以下、番組の内容(=*)とわたしの感想・考えを述べてみたい と思います。
1 安否確認のために車で移動
番組では、阪神大震災で交通渋滞の発生した原因をさぐる為、当 日運転をした人達に何の目的で自動車を使ったかアンケートをと っており、その一番が「安否確認のため」というものでした。
安否確認のために混乱がおきたものには電話もあげられています が、これについては伝言ダイヤル形式のシステムがNTTほかで 構築が進められているほか、企業向け数千人規模のパソコンによ る確認システムもすでに実用化されています(*)。
とはいっても、「不用不急の電話はかけない」ことが一番重要な ことです。遠くから状況を聞いても、現場に行けないのでは相手 にとって具体的な助けにはなりません。言葉のなぐさめもそれだ けで安心するほど被災者の心理は安定していません。
「不用不急の電話はかけない」 これは震災後、災害時の安否情報システムについて研究した兵庫 ニューメディア推進協議会の個別分科会でも提言の中に取り上げ られています。
さて、安否確認のために市内に向かった自動車は、消火活動の為
のホースを傷つけたり、負傷者を運ぶ車の妨げになりました。
「縁故者の無事を知りたい・助けたい」という要求は極めて自然
なものではありますが、そのようにして「車を使ったがために失
われた命があった」ことは確かと考えます。
特に、早期に行なう必要があった生き埋め者の救出活動に際して
は、自衛隊(福知山)の現地入りが極端に遅れた(24時間かか
った)とされている(*)点に注目すべきでしょう。
2 震災時には車を使わない
「震災時には自動車は使わない」ということは、阪神大震災以前 から地震時の対応として知られていることでしたが、これが少な からぬ人達によって守られなかったのは、ある意味で被災者の頼 みとする行政の対応への潜在的・あるいは報道をみての不信感に よるものでもあったかも知れません。
それでも、自動車を運転する人達はキーを握る前に次の三つを自
問すべきです。
「他の救援活動に支障を与える自動車を乗り入れる資格があるのか」
「自動車以外の方法(徒歩・自転車)をとるべきではないか」
「そもそも自分がいくことでどれだけのことができるのか」
自衛隊練馬部隊が実際に朝の混雑時期に車両移動訓練を行った際、 3Km進むのに一時間ほどかかっている(*)そうです。 また、実際の部隊移動を想定した際、最初の車両と最後の車両の 到着時刻差は4時間にも上り、作業効率を最大に発揮するまでに 相当の時間がかかる(*)ことが予想されます。
道路以外の方法(ヘリコプター/河川)では量的にかなり制限さ れたものになり、活動に支障が生じることが予想されます(*)。
このままでは、いくらシステム的に救援の仕組みを構築したとこ ろで、大都市東京の災害救援活動は絶望的とも言えます。
3 進むべき方向
3−1 現場への権限委譲
さて、注目したいのは番組中とりあげていたノースリッジ地震に
おける米国行政担当の動きです。
交通担当の局長は、ただちに被害状況を確認ののち、くずれたハ
イウェイの代替路の検討を被災2時間後に行なっています(*)。
そして8時間後には代替路使用のための交通路確保の活動を行な
っています。迂回には迂回路表示板などが必要となりますが、こ
れに使用されたのはロス・アンジェルス・オリンピックの際に使
用した(恐らくマラソンの)コース案内表示票でした(*)。
そうした「臨機応変」は、「現場を知らないものには的確な指示
が出せない」と言い切っていた現場責任者の意識に裏打ちされた
使命感と権限委譲の仕組みによるものでありましょう。
3−2 出社のための交通渋滞を低減
また、ロス・アンジェルス企業の普段の備えにも注目すべきです。 多くの企業が地元amラジオ局と以下のような協定をしています。 「震災などの際には、出社には及ばないことをアナウンスする」 また、社員には以下のようなことを徹底しているそうです。 「緊急時には指定するamラジオ局のアナウンスを聴取すること」 (*)
これにより、出社のための交通渋滞を減らすことが可能となって います。
3−3 物流車両の効率的運用
神戸市ではさきの震災での支援物資受付を神戸市役所で行いまし た。これによりすべての物流車両が神戸に集中し、さらにそれら を仕分けして各避難所に向かう車両で交通渋滞が進みました。 これを教訓に神戸市では市内を3つの地域にわけ、物資集積拠点 をそれぞれに設置することで効率的配送を計画しています。 これにより40%効率があがることがシミュレーションで予想さ れています(*)。
わたしの考えでは、こうした場合周辺の自治体が協力し、支援物
資を被災地外にて集積し、仕分けした後に一筆書きで避難所を廻
るような仕組みにすべきだ思います。
災害対策が自治体単体で完結するよう求められている模様で、そ
のためにこうした発想になるのでしょう。
所要物資の種類・量は避難所における被災者情報(安否情報とほ ぼ近い)に基づき算出され、在庫・鮮度監理もパソコンなどを用 いて効率的に行なえるようヒト・モノ・キザイの整備を進めるべ きでしょう。これを物流と組み合わせた姿は、コンビニエンス・ ストアに見ることができます。
このことは、新たなシステムを創ることを必ずしも意味しません。 自治体担当職員が普段からシステマティックな物事の考えかたや、 情報関連機器の基本的操作能力を持っていれば、パソコン(出来 れば電話回線も加われば)一台である程度のことが可能でしょう。 いつ使われるか判らない特定の目的のためのシステムは、高度に 専門能力が必要となり、かつ習熟度が低いため、不慮のトラブル で活用されないことがあります。(兵庫県の衛星通信設備など)
4 最後に
これらのすべてが被災状況、特に安否情報に深く関っています。 震災から1年半以上たち、震災を教訓とした改善にはさまざまな 動きがあるようですが、これらを統合した報告なり、あるいは市 民は具体的にどうしたらよいか・・・という話があまり聞かれな いように思います。
多くの人命と引替えに得た教訓が生かされるかどうか、引き続き 注目していく必要があるようです。
安否については昨年の4月にこれをテーマに書いたものがありま
すので、再度見る方には迷惑になりますが、掲示します。
FROM ONE GUN ROAD
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