96/06/17

病原性大腸菌Oー157による食中毒に対する対応

衛食第155号
平成8年6月17日


  都道府県知事
各 政令市市長  殿
  特別区区長

厚生省生活衛生局長

病原性大腸菌O−157による食中毒に対する今後の対応について

 病原性大腸菌O−157による食中毒事故については、平成8年5月下旬よりこれま で計4件が続発し、死者及び入院中の重症者がみられるほか、2次感染のおそれがある 状況にかんがみ、平成8年6月14日、食品衛生調査会食中毒部会大規模食中毒等対策 に関する分科会を開催し、検討した結果、別添のとおり意見がとりまとめられたので通 知する。

 貴職におかれては、別添の意見を踏まえ、特に、乳幼児、小児及び高齢者に食事を提 供する施設に対して、衛生管理の監視指導を行い、病原性大腸菌O−157による食中 毒に対する対応に万全を期するようよろしくお願いする。また、別添の意見の別紙「病 原性大腸菌の予防対策等について」の内容については、パンフレット等を作成して管下 に周知することにより正しい知識の普及に努めるようお願いする。

 なお、別添の意見については、文部省体育局長及び社団法人日本医師会会長あて別途 通知し、協力方要請していることを念のため申し添える。


(別添)

食品衛生調査会食中毒部会大規模食中毒等に関する分科会における
病原性大腸菌O−157による食中毒に関する緊急検討結果について

 本日、標記分科会において病原性大腸菌O−157による食中毒について検討され、 下記のとおり意見がとりまとめられた。

1.本年に入り5月下旬より続発している病原性大腸菌O−157による食中毒の発生
  防止策としては、既に厚生省が6月6日及び6月12日に通知した内容を遵守させる
  ことが妥当であること。したがって、各自治体に本通知の徹底を図るよう周知するこ
  とが肝要であること。

2.また、国民に対して病原性大腸菌O−157についての正しい知識の普及を行うこ
  とが、本菌による食中毒の未然防止や被害拡大の防止、更には不安の解消に必要であ
  ることから、本菌の特徴や予防策等についてわかりやすく解説することが肝要である
  こと。(別紙参照)

3.本菌による食中毒が発生した場合、2次感染等の被害拡大の防止を図る意味からも
  、特に血便を伴う下痢症を診察した場合には、病原性大腸菌O−157による可能性
  を疑い、その検査を行うことが肝要であること。

4.今回の一連の本菌による食中毒事件については、関係自治体において調査が進行中
  であり、現在までに原因食品は特定されていないが、喫食されたもののうち、一連の
  事件間で同一のものは認められないこと。

5.過去に発生した10例の病原性大腸菌O−157による食中毒等の事故の原因は一
  例を除いて不明であるので、原因の究明に必要な方法等について、今後、食品衛生調
  査会で検討を行うこと。

6.厚生省は関係省庁と連携を密にし、さらなる情報収集に努め、大規模食中毒の防止
  対策等について、引き続き食品衛生調査会において検討を行うこと。


(別紙)

病原性大腸菌の予防対策等について

1 病原性大腸菌とは

  大腸菌は、正常な人の腸にも存在する細菌ですが、最近、数県において発生し、死亡
者まで出している大腸菌は、病原性大腸菌O−157と分類されています(正確には、死
亡者を出すような毒性の強い菌は「大腸菌O−157:H7」と細かく分類されています。
)。この菌による下痢は、はじめは水様性ですが、後には、出血性となることがあるこ
とから、腸管出血性大腸菌とも呼ばれています。
  この菌は、ベロ毒素と言われる毒素を産生することが特徴で、これにより腎臓や脳に
重篤な障害をきたすことがあり、菌の感染力や毒力は、赤痢菌なみと言われています。
  これまで我が国で報告されている死者は、全て乳幼児及び小児ですので、乳幼児、小
児や基礎疾患を有する高齢者の方(以下「乳幼児等」と略します。)では、重症に至る
場合もあるので、特に注意を要します。なお、本菌は家畜等の糞便中に見つかることが
あります。

2 我が国での発生状況等について

  この菌は、アメリカで1982年ハンバーガーを原因とする集団下痢症が起こったときに
、はじめて患者の糞便から見つかりました。
  日本においては、1990年に埼玉県浦和市の幼稚園で汚染された井戸水により死者2名
を含む268名に及ぶ集団発生が報告された以降、注意を要する食中毒の原因菌として知
られています。
 平成7年度までに、我が国でもこの菌により10件の集団食中毒等の事例が報告されて
、合計3名の死者が出ています。

3 予防対策は

 本菌を含む家畜あるいは感染者の糞便等により汚染された食品や水(井戸水等)の飲
食による経口感染がほとんどですが、この菌は、他の食中毒菌と同様熱に弱く、加熱に
より死滅します。また、どの消毒剤でも容易に死滅します。なお、以下のことを行えば
、感染を最小限に食い止められますので、心配はいりません。

(1)感染予防には、以下のことが有効です。
  1.食品の保存、運搬、調理に当っては、衛生的に取り扱い、かつ、本菌による汚染が
  心配されるものについては、十分な加熱を行ってください。
  2.食品を扱う場合には、手や調理器具を流水で十分に洗ってください。
  3.飲料水の衛生管理に気を付けてください。特に、井戸水や受水槽の取り扱いに当っ
  ては、注意してください。

(2)なお、万一、出血を伴う下痢を生じた場合には、以下の事項に気を付けてください。
  1.ただちにかかりつけの医師の診察を受け、その指示に従ってください。乳幼児等は
  特に注意してください。
  2.患者の糞便を処理する時には、ゴム手袋を使用する等衛生的に処理してください。
    また、患者の糞便に触れた時には、触れた部分を逆性石鹸や70%アルコールで消毒
  した後、流水で十分洗い流してください。
  3.患者の糞便に汚染された衣服等は、煮沸や薬剤で消毒したうえで、家族のものとは
  別に洗濯し、天日で十分に乾かしてください。

(3)患者がお風呂を使用する場合には乳幼児等との混浴を控えてください。

    問い合わせ先 厚生省生活衛生局食品保健課
     担 当 石原(内2445)、中山(内2450)