用語プロトコールとプロトコル

救急医療メーリングリスト(eml-nc)の論議

文責:越智元郎(2006年1月12日)



目次

越智 [eml-nc6: 0097] 策定小委員会への意見書(プロトコールとプロトコル)
水野 [eml-nc6: 0099] Re: 策定小委員会への意見書(プロトコールとプロトコル)
越智 [eml-nc6: 0103] Re: 099 策定小委員会への意見書(プロトコールとプロトコル)
水野 [eml-nc6: 0109] Re: 099  策定小委員会への意見書(プロトコールとプロトコル)
水野 [eml-nc6: 0110] Re: 099  策定小委員会への意見書(プロトコールとプロトコル)
水野 [eml-nc6: 0114] 策定小委員会への意見書(発送しました)
水野 [eml-nc6: 0115] Re: 用語のプロトコル(策定小委員会への意見書(発送しました)
水野 [eml-nc6: 0116] Re: 用語のプロトコル(策定小委員会への意見書(発送しました)
水野 [eml-nc6: 0117] Re: 用語のプロトコル(策定小委員会への意見書(発送しました)
越智 [eml-nc6: 0118] Re: 115 用語のプロトコル
水野 [eml-nc6: 0123] Re: 115  用語のプロトコル


救急医療メーリングリスト(eml-nc)における意見交換


越智 [eml-nc6: 0097] 策定小委員会への意見書(プロトコールとプロトコル)  eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。  日本版救急蘇生ガイドライン策定小委員会への意見書を作成中です。 意見書(案)の中の「3e. 心肺蘇生に関する用語統一の問題」の項に 「プロトコールとプロトコル」の提案を追加しました。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 3e. 心肺蘇生に関する用語統一の問題  1.心臓マッサ−ジ、(前)胸部圧迫と胸骨圧迫  2.エピネフリンとアドレナリン ★3.プロトコールとプロトコル  「protocol」は活動手順などの意でしばしば出てくる英語ですが、ほ ぼ日本語化しており、このまま翻訳せずに使用することに問題はないと 思います。ただ、この語は物理学、通信などの分野では「プロトコル」 と長音を省いて記載されているのに対し、医学の分野においてのみ「プ ロトコール」と「プロトコル」が混在しています。日本語表記の方向性 として長音「ー」を省略する流れであり、心肺蘇生法指針や関連文書に おいては「プロトコル」で統一するべきであると考えます。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  引き続き、皆様のご意見を宜しくお願いいたします。 ---- Genro Ochi gochi@m.ehime-u.ac.jp


水野 [eml-nc6: 0099] Re: 策定小委員会への意見書(プロトコールとプロトコル) 水野義之@京都女子大学です。 ご無沙汰しております。素人ですが、プロトコールとプロトコルの 用語の問題は、以前も小生からEMLへ投稿させていただいた ことがあったので、ここでも、少し、コメントさせていただきます。 Genro Ochi wrote: > 日本版救急蘇生ガイドライン策定小委員会への意見書を作成中です。 >意見書(案)の中の「3e. 心肺蘇生に関する用語統一の問題」の項に >「プロトコールとプロトコル」の提案を追加しました。 > >〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 >3e. 心肺蘇生に関する用語統一の問題 (中略) >★3.プロトコールとプロトコル > > 「protocol」は活動手順などの意でしばしば出てくる英語ですが、ほ >ぼ日本語化しており、このまま翻訳せずに使用することに問題はないと >思います。ただ、この語は物理学、通信などの分野では「プロトコル」 >と長音を省いて記載されているのに対し、医学の分野においてのみ「プ >ロトコール」と「プロトコル」が混在しています。日本語表記の方向性 >として長音「ー」を省略する流れであり、心肺蘇生法指針や関連文書に >おいては「プロトコル」で統一するべきであると考えます。 >〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 統一すべきかどうかの議論は、当事者たる専門家のみなさまに お任せしたいと思いますが、物理学が出てきたので、以下、コメントです。 ここで、   物理学、通信などの分野では「プロトコル」、 と書かれていますが、これはおそらく、   情報通信、心理学などの分野では「プロトコル」 という風にされるのがよいのではないかと思います。 というのは、物理学では、プロトコルという言葉を 物理用語として使うことは、まぁないだろうと 思うからです。 ご存じのように、HTTPというプロトコルは、CERNという 基礎物理の研究所(欧州共同素粒子物理学研究所)の Tim Berners-Leeさん http://www.w3.org/People/Berners-Lee/Overview.html http://www.w3.org/History/1989/proposal.html が発明したことになっているので、 プロトコルも物理分野と関連があるように思われるかも しれませんが、純粋な物理学の分野内部では、 この言葉プロトコルは、おそらく使われないです。 では、情報通信「以外」の分野で、どういう分野で このプロトコル(またはプロトコール)という言葉 が使われるのか、というと、心理学で使われるようです。 そして、心理学分野でも、(たまたまかもしれませんが) プロトコールではなくて、プロトコルです。 また http://sciterm.nii.ac.jp/ によると、以下の分野では、プロトコールという言葉は使われていません。 * *遺伝学編(増訂版)*: [ プロトコール: 0 ] * *海洋学編*: [ プロトコール: 0 ] * *気象学編(増訂版)*: [ プロトコール: 0 ] * *キリスト教学編*: [ プロトコール: 0 ] * *計測工学編*: [ プロトコール: 0 ] * *言語学編*: [ プロトコール: 0 ] * *原子力工学編*: [ プロトコール: 0 ] * *建築学編(増訂版)*: [ プロトコール: 0 ] * *航空工学編*: [ プロトコール: 0 ] * *採鉱ヤ金学編*: [ プロトコール: 0 ] * *地震学編*: [ プロトコール: 0 ] * *心理学編*: [ プロトコール: 0 ] * *数学編*: [ プロトコール: 0 ] * *船舶工学編*: [ プロトコール: 0 ] * *地学編*: [ プロトコール: 0 ] * *地理学編*: [ プロトコール: 0 ] * *天文学編(増訂版)*: [ プロトコール: 0 ] * *図書館情報学編*: [ プロトコール: 0 ] * *土木工学編(増訂版)*: [ プロトコール: 0 ] * *物理学編(増訂版)*: [ プロトコール: 0 ] * *分光学編(増訂版)*: [ プロトコール: 0 ] * *論理学編*: [ プロトコール: 0 ] ただし、専門分野は、これ以外にも多いので、漏れがあるとは 思います。 なので、少なくとも、情報通信と心理学では、 プロトコールではなくて、プロトコルであることは 確認できます。


越智 [eml-nc6: 0103] Re: 099 策定小委員会への意見書(プロトコールとプロトコル)  京都女子大 水野さん、eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越 智元郎です。 〇 MIZUNO Yoshiyuki さんは書きました(eml-nc6: 0099): >ここで、 >  物理学、通信などの分野では「プロトコル」、 >と書かれていますが、これはおそらく、 >  情報通信、心理学などの分野では「プロトコル」 >という風にされるのがよいのではないかと思います。 → 有難うございました。意見書を訂正いたしました。 〇 >では、情報通信「以外」の分野で、どういう分野で >このプロトコル(またはプロトコール)という言葉 >が使われるのか、というと、心理学で使われるようです。 > >そして、心理学分野でも、(たまたまかもしれませんが) >プロトコールではなくて、プロトコルです。 > >また >http://sciterm.nii.ac.jp/ >によると、以下の分野では、プロトコールという言葉は使われていません。 → 上記は面白いサイトですね。   「プロトコル分析 protocol analysis」    心理学編 0043750 Copyright 1986 文部科学省,日本心理学会   というような資料が引っかかって来ました。心理学で「プロトコル」が   出てくるのは少し驚きです。  それでは引き続き宜しくお願いいたします。 ---- Genro Ochi gochi@m.ehime-u.ac.jp


水野 [eml-nc6: 0109] Re: 099 策定小委員会への意見書(プロトコールとプロトコル) 水野義之@京都女子大学です。 Genro Ochi wrote: > >ここで、 >>  物理学、通信などの分野では「プロトコル」、 >>と書かれていますが、これはおそらく、 >>  情報通信、心理学などの分野では「プロトコル」 >>という風にされるのがよいのではないかと思います。 > > → 有難うございました。意見書を訂正いたしました。 この問題を、 外来語をどのように、カタカナで音訳して、日本語化するか、 という問題として、捕らえますと、 こんな風に(以下のように)なっているのではないかと思います。 あくまでも、「これは日本語である」と考えるのが出発点です。 例えば、ネックレスと言うと、これが何であるか、日本人には わかりますが、英語圏の人は、これを聞くと、 necklessと聞こえて どう考えても「首なし」(?)という意味不明の言葉に聞こえる と思います。でも正しくは、ネックレース(necklace)ですよね。 しかし、「ネックレス」は、辞書にも出ていて、きちんと通用します。 この事態は、ネックレスが、日本語であることを意味すると思います。 音は符号でしかありません(元の英語の音訳そのものではありません)。 つまり、正しい(正確な)音訳ではなくても、 それが日本語として成立しているのかどうか、ということが問題です。 そしてそのことで、 どういう言葉に統一するか(あるいは統一しないでおくのか) ということが、判断される、と考えることが出来る と思うことにします。 さて、protocolという言葉を、どういう日本語に置き換えるか。 このprotocol言葉は、英語としての語源は、proto+colと分解できて、 protoは、プロトタイプのプロトとか、陽子のプロトンと同じproto- と同じ。つまり、原形の、とか、もとの、という意味です。 またcolという部分は、糊、という意味です。(語源的説明は省略します)。 とにかく、この言葉を、英語として発音して、それを正確に音写すると、 こんな風になる、と私には聞こえます。 プロウトコール、または、プロウトコル http://dictionary.goo.ne.jp/voice/p/02061550.wav プロトタイプも、正しくはプロウトタイプです。 しかし、ドイツ語でも、フランス語でも、プロトコル、と発音されると思います。 そういうわけで、protocolの場合も、 日本語でのプロトコールはやはり日本語の一種であって、 プロトコールという音の外国語は、正確には、存在しない だろうと思います。 同様な意味では、正確には、プロトコルという音の外国語も 存在しないと断言できます。この理由は、LとRの違いになります。 日本人がprotocolを発音すると、たいてい、plotocolだと思って 発音することでしょう。この事情は、ネッックレスが正しくは ネックレースだと聞くと、大部分の日本人がきっとこれはneckrace だと思う、という事情と同じです。(でも正しくは、necklaceでした)。 つまり、日本人には、永久に、外国語を正しく音写出来ないのです。 (もちろん、私も出来ません、当たり前です、日本人の音環境で 育った結果です。相当に訓練すると区別できますが、今の 日本の言語環境では、無理だと思います。) 以上のことから、同じ意味のことばで、なおかつ音訳のはずであっても、 外国語の音と、日本語の音とは、(細かいことを言うと)異なっていてもいい、 と思うことにします。 これが、最初に書いた、「これは日本語である」、ということの意味 になります。 では、そこで、protocolの問題に戻ります。 これ以上、議論を引っ張るのも躊躇するので、結論を言います。 越智さんの判断が、バランスの上でも、ぼくとしては賛成です。 つまり、どういう用法にあわせるか、という根拠として 1)もともとはある分野の専門用語であった言葉ですが、実は他の分野でも 使われており、しかも一般用語としても(ネット時代で、プロトコルという 意味と音として)非常に広く使われることになってしまった状況で、 しかも類似の音で、類似の意味を持つ場合には、 これを別の日本語として、別の表記を続けることのメリットは 少なくなっている、という判断。 2)長音の「ー」は省かれる方向で、用語が統一される場合が 増えている、という判断。例えば、データーからデータへ、 コンピューターからコンピュータへ、マネージメントとか マネッジメントとかからマネジメントへ、という場合などに この傾向は見られる、という事例。 この2つの根拠は、ある程度の説得力を持つと思います。 ただし、以下の注意も有用かと思います。 1)そのまま、両方が存在していてもいい、という議論もありうる。 これは専門家でないと何とも言えませんね。 2)表記のゆれ、という言葉があって、どちらでもいい、という 判断もありうること。例えば、検索エンジンなどでは、 この(上記の)違いを無視するように設計されている場合が多いと思います。 > >http://sciterm.nii.ac.jp/ >>によると、以下の分野では、プロトコールという言葉は使われていません。 > > → 上記は面白いサイトですね。 はい、ぼくは学部学生のころから、これの元になった、学術用語集 という本の物理学編を買って喜んでおりました(変人?)。 >  「プロトコル分析 protocol analysis」 >   心理学編 0043750 Copyright 1986 文部科学省,日本心理学会 >  というような資料が引っかかって来ました。心理学で「プロトコル」が >  出てくるのは少し驚きです。 ですね。哲学分野でも使われるようです。 -- MIZUNO Yoshiyuki 水野義之


水野 [eml-nc6: 0110] Re: 099 策定小委員会への意見書(プロトコールとプロトコル) 水野義之@京都女子大学です。 プロトコールとプロトコルの件で補足です。 英語学の専門家ではないので、間違っているかも しれませんが、常識的だと思う範囲で補足します。 もうひとつ、ぼくが個人的には、 プロトコール、よりも、プロトコルを、推薦する 理由は、英語の音、そのものにあります。 言葉には、音節というのがあって、例えば、 protocol であれば、pro・to・col と3つの音節に 別れるわけですね。 これで、最後の音節を、xxコールと発音させたければ、前半も 長くないと(=プロウトyy になっていないと)、バランスがとれない、 という現象が起こると思います。 ということで、 カタカナ語から対応する英語を連想しながらカタカナ語を発音する場合には、 プロウトコールにするか、または、プロトコル、とするのが自然に聞こえます。 プロトコールという音は、ぼくには(英語の音訳としては)不自然に聞こえます。 逆に、プロトコールという日本語から、どういう英語を連想するかというと、 plot-call とか、ploto-call という存在しない言葉です。 もともと、colをコールと発音できるのは、かろうじて、前半の長い音節が 後半の長さを支えてくれているからであって、colだけでコールは 無理があります。コールとしたければ、callみたいに、最後の子音を 2つ(LではなくてLL)にして、それで、長い音を支えるのが自然となります。 もちろん、言葉なんて、もとの英語がどうだったのか、なんて 考えながら発音する人は少ないと思うし、慣れてしまえば、ちょうど ネックレスみたいに、気にならなくなります。 しかし、他の分野から見ると、プロトコルをプロトコールというのはどうも 不自然に見える(聞こえる)、ということだけは言えるのではないかと思います。 勝手なことを申し上げてすみません。外野から見た印象の問題だけです。 -- MIZUNO Yoshiyuki 水野義之


越智 [eml-nc6: 0114] 策定小委員会への意見書(発送しました)  救急医療メーリングリスト(eml-nc)の皆様、CoSTR翻訳グループの皆様、 市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。  皆様にご助言をいただいておりました「日本版救急蘇生ガイドライン策定 小委員会への意見書」ですが、本日 以下の内容で(htm形式)日本救急医 療財団の指定のアドレスに送信致しました。 http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/06/q1-iken.htm (中略)  本日送信前に読み返して、加筆訂正した部分は以下のところです。 〇  水野さんのコメントを読ませていただき、「プロトコル」の項に少しだけ 加筆しました。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 プロトコールとプロトコル 5.「protocol」は活動手順などの意味でしばしば使用される英語ですが、 ほぼ日本語化しており、このまま翻訳せずに使用することに問題はないと思 います。ただ、この語は情報通信、心理学などの分野では「プロトコル」と 長音を省いて記載されているのに対し、医学の分野においてのみ「プロトコ ール」と「プロトコル」が混在しています。日本語表記の方向性として長音 「ー」を省略する流れであり、心肺蘇生法指針や関連文書においては「プロ トコル」で統一するべきであると考えます(英語の発音をより正確に記載す るということにはこだわる必要はありませんが、原音により近いのが「プロ トコル」であることも付記させていただきます)。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 (後略)


水野 [eml-nc6: 0115] Re: 用語のプロトコル(策定小委員会への意見書(発送しました) 水野義之@京都女子大です。 Genro Ochi from UMIN wrote: > 水野さんのコメントを読ませていただき、「プロトコル」の項に少しだけ >加筆しました。 恐れ入ります。さらに確認をするために、以下に補足させていただきます。 プロトコルという言葉が、他にも使われる例を見て分かることは、 一般には、プロトコルとプロトコールの、両方が使われる。 言葉は用例と基礎として変化すると思えば、プロトコールでも もちろん、よいわけですね。 しかし、学術系では、プロトコルが多いことは確かのように 思われます。ということです。 *** 例として、例えば、京都プロトコルの例を調べてみます。 よく知られているように、地球温暖化京都会議(COP3)で 決められた議定書、京都議定書、これを英語では、 Kyoto Protocolと呼びます。手順を定めたものなので、 プロトコルです。 これを検索してみると、 「京都プロトコル」または「京都プロトコール」で、414件 出てきます(非常に少ないですが、京都プロトコルという 表現を使う人も、確実にいるわけですね。)そして、ここには、 プロトコルとプロトコールとが混在して出てきます。 (それでもプロトコルが約75%、プロトコールは25%程度 で、多くはプロトコルですが)。 しかしこれを学術系サイトに限定すると、 「京都プロトコール」というサイトは29件中で2件だけとなり、 あとは全部(29件中27件)が「京都プロトコル」になります。 この結果は、文部科学省の学術用語集での結果 (つまりプロトコルを使う分野はあるが、プロトコールを使う 分野が、あの分野の範囲では、見つからなかったこと)と 矛盾するものではありません。 *** 他に、プロトコル(またはプロトコール)という言葉が 使われるのは、国際儀礼という意味で、国際ビジネスや マナー講習などが多そうです。 http://www.protocol.jp/idea/ http://www.e-manner.info/approval.html http://www.piaget.com/j/id-collection-6213207.htm http://www.ladyweb.org/pickup/angelo/06.html (中略) *** あと、医学、バイオ系の分野。これは圧倒的に、プロトコール ですよね。 *** 哲学の分野でも、プロトコル命題、という言葉で、プロトコルが使われる ようです。しかし、ざっと見たところでは、圧倒的に多数が、プロトコルであり、 プロトコール命題、と書かれている文献は、ないわけではありませんが数は Wenb上では、少ないようです。 なお、百科事典でも、プロトコル命題、という方の言葉で、出てきています。 *** 心理学の分野でも、百科事典では、プロトコル分析、で出てきています。 認知科学の分野でもプロトコルがつかわれるようですが、やはり プロトコルデータ、といった風に、プロトコルが(百科事典では)使われます。 認知工学の分野でも、言語プロトコル分析、という用語が使われていて、 ここでもプロトコル、です。 ここで百科事典とは、平凡社の世界大百科事典を全文検索して 出てきた結果を参照しています。 *** 国際協定の分野でも、京都議定書以外に、例えばWIPO(世界知的 所有権機関)が取り決めた協定のひとつにマドリード協定というのが あって、これの補完的協定に、マドリードプロトコル、というのがあります。 これも、プロトコルです。 *** ジャパンナレッジ http://na.jkn21.com/ というサイトで、16種類ほどの辞書の全文検索を使って、 さらに全体への横断的な検索を行ってみて、プロトコルとプロトコールで、 どちらがどれくらい使われているか、調べてみました。 その結果は、 *「プロトコル」の検索結果(1085件) **「プロトコール」の検索結果(11件) ということで、このサイトの辞書の枠内では、約100倍程度の頻度で、 (プロトコールではなく)プロトコルが、出てくることがわかりました。 確認のために、例えば、**「プロトコール」の検索結果を見ると、 *プログレッシブ英和中辞典には、通信用語で、FTPが 《インターネット》File Transfer Protocolファイル転送のためのプロトコール. となっていました。しかし、これは例外(この分野では普通はプロトコルなので)。 また同じ辞書で、protocolの訳語で、 《哲》プロトコール, 命題(protocol proposition). となっていました。 しかし、同じこの辞書では、 《医》プロトコル, (研究・治療などの)実施要綱. と出ているので、ちょっと理解できないところがありました。 **** 最後に、文学作品でいうと、こんなところに、プロトコールが 使われているようです。 *ランダムハウス英和大辞典 において、ですが、 [文学・著作物]/Protocols of the Elders of Zion/ (/Protocols of/ (/the Wise Men/) /Zion/)『シオンの長老のプロトコール』ロシアの Serze Nilus が 出版(1905)した偽文書,ユダヤ人の世界征服計画について述べている. と出ていました。 *** 以上の用例探索の結果から、やはり、現状での「提案」の書き方で、 特におおきな問題になることはないだろうと、水野としては、思うものです。 ただし、注意すべきことは、プロトコールという用例は、医学分野以外にも あることを知っておくことと、しかし学術用語としては少ないのが現状である、 ということも理解しておくことが必要かなぁ(つまり、いくつかの特定分野に 着目すると、ないわけではない。でもやはり用例数は、圧倒的に少ない)、 というくらいだと思います。


越智 [eml-nc6: 0118] Re: 115 用語のプロトコル  水野さん、eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。 (中略)  医学の分野に限らず、プロトコールとプロトコルの両方が使われている が、医学の分野以外ではプロトコルが圧倒的に多いと理解しました。また 2つの語があることの煩雑さ(検索するとき)、表記の方向性(長音省略)、 原音に近いなどの理由で、医学の分野でも「プロトコル」に統一するのが よい(特に公式文書)と考えます。  知りませんでしたが、「京都議定書」が「キョートプロトコ(ー)ル」 なのも面白いですね。意見交換時のよい例になりそうです。  それでは引き続き宜しくお願いいたします。 ---- Genro Ochi gochi@m.ehime-u.ac.jp


水野 [eml-nc6: 0123] Re: 115 用語のプロトコル 越智さん、みなさん、水野義之@京都女子大です。 今回のプロトコルの一件では、 あのような提案を公にするのであれば、 やはり何を聞かれてもいいように、 ある程度の理論武装が必要な気がしたので、 かなり徹底的に、用語や用例を漁ってみました。 とても楽しかったです。自分としても新たな発見が 結構、ありまして、面白かったです。 なお、御存じの方も多いと思いますが、 Web検索で出てくる結果が多すぎる時、しばしば、 学術系だけに限定すると、よいサイトが出てくることを経験することが ありますが、これは次のようにします。 これをやるには、googleですと、サイト指定、という方法です。 普通の検索語に、 site:ac.jp を加えます。 例えば「京都プロトコル site:ac.jp」という具合です。 他にも、例えばフランスのドメインだけに限定したければ、 protocole site:fr なんて時にも使えるので、非常に便利です。(必ずしも フランス語のサイトだけにはなりま「せん」が。大部分は母国語でしょう)。 他にも知っていてお得だと思う用法は、ファイルタイプの限定の仕方で、 例えば、PDFファイルの範囲で、探したい、という場合には protocol filetype:pdf で行けます。いずれもgoogleの場合です。 Genro Ochi wrote: > 医学の分野に限らず、プロトコールとプロトコルの両方が使われている >が、医学の分野以外ではプロトコルが圧倒的に多いと理解しました。 これの最大の理由は、通信用語がプロトコルで攻めているからでしょうね。 だから辞書でも、Web上の用例でも、プロトコルが圧倒する結果に なっている、という事情があるだろうと思います。 しかし、それにしても、日本を代表する2つの大百科事典である 平凡社の世界大百科事典と、小学館の日本大百科全書の両方で、 プロトコルで統一されている、ことがわかるのですが、これも 大きいかもしれません。 逆に言うと医学・バイオ分野(殆ど「だけ」)でプロトコールが使われるのは、 百科事典には出てこないほどの、専門用語、として使われる、 という言い方も出来ます。 しかし、医者も、通信用語を使う場合だってあるわけで、そういう場合には 書き分けることに(現状では)なりますね。 例えば、  この治療プロトコールの実際に関するストリーミング放送を  次回は、rtspのプロトコルで送ってみませんか、 などという具合になるのかも。 まぁ、この混在具合が「日本語らしくて」面白いですが、 実際的に「煩雑」にはなりますね。 それが、かえって不便であるということになれば、 変わっていくのでしょうか…。 >また >2つの語があることの煩雑さ(検索するとき)、表記の方向性(長音省略)、 >原音に近いなどの理由で、医学の分野でも「プロトコル」に統一するのが >よい(特に公式文書)と考えます。 もしできるものであれば、です。私としては。 > 知りませんでしたが、「京都議定書」が「キョートプロトコ(ー)ル」 >なのも面白いですね。意見交換時のよい例になりそうです。 例に出してよかったです。 -- MIZUNO Yoshiyuki 水野義之


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