Currents in Emergency Cardiovascular Care
Volume 16 Number 4 Winter 2005-2006

すべての救助者に影響する主要な変更
(MAJOR CHANGES AFFECTING ALL RESCUERS)


[現在の翻訳レベル=粗訳 051228] [原文 ]


【すべての救助者に影響する主要な変更】

 2005年のガイドラインにおける5つの主要な変更は以下の通りである

 このSection(章)ではこれらの大きな変更点について述べる.変更点については一般市民(Lay rescuers)と医療関係者(HCP)のSection(章)でも議論する.


■有効な胸骨圧迫の強調

 2005(新しい点):  有効な胸骨圧迫は心肺蘇生中の血流を生み出す(Class I).ガイドラインでは心肺蘇生中の胸骨圧迫(心臓マッサージ*)について以下のように記載してい る.

 2000(古い点): 胸骨圧迫の質や早さの重要性,圧迫後に胸郭にかかる圧が完全に解除されることの重要性,胸骨圧迫の中断を最小限にすることの必要性,がこれまで強調されていなかった.

 なぜ?: 心停止の状態では血流はない.胸骨圧迫を行うことで脳や心臓など 生命をつかさどる臓器への血流を少量ではあるが生むこと ができる.胸骨圧迫が効果的であればあるほど(例、適切な速さ、深さで、胸郭にかかる圧が完全に解除される),より多くの血流が生み出される.浅過ぎた り、遅過る胸骨圧迫では生命をつかさどる臓器に十分な血流を供給する事 ができない.胸骨圧迫を中断する時 は血流も停止する.胸骨圧迫を再開する時はいつも、最初の数回の圧迫はその後 の圧迫ほど有効ではない.胸骨圧迫を中断すればするほど、傷病者が心停止から救命される可能性は低くなる.

 実際の蘇生事例での研究では、蘇生専門者が行う胸骨圧迫の半数は浅過ぎ、胸骨圧迫が頻回に中断され過ぎている。新しい推奨では、救助者は十 分早く十分深く胸骨圧迫を与える事を示唆している。またそれらは救助者に胸骨圧迫の中断を最小限 にする事も示唆している。

 胸壁が戻る間に血液が心臓を充満させるので、救助者は各圧迫後に胸が正常の場所まで戻るようにす るようにすべきである。もし救助者が各圧迫後に胸が戻り 再拡張させていないとすると、次の圧迫前に心臓が十分な血液を取り込む事ができないので、次の圧 迫の間の血流は低下してしまうだろう。成人、小児、乳児 の胸骨圧迫についてのさらなる情報は、以下のBLSの章にある。


■ 全ての一人の蘇生者に不変な1つの胸骨圧迫・換気比

 2005(新しい点): AHAは、一人の救助者の場合、(新生児を除く)乳児から成人までのすべての傷病者に対し て、30:2の圧迫・換気比を推奨している。こ の推奨は、一般市民でも、医療関係者でも、救助者が一人で行う全ての心肺蘇生に適応される。

 二人の救助者での心肺蘇生の情報は、第3章HCP BLSとALSにあるが、この方法は一般市民向きではな い。

 2000(古い点): 成人の心肺蘇生では15:2の圧迫-換気比が推奨されていた。乳児の小児の心肺蘇 生では5:1の圧迫-換気比が推奨されていた。

 なぜ?: 科学の専門家は心肺蘇生の情報を単純化する事を望んでおり、そうすることでより多く の救助者がより良い心肺蘇生を学び覚え実践する事ができ る。彼らはさらにすべての救助者が中断の無い長く続く胸骨圧迫を行うことを、確実するように望ん でいる。研究では理想の圧迫・換気比はまだ示していない が、圧迫・換気比が高ければ高いほど、一連の心肺蘇生の間により多くの胸骨圧迫を行う事ができる。 この変化は心臓や脳、さらに他の生命に関わる臓器への 血流を増やすに違いない。

心室細動による突然の心停止の最初の数分の間は、換気(ieレスキューブレスお助け呼吸)は圧迫ほ どは重要ではないであろう。しかし換気は、低酸素によ る停止やすべての原因による最初の数分以降には重要である。心停止となった、大抵の乳児や小児、 大抵の溺水、薬物中毒、外傷による傷病者は、低酸素によ るものである。これらの傷病者はもし胸骨圧迫と換気を両方受けたなら、助かる可能性が大きい。そ れゆえ、胸骨圧迫のみの心肺蘇生は一般市民には好まれる 心肺蘇生の方法であるが、推奨されない。専門家は心停止の全ての傷病者に対して、圧迫と換気のコ ンビネーションが一番良い結果を生むようだと結論づけた。

さらなる情報は、「一般市民の心肺蘇生」と「HCPのためのBLS」を参照。


■すべての心肺蘇生に1秒かけての吹き込みを推奨

 2005(新しい点): それぞれの救助呼吸は1秒かけて行う(Class IIa)。この推奨は全ての救助者に適応される。各お助け呼吸は必ず胸が挙がるようにすべきである。全ての救助者 は推奨された数のお助け呼吸与えるべきである。全ての救助者は頻回すぎる吹き込みや、多すぎたり勢い良すぎる吹き込み を避けるべきである。

 2000(古い点): 救助呼吸には、酸素の有り無しにより多くの異なる換気量 が推奨されていた。呼吸は1秒か1秒から2秒をかけ て吹き込むとされていた。

 なぜ?: 心肺蘇生中は、肺への血流は正常より低下しており、傷病者は正常よりも少ない換気で良 い。レスキューブレスお助け呼吸は1秒で安全に与える事 ができる。事実、心肺蘇生の周期中に、胸骨圧迫の中断を減らすためにレスキューブレスお助け呼吸 のために費やす時間を短くする事が重要である。心肺蘇生 中のレスキューブレスは胸腔内圧を上昇させる。この圧は心臓へ戻る血流量を減らし、それが次の胸 骨圧迫により生まれる血流も減らしてしまう。これらの理 由により、過換気(多すぎる数の呼吸または多すぎる量)は不必要であり、胸骨圧迫により生み出さ れる血流は事実低下するので有害であるかもしれない。さ らに、多量で勢いよい呼吸は胃への吹き込みを産み、その合併症を生じるかもしれない。


■除細動:単回通電とその後直ちにCPRを

 2005(新しい点): 除細動を与える時に、全ての救助者は1回通電し、その後直ちに胸 骨圧迫から始まる心肺蘇生を行う。全ての救助者は傷 病者のリズム確認を、5サイクル(約2分)の心肺蘇生を行った後に、行うべきである。製造業者に よりAEDがプログラムされ直したならば、救助者に2分 毎にリズム確認を行わさせるべきである。

 2000(古い点): 「除細動適応」リズムの心停止の治療に、救助者は3回通電し、通電の合間に心肺蘇生は行っていなかった。救助者 はショックを与える前と後に、リズムの確認を行っていた。

 なぜ?: この新しいプロトコルの理論は3つの所見に基づいている。

 我々はAED製造業者がこの推奨を支持してAEDを再プログラムすることを期待する。AHAはAED製造業者 に胸骨圧迫の中断なしで傷病者の心臓リズム を解析できる機材を開発するように熱望している。


■2003ILCOR報告書の再確認:1歳から8歳の小児に対してAEDを使用

 2005(新しい点): AEDは1歳以上の小児に使用する事が推奨された。1歳未満の乳児に対するAED 使用の推奨や反対の証拠は不十分である(クラ ス未確定)。

 小児における目撃された突然の虚脱(心停止)には、AEDが使用できれば直ちにそれを使用する。病院 外での目撃者のない心停止には5サイクルの心肺蘇生 (約2分)を行った後にAEDを使用すべきである。理想的には、AEDは(論文として公表された研究と して)小児の除細動可能なリズムを正確に確実に把 握しているかどうか検証すべきで、小児のエネルギー量を与えることが可能にすべきである。多くの AEDは現在、小さな小児用パッドを使用したり、鍵や他 の手段にて、小さな量の与える事ができるように整備されている。もしあなたが(1歳以上の)小児 に心肺蘇生を行っており、使用できるAEDに小児用パッ ドが無かったり小さな量を与える方法が無かった場合は、成人用の通常のAEDを使用する。小児用の パッドや小児の(エネルギー)量を成人の心停止の傷病 者に使用すべきではない。

 2000(古い点): 2003年からAEDは1歳から8歳の小児の心停止に推奨されている。

 なぜ?: いくかのAEDは小児の除細動可能なリズムの認識に非常に正確であり、またいくつかは小児に に合うエネルギー量を与える事ができるように整備さ れている。しかし小さなエネルギー量では成人を除細動できず、救助者は成人の心停止には小児用の パッドや小児のエネルギ−量で除細動するべきではない。



■除細動に関する変更点

[原文]

 2005年のガイドラインにおける推奨の変更点は、胸部圧迫における中断時間を最小にするようにデ ザインされている。 加えて、VFまたは急速な心室頻拍(VT)を排除するためのバイフェージック 波形による一回ショック成功率の高さを承認する。 除細動に関する主要な変更点は下記の通りであ る。


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