蘇生人形を作り上げるのは日本人のテクノロジー好みにアピー >ルするところはありますが、反面 枝葉末節のことではないかとも思います。安 >ければ、どんな精巧なモデルも大歓迎ですが。 では,その"愛と勇気"をもって蘇生しようとして,逆にそれが原因で死亡して しまったり,後遺症を残してしまったりした場合はどうなるのでしょうか? 蘇生法として有名な人工呼吸と心臓マッサージですが, 人工呼吸は下手をすれば肺を破裂させかねないし,心臓マッサージはこれも 最悪の場合心臓の破裂や心臓近くの臓器(肝臓など)に多大な損害を与えかね ません。この場合の法的な問題はどうなっているのでしょうか? > 以下は救急医療メーリングリスト(eml)でも書いた内容なのですが、わが国で市 >民による蘇生処置を受ける病院外心肺停止患者は、全体の高々10%内外であろ >うと思います。私はこの「蘇生処置をしないのが当たり前(人並み)」であるわ >が国の現状を何とかして変えないといけないと思います。皆様は心肺停止におち >いった患者さんの90%が、救急隊員が到着するまで誰も何もせずに「放置されて >いる」という事実をご御存じでしょうか? 私の高校時代の担任の先生が実際遭遇したケースなのですが, バイクで暴走行為をしていてひっくり返って大怪我をした高校生に 応急措置をした結果,それが原因と考えられる後遺症が残り, 最後はその高校生の親から裁判に持ち込まれた。 しかしそこで応急措置をとらなければ 出血多量で命も危うかったとのことでした この先生は,「これ以降,応急措置はもう学外ではしない」 とおっしゃっていました。 ちなみにこの話を聞いて私は, 「助かる見込みのない者と助ける価値のない者は助けない」 と心に決めました。6、心肺蘇生処置と法的問題
(越智元郎、WNN:7317)
愛媛大学の越智です。 Mさんより(WNN 7315) >では,その"愛と勇気"をもって蘇生しようとして,逆にそれが原因で死亡して >しまったり,後遺症を残してしまったりした場合はどうなるのでしょうか? >蘇生法として有名な人工呼吸と心臓マッサージですが, >人工呼吸は下手をすれば肺を破裂させかけないし,心臓マッサージはこれも >最悪の場合心臓の破裂や心臓近くの臓器(肝臓など)に多大な損害を与えかね >ません。この場合の法的な問題はどうなっているのでしょうか? 市民による心肺蘇生処置の法的な扱いについては、すでに一応の方針が出てい ます。すなわち「悪意または重過失がない限り、善意で実施した救命手当の結果 に民事的責任はない」ということです。詳しくは救急医療メーリングリスト(eml) のメンバーから提供いただいた資料が「全国救急医療関係者のペ−ジ(http:// apollo.m.ehime-u.ac.jp/GHDNet/jp/ems/)」の”救急医療メモ”のコーナ ーに「善意に法的責任なし(http://apollo.m.ehime-u.ac.jp/GHDNet/98/g903web2.html)」 と題して掲載されていますので、ご参照下さい。 皆様にぜひご理解いただきたいことは、心臓が停止して脳に血流(酸素)が行 かなくなってから3から5分たつと「非可逆的な脳損傷」を残す、という事実で す。これは病院外で発生した心停止の患者さんに誰も処置を行わなかったら、後 でどのように優れた治療を行っても、死ぬか植物状態に陥ってしまうということ を意味しています。日本では、119番通報がかかってから救急車が現場に到着 するまでに、平均5分以上かかります。それゆえ突然 心停止におちいった患者 さんがもう一度人間として活動できるようになるかどうかは、現場に居合わせた 一般市民の「愛と勇気」、誰に強制されたものでもない「孤独な決断」にかかっ ているのです。7、救急蘇生の経験
(T、WNN:7335)
T@元スチュワーデスです。 毎年2回ある健康診断のうち1回、心肺蘇生処置練習用の魅力的なお人形「○○子 ちゃん(名前を忘れました^^;)」(生き返れば青い目をパッチリ開けて微笑んでくれる )で、マウスツーマウスと風船状の人口呼吸器を使った人工呼吸と、心臓マッサージ を練習しました。私は○○子ちゃんと相性が良く、いつも1回で生き返ってくれまし た:-)。心臓にマッサージを加えたか強さのグラフも出してくれます。 Mさんは書きました: >人工呼吸は下手をすれば肺を破裂させかけないし,心臓マッサージはこれも >最悪の場合心臓の破裂や心臓近くの臓器(肝臓など)に多大な損害を与えかね >ません。この場合の法的な問題はどうなっているのでしょうか? 「倒れている人がいたら、動かすな」 を常識のように教えられて育ちましたが、研修の中で 「呼吸が停止して4分経つと蘇生率がグンと下がり、かつ蘇生した場合も重大な後 遺症が残る」 というグラフつきの説明を受けて「目からウロコ」でした。 で、倒れている人をみつけたらまず 1.呼吸の有無の確認 2.心臓が動いているかを確認 3.意識があるかどうかの確認 をして、ない場合は、気道確保の上、人工呼吸、心臓マッサージをただちにはじめ て、周りにいる人に援助を求める・・・という手順になります。 そんな研修を受けたおかげで、駅前で倒れていたお年寄りを見かけたとき(桃山台 だったので、フツー路上で人は寝ていない)、皆見て見ぬふりだったので慌てず騒が ず、上記3点を確認しました。意識だけなかったので舌沈下で息ができなくなること を恐れ、気道確保のため体を横に向けようとしました(が、妊娠中で渾身の力をふり しぼるわけにもいかず、実際には救急車の到着をまつしかなかった^^;)。 スチュワーデスの中には、酔っ払いが自分が吐いた物で息を詰まらせているところ に通りかかり、吐物が自分の顔に吐き出されるのをものともせず、人工呼吸で一命を とりとめた、という話も聞いています。 ところが、看護婦の妹には、 「救命活動もいいが、感染防止に気をつけなきゃいけない。血液・嘔吐物などには決 して触れるなかれ」 と注意されました。 機内で乗客が危篤に陥ったとき出てきてくれたお医者さんは人工呼吸をするとき、 まず患者の口の上にハンカチをのせました(機内には人工呼吸用のマウスピースや風 船状の人工呼吸器が載っています。 Genro Ochi さんは書きました: > 市民による心肺蘇生処置の法的な扱いについては、すでに一応の方針が出てい >ます。すなわち「悪意または重過失がない限り、善意で実施した救命手当の結果 >に民事的責任はない」ということです。 これで安心しました。「救命活動をして訴訟される」なんてことになったら、誰も 助けないし、助けてもらえなくなります。 さて、会社での年1回の研修だけで初歩的な救命活動ができるようになるわけです から、義務教育の保健体育の時間にでも実習できるようにすれば良いのではないでし ょうか?救急車が到着するまで何もできない、じゃ、自分の愛する人(たとえば乳幼 児がバケツの水に顔をつっこんで溺れたり、老親が食物をノドに詰まらせて窒息した り)も救えない。 人工呼吸の方法などは、学校でも確かにならった覚えがあります。が、○○子ちゃ ん人形ででも練習しないと、とても実際にやる勇気が出ません。特に力を入れすぎる と肋骨が折れるかも知れない、なんてことを思うと、蘇生に必要な力を心臓に加える ことなどできません。そういう意味で、きっと高価なんでしょうが○○子ちゃん人形 を何校かに1体持ってもらって、1年に1度でいいから実習するといいと思うのです。 と思いはするけれど、実際にどうしたらいいのかな(謎:-<)。8、心肺蘇生処置の順番
(越智元郎、WNN:7345)
愛媛大学の越智です。 Tさんより貴重なご経験を紹介していただき、誠に有難うございました。 一点、追加させていただきたいと思います。 Tさんより、 >倒れている人をみつけたらまず > 1.呼吸の有無の確認 > 2.心臓が動いているかを確認 > 3.意識があるかどうかの確認 > をして、ない場合は、気道確保の上、人工呼吸、心臓マッサージをただちにはじめ >て、周りにいる人に援助を求める・・・という手順になります。 処置の順番としては色々な教え方がありますが、最近は「応援を求める」の 重要性が強調されているように思います。 倒れている人を見つけたら、[処置をする人が1人の場合] 1)声をかけて意識の有無を確認する(どうしました? 大丈夫? わかりますか? 外国であれば ARE YOU OK?)。 ・うなり声でも何でも声が出ていれば心臓は動いているし、自発呼吸もあります ので、ある程度 時間的なゆとりがあります。 ・応答がなければ、心肺停止を含む最重症の患者という認識 → 2) 2)応援を求める(誰か119番して!、誰か手伝って!、外国であれば HELP!) 3)安全な場所への移動。固い平らなものの上に仰向けに寝かせる。 路上など危険な場所から離れます。仰向けにするのは観察と処置を容易にす るため。固い平らなものの上というのは特に心マッサ−ジを効果的に行うた め。 4)呼吸の有無を確認。 自分の耳を患者さんの口元へ近づけ呼吸の音を確認、同時に自分の頬に患者 さんの暖かい息を感じるかどうか、同時に目で患者さんの胸部が上下してい るかどうかを確認。5から10秒、呼吸がなければ呼吸停止 → 5) 5)呼気吹き込み人工呼吸法を2回 6)頸動脈の拍動を確認 5、6秒 頸動脈の拍動がなければ → 心停止と判断 → 7) 7)胸骨圧迫式心マッサ−ジを15回。 以後、人工呼吸2回、心マッサ−ジ15回を繰り返す。 WNNのメンバーの方には、上記のようなお話は釈迦に説法という方もおられる と思います。あるいは何かの参考にしていただければ幸いです。災害時には心肺停 止や外傷の患者さんが多数発生します。これらの犠牲者においては、心肺蘇生術と 止血術だけはその場に居合わせた人が直ちに行わないと、後では取り返しのつかな い結果になる恐れがあります。それゆえ、これらの救急処置は医療ボランティアに 限らず、災害地に入られるボランティアあるいはNGOのメンバーの方々にとって、 必須の知識であると認識していただければ幸いです。 それでは皆様、また。9、Webに載せたら、初期消火
(T、WNN:7347)
Tです。 Genro Ochi さんは書きました: >Tさんの投稿メール(WNN 7335)を私どもの「全国救急医療関係者のペ−ジ」 >(http://apollo.m.ehime-u.ac.jp/GHDNet/jp/ems/)の”他ネットから >の転載情報”のコーナーに掲載させていただきたいと存じます へえぇ。あんなでよろしければ(「魅力的な○○子ちゃん人形」なんて書いてます けど・・・^^;;;)、こちらこそお願いします。「スチュワーデス=実は保安要員」 ということを知っていただくのもいいかもしれません:-)。 >1)声をかけて意識の有無を確認する >2)応援を求める(誰か119番して!、誰か手伝って!、外国であれば HELP!) >3)安全な場所への移動。固い平らなものの上に仰向けに寝かせる。 >4)呼吸の有無を確認。 >5)呼気吹き込み人工呼吸法を2回 >6)頸動脈の拍動を確認 >7)胸骨圧迫式心マッサ−ジを15回。 とてもよくまとまっていて分かりやすいですね。越智さんの方に差し支えなければ Webに載せられませんか?プリントアウトして御家庭や職場に貼っておけるようにち ょっとデザインを加えて。 ------>どうですか?MMMさん、MmMさん?え、言い出しっぺがやることになっ てるって?そんなぁ。MmMさん、焚き火をする合間にぜひ:-P。 焚き火といえば、初期消火の方法もスチュワーデス時代に習いました。消防関係の かたってWNNのMLにいらっしゃいましたっけ!? 1.「火事だー!!」と大声で応援をもとめる。 2.あたりにあるもの何でもいいから(上着など)なんでもいいから火に叩き付ける。 3.初期消火を続けながら、最初にかけつけた人にさらに応援を求める(119番、消火 器集め、人集め)。 だったかな、と思います。閉鎖された室内で燃えている場合は、空気が入るとさら に燃え広がるので対応が異なります。また、もっと大きな火事になると??? 消火のために水なんかを捜す前に、その辺にあるもの何でもいいから叩きつけよ、 と教わりました。10、救急蘇生法の普及について
(Youhei Morita、WNN:7352)
森田@高エネ研です。 Tさんって元スチュワーデスさんだったんですか。 どうりで危機管理の基本が身体にたたき込まれているわけですね。尊敬。(@_@) Genro Ochi さんが 0:33 AM 96.10.19 +0900ごろに 「[WNN:7314] Re: 救急処置」の件で: > 蘇生訓練用の人形は手荒に扱われますので、もともと壊れやすいものです。あ >まり精巧なものだと高価だし、もっと壊れやすいのでは、というのがこれを持た >ない私どものやっかみです。 > > 蘇生法普及の半分は正確な技術を伝えることですが、残り半分は「危機に瀕し >た隣人を助けるんだ」という”愛と勇気”を伝えることだと思います。そういう >意味では、精巧な蘇生人形を作り上げるのは日本人のテクノロジー好みにアピー >ルするところはありますが、反面 枝葉末節のことではないかとも思います。安 >ければ、どんな精巧なモデルも大歓迎ですが。 おっしゃるとおりですね。確かに、あまり高価なものは壊れたときの処置が 面倒ですね。ただ、辻本さんがおっしゃるように、この手の訓練はやはり実習で マッサージや呼吸の強さなどを「身体で」覚え込んでおくことが非常に大事だと 思います。中学校や高校の保健室に一体ずつ置いておいていつでも授業で使うこ とができるような、頑丈で、そこそこリアルな人形を大量生産してもらえば、 コストダウンにつながる、ということはないでしょうか... 「愛と勇気を伝える」についてですが、私の場合は中学や高校の授業で どの先生だったかは忘れましたが、身近でおきた水難事故で人工呼吸が 役に立った事例を何かのおりにしゃべってくれたのがなどがずっと印象に 残っていました。20年も前の話ですが、記憶に残るものなんですね。 ただ、私の場合は実習をやったことがないので、実際にこの技術が必要と される現場に居合わせたときに手を出せるかどうかわかりません。 重要なことは、やはり、体験談を伝える、それもなるべく実際に体験した 人間の話を聞かせる、だと思います。もちろん、フォローとして訴訟関連の 話をしておくのも大事ですし、一般人が陥りやすい誤解をFAQとしてまとめて おくと、非常に有用だと思います。 あと、一般の人間は、人の死に立ちあう経験が少ないか皆無である場合が ほとんどですので、いったん始めてしまったマッサージをやめざるをえな かったとき(例:交通網がマヒして周りからの援助が受けられなかったとき) やめてしまったことに対する心理的、精神的ケア、なども、必須ですね。 Tさんが 10:29 AM 96.10.21 +0900ごろに 「[WNN:7335] Re: 心肺蘇生処置と法的問題」の件で: > 人工呼吸の方法などは、学校でも確かにならった覚えがあります。が、○○子ちゃ >ん人形ででも練習しないと、とても実際にやる勇気が出ません。特に力を入れすぎる >と肋骨が折れるかも知れない、なんてことを思うと、蘇生に必要な力を心臓に加える >ことなどできません。そういう意味で、きっと高価なんでしょうが○○子ちゃん人形 >を何校かに1体持ってもらって、1年に1度でいいから実習するといいと思うのです。 > > と思いはするけれど、実際にどうしたらいいのかな(謎:-<)。 同感です。 職場での防災訓練の際に消防署の協力を得て、講習および希望者への実習を行う、 などは、身近な一歩だと思います。あとは、運転免許証の更新講習の時に取り 入れてもらうか、ですね。 あと、越智さんに質問ですが、この心肺蘇生処置のPRビデオで、インターネット に載せても著作権の問題がないようなものはありませんか? もしあれば、 高エネ研のwebページにStreamWorksの動画像として載せておきたいと思います。 StreamWorksというのは、動画と音声をリアルタイム、もしくはあらかじめ サーバー側に準備しておいて、ネットワーク上で配信するための仕組みで、 クライアントは無料で入手することができます。 StreamWorksの様子を知りたい方は、 http://video.kek.jp:10220/ を見て、クライアントを入手の上、「研究所紹介ビデオ」を見てみてください。 インターネットを使えばこの手のことは簡単にできますが、でもやはり「講習」 と「実習」と「FAQ」がおおきな3本柱ですよね...11、救急蘇生法に関するホームページ
(越智元郎、WNN:7363)
愛媛大学の越智です。 Tさん、心肺蘇生処置の順番についてコメント有難うございました。 Tさんより[WNN:7347] >>1)声をかけて意識の有無を確認する >>2)応援を求める(誰か119番して!、誰か手伝って!、外国であれば HELP!) >>3)安全な場所への移動。固い平らなものの上に仰向けに寝かせる。 >>4)呼吸の有無を確認。 >>5)呼気吹き込み人工呼吸法を2回 >>6)頸動脈の拍動を確認 >>7)胸骨圧迫式心マッサ−ジを15回。 > > とてもよくまとまっていて分かりやすいですね。越智さんの方に差し支えなければ >Webに載せられませんか?プリントアウトして御家庭や職場に貼っておけるようにち >ょっとデザインを加えて。 文章をホームページに載せるのはよいとしまして、問題はイラストですね。他の ところから借りずに、楽しく美しく、わかりやすい図やイラストを描くのは私には 超たいへんです。 さて私の所でも、心肺蘇生法に関するページを作っています。ご御存知の方もお られるかも知れませんが、そのものズバリ「救急蘇生ホームページ(http://apollo. m.ehime-u.ac.jp/GHDNet/CPR/index-j.html)」です。私共のトップページである 「救急・災害医療ホームページ(http://apollo.m.ehime-u.ac.jp/GHDNet/ jp/)」からも入れます。 上記のページは、心肺蘇生法の父と呼ばれる、米国 Pittsburgh大学の Safar教授 の了解のもとに、彼の有名なテキストを下敷きにしています。難点としましては ・日本語訳が十分進んでいない(ボランティア求む!)、 ・一般の人にとってはやや学術的すぎる ・このテキスト以後、いくつか蘇生法の 変更があった、などです。有名なSafar教授の名前を私のホームページに出せたのは 私の一生の喜びではあるのですが、いろいろ忙しくページの充実が順調に進んでい ないことは残念に思っています。 あまり沢山はありませんが、心肺蘇生法に関するリンク集は http://apollo.m.ehime-u.ac.jp/GHDNet/jp/connection.html#cpr に作っております。ご参照いただければ幸いです。 最初のお話にもどりますが、プリントアウトして職場や家庭に貼っておけるよう なページというのは本当にいいですね。私の力だけではちょっと難しいのですが、 (特にイラスト関係)お力を貸して下さる方があればなあ。著作権がからみますの でやはりオリジナルでないといけませんので。。 それではTさん、皆様、また。12、蘇生処置の中止、蘇生の動画情報
(越智元郎、WNN:7364)
愛媛大学の越智です。 Tさん、森田さんその他の皆様から心肺蘇生処置や危機管理(火災への対処な ど)について、貴重なご意見をいただき有難うございます。今回も私の意見を2、 3追加させていただきいただきたいと存じます。 ◎ 森田さん@高エネ研より(WNN 7352) >あと、一般の人間は、人の死に立ちあう経験が少ないか皆無である場合が >ほとんどですので、いったん始めてしまったマッサージをやめざるをえな >かったとき(例:交通網がマヒして周りからの援助が受けられなかったとき) >やめてしまったことに対する心理的、精神的ケア、なども、必須ですね。 心肺蘇生術の教育は、できる限り同じ考え方や手技を伝える必要があります。一 部、異論のある点は種々ありますが、「市民がいったん開始された蘇生処置を蘇生 処置をやめてよい場合」については、ほとんど異論はないと思います。それは、 ・有効な自発呼吸や循環が回復 ・蘇生処置を救急隊員、日赤指導員、医師など責任のある第三者に引き継ぐ場合 ・蘇生処置を行っている人が疲労困憊してしまうか、生命の危険が迫った時 の3つの場合とされています。突然の心肺停止に対して蘇生処置を開始した場合、 多くの場合、救急車が到着するまで黙々と続行していただくことになります。それ ゆえ、蘇生処置を行うということには強い意志や善意が必要であるは間違いないこ とだと思います。 ◎ 森田さんより >あと、越智さんに質問ですが、この心肺蘇生処置のPRビデオで、インターネット >に載せても著作権の問題がないようなものはありませんか? もしあれば、 >高エネ研のwebページにStreamWorksの動画像として載せておきたいと思います。 StreamWorksという私にとっては未知の手段をお教えいただき、感謝しています。 心肺蘇生処置のビデオは各種あると思いますが、インターネットに載せてよいもの となると限られて来ます。 ひとつの候補は今年、愛媛大学医学部の1年生に救急蘇生法の実習を行ったとき の模様をデジタルビデオで撮ってあります。講師は日赤の指導員ですが、了承はい ただけると思います。少し編集をする必要があります。 もうひとつは、蘇生人形などの制作で有名なノルウエーのL社が今年制作した蘇 生処置の啓蒙のためのビデオを、ホームページ上の写真として使用することについ て了承を得ています。欧州のビデオ信号は日本や米国とは違うらしく、今ビデオを 日本向けに作りなおしている所です。交渉次第では、インターネット上の動画情報 として発信することが許されるかも知れません。 森田さんのご提案には私つよい関心を持っておりまして、今から少しあたってみ いと思います。今後ともご指導よろしくお願い致します。なお投稿メールのホーム ページ掲載につきましても、ご協力よろしくお願い申し上げます。 それでは森田さん、皆様、また。13、蘇生法を行った市民のストレス、動画
(Youhei Morita、WNN:7365)
越智さん、森田です。 At 11:01 PM 96.10.22 +0900, Genro Ochi wrote: > 心肺蘇生術の教育は、できる限り同じ考え方や手技を伝える必要があります。一 >部、異論のある点は種々ありますが、「市民がいったん開始された蘇生処置を蘇生 >処置をやめてよい場合」については、ほとんど異論はないと思います。それは、 > > ・有効な自発呼吸や循環が回復 > ・蘇生処置を救急隊員、日赤指導員、医師など責任のある第三者に引き継ぐ場合 > ・蘇生処置を行っている人が疲労困憊してしまうか、生命の危険が迫った時 > >の3つの場合とされています。突然の心肺停止に対して蘇生処置を開始した場合、 >多くの場合、救急車が到着するまで黙々と続行していただくことになります。それ >ゆえ、蘇生処置を行うということには強い意志や善意が必要であるは間違いないこ >とだと思います。 はい、越智さんの蘇生処置のwebページでこの点は勉強させていただきました。 「強い意志が必要」というのは、まことにその通りだと思います。 ただ私が言いたかったのは、実経験のない一般の人間が初めてこういう事態に 遭遇して、かつ助けられなかったとき、自分を責める傾向、あるいは周囲の 心無い言葉に傷つく心配はないのでしょうか?ということです。(特に3つめの ケース)例えば遺族から訴えられたというMさんの先生が、このようなメンタル ケアが必要なケースではないでしょうか? 職業的に訓練を受けていない人間が、 初めて人間の死に直面するということはかなりのストレスになりうると思います。 > ひとつの候補は今年、愛媛大学医学部の1年生に救急蘇生法の実習を行ったとき >の模様をデジタルビデオで撮ってあります。講師は日赤の指導員ですが、了承はい >ただけると思います。少し編集をする必要があります。 > > もうひとつは、蘇生人形などの制作で有名なノルウエイのL社が今年制 >作した蘇生処置の啓蒙のためのビデオを、ホームページ上の写真として使用するこ >とについて了承を得ています。欧州のビデオ信号は日本や米国とは違うらしく、今 >ビデオを日本向けに作りなおしている所です。交渉次第では、インターネット上の >動画情報として発信することが許されるかも知れません。 それは心強いですね。欧州で使われているビデオ信号は何種類かありますが、 おそらくPALという形式でしょう。これに対して日本やアメリカはNTSCという 形式を使っています。 PALからNTSCへの変換は日本でも有料のサービスを行っている会社があるよう です。あと、PALとNTSCの両方に対応したビデオデッキが販売されていますので、 ネットワーク上で事情を話して問い合わせれば、誰か変換に協力してくれる人が 現れるかもしれません。昔どこかで変換のための情報を見た記憶があるのですが あとで探してみます。とりあえず先方には「PALのままでいいから送ってよ」と いうのが近道かと...14、Re: 市民のストレス
(越智元郎、WNN:7369)
愛媛大学の越智です。 森田さんより (wnn 7365) > ただ私が言いたかったのは、実経験のない一般の人間が初めてこういう事態に > 遭遇して、かつ助けられなかったとき、自分を責める傾向、あるいは周囲の > 心無い言葉に傷つく心配はないのでしょうか?ということです。(特に3つめの > ケース)例えば遺族から訴えられたという三木さんの先生が、このようなメンタル > ケアが必要なケースではないでしょうか? 職業的に訓練を受けていない人間が、 > 初めて人間の死に直面するということはかなりのストレスになりうると思います。 私にとってもMさんのコメント(wnn 7315)は非常に重く響きます。このよう な精神的ストレスは、最高の条件で自分の前に現れた心肺停止患者の予後を社会復 帰に導けなかったと自分を攻める救急隊員や、集中治療室で働く看護婦さんの「燃 え尽き症候群」にも通じるお話だと思います。 私はそのようなメンタルストレスから善意の人々を解放するものは、やはり「知 は力なり」の「知(客観的な洞察力)」だと思っています。すなわち日本では病院 外での心肺停止患者さんが病院に運ばれた後、社会復帰できるのは1ー2%である という事実。たとえば米国では上記の比率がおよそ10%であるという事実。その 差のかなりの部分が市民による蘇生処置の施行率(日本10%以下、米国約30%) で説明されていること。仮に完璧な病院内外での処置が行われた場合の、病院外心 肺停止患者の社会復帰率が、米国でも30−40%ではないかと推測されているこ と。これらの事実を考える時、患者さんの肉親も、処置を施した善意の市民も、心 肺蘇生処置に魔法のような素晴らしい効果を求めてはならないことが、理解できる と思います。私は市民による心肺蘇生処置は「結果的に無益となることの方が多い がそれでもする」という、強い善意によってなりたつものだと思います。
以下、転載メール([eml:02013] CPRの件)
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S@赤十字救護ボランティア です。
越智さん、WNN からの転載、ありがとうございました。 8月から9月にかけて、皆さんから様々なご意見をいただいたことを、 思い出しながら読みました。
さて、その内容について。
T@元スチュワーデス さんから
> きっと高価なんでしょうが○○子ちゃん人形を何校かに1体持ってもらって、
> 1年に1度でいいから実習するといいと思うのです。
>
> と思いはするけれど、実際にどうしたらいいのかな(謎:-<)。
以下、eml:1585を転載させていただきます(越智)。
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S@赤十字救護ボランティア です。
まず講習の件
日赤についてはMMさん、消防についてはIさん、Kさんから、
既にコメントが上がっていますが、
日赤の指導員、消防の応急手当普及員で両方にかかわっているので、まとめを。
時間的に考えても、消防の3時間または8時間に対して日赤は24時間と長く、
内容的にも絶対量が違います。
消防では主にCPRを中心に、とにかく受講経験者を増やす方針のようです。 これは、[eml:01468] でIIさんがご指摘のように、 救急法施行は基本的に講習などを受けた者が行うとしたとき、大いに貢献しています。 都会での緊急事態に対応する考え方が基本にあるように思います。
他方、日赤ではCPRだけでなく、体位管理、包帯法、固定方、運搬法まで、 幅広く講習しています。これは、戦時救護から平時救護(災害救護他)に移行してきた、 赤十字の事業展開と関連していると思います。 また、救護員(看護婦)養成も行っている関係で、数年前までは技術伝達を重視し、 検定も手技、でき上がり、全てが細かく厳しく採点されていました。
というわけで、一通りの知識と手技とを身につけるには消防の講習が、 さらに深く勉強するには日赤の講習がよいと思います。 消防の半日から一日に対して、日赤は、短くても4日、長ければ10日かかります。 時間のやりくりと内容とを勘案して、受講されてはいかがでしょうか。
訓練間隔の件
日本赤十字社東京都支部では、救急法フォローアップ講習として、
昨年度までは月一回の頻度で、救急法合格者を対象に単元復習講習を、
また、今年度はより密度濃く、指導員養成講習を目指す人を対象に、
全単元を集中して復習する講習を行っています。
また、指導員の仲間でも、1か月に1回は講習を持たないと、技術が保てない、
といっている者もいます。やはり繰り返しが大切ですね。
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16、「倒れている人を見つけたら」(1人法、2人法)
(越智元郎、WNN:7404)
Tさん、MZさん、「倒れている人を見つけたら」のHP掲載有難うございま
した。
さて、倒れている人を見つけたら(処置をする人が1人の場合)となって
いますが、処置をする人が2人の場合の処置法も織り込めたらべターですね。
以下の文章では如何でしょう?
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倒れている人を見つけたら
1.声をかけて意識の有無を確認する。
「どうしました?大丈夫?わかりますか?(外国であれば)
Are you OK?」
うなり声でも何でも声が出ていれば心臓は動いており自発呼
吸もあるので,ある程度時間的なゆとりがある。応答がなけれ
ば,心肺停止を含む最重症の患者という認識を持つ。→ 2へ
2.応援を求める。
「誰か119番して!誰か手伝って!(外国であれば)Help!」
3.安全な場所への移動。固い平らなものの上に仰向けに寝かせる。
路上など危険な場所から離れる。仰向けにするのは観察と処
置を容易にするため。固い平らなものの上というのは特に心マ
ッサ−ジを効果的に行うため。
4.呼吸の有無を確認する。 自分の耳を患者の口元へ近づけ呼吸
の音を確認,同時に自分の頬に患者の暖かい息を感じるかどう
か,同時に目で患者さんの胸部が上下しているかどうかを確認。
5〜10秒,呼吸がなければ呼吸停止と判断する。→ 5へ
5.呼気吹き込み人工呼吸法を2回する。
6.頸動脈の拍動を確認する。
5〜6秒。頸動脈の拍動がなければ心停止と判断する。→ 7へ
7-1.処置をする人が1人の場合(1人法)
同じ人が胸骨圧迫式心マッサ−ジを15回行う。
以後,人工呼吸2回,心マッサ−ジ15回を1人で繰り返す。
7-2.処置をする人が2人の場合(2人法)
介助者に胸骨圧迫式心マッサ−ジを5回してもらう。
最初の人が人工呼吸を1回行う。
以後,呼吸1回、マッサ−ジ5回を2人で繰り返す。
gochi@m.ehime-u.ac.jp
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