腸管出血性大腸菌による食中毒患者の診療に当たる
医師の皆さんへ
平成8年7月16日
厚生省生活衛生局食品保健課
東京都千代田区霞ヶ関1-2-2
電話03-3959-2326/FAX03-3603-7965
腸管出血性大腸菌による食中毒患者の診療に当たる医師の皆さんへ
今回の一連の病原性大腸菌O−157による食中毒事例につきましては、患者の方の診療につきましてご尽力いただいているところであります。先生方には、既にご承知のこととは存じますが、腸管出血性大腸菌感染患者が発生したときの対応等についてまとめましたので、ご参考までにお知らせいたします。
1、一連の病原性大腸菌O−157による食中毒事例について
平成8年5月28日に、岡山県邑久町において、保健所に食中毒様症状患者の届出があり、5月29日に病原性大腸菌O−157を検出されました。現在までに468人の患者(有症者)が発生し、内2名(いずれも小学校1年女児)が6月1日,5日に死亡しています。これに続き、大阪府堺市の事例を含め32都府県でO−157により、7月16日現在、有症者累計6,174名、入院中の者295名、死者4名に及んでいます。
2、症状,検査,保健所への届け出等について
病原性大腸菌O−157を含めVero毒素を産生する腸管出血性大腸菌による食中毒は、腹痛を伴う1〜2日間の水様性の下痢に引き続く出血性の下痢が特徴です。また、嘔気、嘔吐は約半数に(比較的軽症のことが多い)、38℃以上の発熱も7〜29%に認められます。特に腹痛を伴う出血性の下痢の患者を診察したときには、腸管出血性大腸菌による感染を念頭に、検査を進めることが必要となります。
腸管出血性大腸菌による大腸炎の診断のためには、便中の本菌の検出が必要ですので、診察の結果、腸管出血性大腸菌感染症を疑ったときには、抗菌薬療法の開始前に検体を採取し検査を行ってください。
腸管出血性大腸菌等の食中毒患者もしくは疑いのある患者を診察したときは、保健所への届け出が義務づけられていますので、電話等ですみやかにその旨を届け出てください。なお、地方衛生研究所が検体検査を受け付けられますので届け出先の保健所とご相談ください。
3、治療について
腎機能低下等に留意しつつ、下痢症の一般療法として、安静、水分補給等を行います。抗生物質は、腎機能の低下等に気を付けて使用してください。重篤な合併症、溶血性尿毒症症候群の兆候である蒼白、倦怠、乏尿、浮腫、また、傾眠・幻覚・けいれんなどの中枢神経症状に留意して経過を観察してください。尿中蛋白質の異常、潜血反応、血小板の急激な減少、血中LDHの異常な上昇が溶血性尿毒症症候群の早期から認められますので、注意してください。また、必要に応じ、家族等に対し、二次感染予防方法について指導を行ってください。
なお、症状が軽快し、発症から15日程度を経過していれば、溶血性尿毒症症候群の続発の可能性はほぼないといわれています。
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