救急医療メーリングリスト(eml-nc)より

心臓震盪について

(Commotio Cordis)


本資料の、著作権、守秘義務などに関する責任はすべて発信責任者が負います。

From: 山崎元靖
Subject: [eml-nc5: 0292] 心臓震盪について
Date: Fri, 18 Feb 2005 22:00:01 +0900

EMLの皆様、慶應義塾大学病院救急部の山崎です。

今日の読売新聞朝刊1面に記載されましたが、心臓震盪での死亡に対し、ボールを投げた子供の親に6000万円の支払いを命じた判決が報道されました。

小学4年生が投げたボールが小学5年生の胸に当たっただけで、心臓震盪(Commotio cordis)という状態(おそらく心室細動)を引き起こし、それが死に至ったわけです。胸壁の柔らかい子供に多いとされています。

皆さんにお伝えしたいのは
1,心臓震盪を知ってもらいたい(医療従事者でも知らない人が多い)
2,予防方法を知ってもらいたい
3,治療方法を知ってもらいたい
の、3点です。

第2点は、胸でボールを受けないことやプロテクターのような物を着用することなどです。

そして、第3点は、もちろんAEDの使用です。Jリーグの試合ではAEDの配備は全試合で行われるようになりましたが、子供の運動の場面でもAEDの使用は考えるべきなのではないかと思います。

以下は、慶應義塾の全一貫教育校(小・中・高校)で行っている慶應義塾BLSプログラムの活動の一部ですが、ご紹介致します。

慶應義塾では、全ての関連小・中・高校の全生徒を対象にBLSを平成14年度から、行っています。
http://www.ikkan.keio.ac.jp/BLS/BLS_home.htm

その中で、年1回市民公開講座を開催し、昨年は「CPR in School スポーツ編」を開催しました。
http://www.ikkan.keio.ac.jp/BLS/BLS_CPRkouza0417.htm

その中で岩田賢雄さんに「ボールが胸に当たっただけで・・」という題で講演して頂いたのですが、このお話は、岩田さんご自身のお子さんが、心臓震盪でなくなられたことについて、そして「心臓震盪から子供を救う会」を設立するところまでをお話し頂きました。医療従事者の中にも心臓震盪を知らない人は多く、当初は原因不明の死亡と病院で言われたそうです。そのあと、その死因が心臓震盪であると、ご自身で色々調べた結果、確信されたそうです。
http://www.chuobyoin.or.jp/shinzou-shintou/info-1.html
http://www.chuobyoin.or.jp/shinzou-shintou/040417.html

今回の関しては、無くなった子供や両親だけでなく、原因となったボールを投げたり蹴ったりした子供とその家族にまで不幸にするような重大な一件だと思います。

慶應の一貫校にもAEDの配備が始まっています。
http://www.ikkan.keio.ac.jp/BLS/press/press_release.htm
成人よりも心臓震盪を起こしやすいとされる子供の運動を行う学校にも、心臓震盪の予防、治療を真剣に考える必要があるのではないかと思います。

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山崎 元靖    Motoyasu Yamazaki
慶應義塾大学医学部救急医学・慶應義塾大学病院救急部
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救急医療メーリングリスト(eml)より

心臓震盪と小児の除細動に関する論議


目次
 山崎[eml-nc5: 0292] 心臓震盪について
 A [eml-nc5: 0299] Re: 心臓震盪について
 B [eml-nc5: 0304] Re: [0292] 心臓震盪について:CPR in School
 加藤[eml-nc5: 0330] Re: 心臓震盪について
 徳田[eml-nc5: 0331] Re: 心臓震盪について
 C [eml-nc5: 0333] 小児に対するAED
 徳田[eml-nc5: 0334] Re: 小児に対するAED
 A [eml-nc5: 0335] Re: 小児に対する AED
 D [eml-nc5: 0336] Re:小児に対するAED
 徳田[eml-nc5: 0337] Re: 小児に対するAED 
 E [eml-nc5: 0343] Re: 小児に対するAED
 F [eml-nc5: 0346] Re: 小児に対するAED
 徳田[eml-nc5: 0347] Re: 小児に対するAED 
 B [eml-nc5: 0351] Re: 小児に対するAED
 高橋[eml-nc5: 0366] Re: 小児に対するAED
 E [eml-nc5: 0368] Re: 小児に対するAED
 加藤[eml-nc5: 0382] Re: 小児に対するAED 
 H [eml-nc5: 0385] Re: 小児に対するAED
 I [eml-nc5: 0389] Re: 小児に対するAED
 J [eml-nc5: 0394] Re: 小児に対する AED
 B [eml-nc5: 0402] Re: [0394] 小児に対する AED
 E [eml-nc5: 0404] Re: 小児に対するAED 
 B [eml-nc5: 0406] Re: [0404] 小児に対するAED
 H [eml-nc5: 0407] Re: 小児に対する AED
 徳田[eml-nc5: 0409] Re: 小児に対するAED
 B [eml-nc5: 0410] Re: [0407] 小児に対する AED
 H [eml-nc5: 0411] Re: 小児に対する AED 



From: B(一般市民) Date: Sat, 19 Feb 2005 07:00:39 EST Subject: [eml-nc5: 0304] Re: [0292] 心臓震盪について:CPR in School 山崎さん webの写真ではP1020774.jpg P1020745.jpgがお気にいり 普段ガキタレちゃんのお相手をすることはないBです。 昨年の市民講座は逃しました。 CPR in Schoolについては2003年の市民講座を聴講し、特に小・中・高生のアン ケート結果の対比を興味深くも笑いながら拝聴しました。今でも時折思い出し てはにやついております。 正確な再現はできませんが、たしか、おもしろかったか、わかったか、時間は どうか、遭遇したらできると思うか・・・といった項目のそれぞれに小学生 (幼稚舎でしたっけ?)ほどポジティブな回答で、年齢層が上がるほどに逆転 していくことが、3世代を重ねた円グラフで実にクリアに示されていました。 それにより、始めは早いほどいい、また小学5年ぐらいで習得可能ということ を驚嘆とともに理解しました。 どのように学校で開催できるかということの妙案は浮かびませんが、2年前 (2002年のデータでしょうか)のアンケート内容は、いい説得材料になるよう に思います。 ここからは私の体験です。あるアメリカ人ファミリーの館内ツアーの最中、ご 婦人から「除細動器はあるの?」と聞かれたので、搭載のAEDをお見せしまし た。ふとした遊び心から、ご子息の中で5才〜小2ぐらいに見えたMichael君 に「ゲームしてみる?」「人を助けるゲームよ」とAEDを見せました。坐らせ ていたアンちゃんを示すといきなり胸を押し始め「He's dead. He's dead.」 と笑いながら続けます。アンちゃんは坐ったままで、「左上胸」と「右下胸」 を同時圧迫しているものの「dead」を連発し楽しんでいます。 促して蓋を開けさせ「ほら、音を聞いて。何て言ってる?」「これ見て」 私はそれ以上のことは言わず彼がどうするか見ていました。ファミリーもにこ にこ見守っていました。 結果: 「救う」と「ゲーム」という言葉だけで、楽しみながら動くことのできるポテ ンシャルに感服。貼る部位についても「絵を見て」というだけで正確に貼りま した。 これは講義を受けた成人を上回るものと感服。 終わったところですかさず、先のご婦人が言いました。 「あなたもこうやって人を助けることができるのよ。それはすばらしいことよ ね。」 (正確な再現ではありません) 時をおかずに短い言葉で動機づけ。すごい アメリカの母! 彼のパフォーマンスはどうやらテレビなどで見たと思われる電気ショックとCPR がごちゃまぜのようでしたが、てらいなく入りこめる素直さ・好奇心により、 子どもでも/子どもこそスムーズに入るという思いをあらたにしました。 後ほど伺ったところ小2?と思ったMichael君はgrade 5 でした。ちゃんちゃん ところで、この時もアンちゃんは男性と思われました。実際、現行のRAMSモデ ルはよく男性に間違われます。どちらにでもなるものの、女の子だと言うと結 構「えーっ」と返されます。 あのおっぱいは筋肉と思われるようです。 E@nippleに色をつけようかと思案中



From: 加藤(医師) Subject: [eml-nc5: 0330] Re: 心臓震盪について Date: Mon, 21 Feb 2005 14:10:51 +0900 山崎さん、皆さんこんにちは。加藤@浦郷診療所 in 隠岐の島です。 山崎さんwrote: > 小学4年生が投げたボールが小学5年生の胸に当たっただけで、心臓震盪 >(Commotio cordis)という状態(おそらく心室細動)を引き起こし、それが死に >至ったわけです。胸壁の柔らかい子供に多いとされています。 Commotio Cordisについては以前もこのMLでも話題にのぼりましたが、今後 PADの考えが広まることにより、救命出来る命が増えることを願って止みません。 さて、以前より疑問に思っていたのですが、一般市民が小児対してAEDを使用 する際にJ(ジュール)数の設定はどうされるのでしょうか? 又は保育所・小学校に配備されるAEDは初めから小児設定がされている? どなたか御教示下さい。



Date: Mon, 21 Feb 2005 14:19:36 +0900 Subject: [eml-nc5: 0331] Re: 心臓震盪について From: 徳田 秀光(医師) 徳田です 8歳以上は大人と一緒です 8歳未満はAHAはAED(小児用PAD)使用推奨です 日本は小児用PAD未発売かな? 加藤先生より: > さて、以前より疑問に思っていたのですが、一般市民が小児対してAEDを使用 > する際にJ(ジュール)数の設定はどうされるのでしょうか? > 又は保育所・小学校に配備されるAEDは初めから小児設定がされている? > どなたか御教示下さい。



Date: Mon, 21 Feb 2005 14:43:34 +0900 Subject: [eml-nc5: 0334] Re: 小児に対する AED From: 徳田 秀光 徳田です G2000は改訂されていましたっけ? HS AEDは改訂(2003/12/31)されましたけど



Date: Mon, 21 Feb 2005 15:41:12 +0900 From: D(医師) Subject: [eml-nc5: 0336] Re: 小児に対する AED 皆様、こんにちは。 Dです。 G2000の改訂はG2005ないしはG2006と認識しています。 その為の会議がダラスで行われていたことは皆様もご存知のことと思います。 ですので、G2000が正式に改訂されているとは認識していません。 徳田(先生)さんもご存知の通り、AHAのHandbook of Emergency Cardiovascular Careは昨年改訂されております。(Updated 2004) その中のBLSアルゴリズム(P83(旧版ではP84))に1〜8歳まで1分間のCPR後に AEDの使用はAvailableと記述されております。 (ということを徳田(先生)さんから教えていただいたと記憶しておりますが。) また、Updated 2004のP85に1歳〜8歳のAED treatment algorithmが載っており、 旧版にはP86に8歳以上として記載されております。 C(先生)さんはこちらのことを仰っているのではないでしょうか?



Date: Mon, 21 Feb 2005 15:45:34 +0900 Subject: [eml-nc5: 0337] Re: 小児に対する AED From: 徳田 秀光 徳田です そうでした handbookを示して教えていたんでした



Date: Mon, 21 Feb 2005 18:00:54 +0900 From: E(医師) Subject: [eml-nc5: 0343] Re: 小児に対する AED Eです。 小児に対するAED使用については、 Use of Automated External Defibrillators for Children: An Update An Advisory Statement From the Pediatric Advanced Life Support Task Force, International Liaison Committee on Resuscitation Circulation. 2003;107:3250 で、ILCOR Advisory Statementとして発表されています。 直リンクにすると検索パスが入ってURLがあまりにも長くなるので控えますが、 Circulation誌のサイト  http://circ.ahajournals.org/ で、左上のサーチ欄に  children AED update と入れて検索してヒットする文献の1番目に出てきます。ブラウザでfull textが 読めます。PDFも公開されています。 我が国での状況は、Cさんがお書きになったように私も認識しています。



From: F(救急隊員) Subject: [eml-nc5: 0346] Re: 小児に対する AED Date: Mon, 21 Feb 2005 20:15:31 +0900 Aさん、徳田さん、Eさん、みなさん はじめまして [eml-nc5: 0343] Re: 小児に対する AEDでEさんが紹介されたとおりですね。 勉強になりました。 英語が苦手の私としては、  http://medwave2.nikkeibp.co.jp/wcs/leaf?CID=onair/medwave/mdps/255360 を紹介させていただきます。 ◆ 2003.7.3 ILCOR勧告が改訂、1〜8歳の小児へのAED使用を容認 という記事です。 また、小児用の除細動パッドは日本で認可がまだ下りていませんが… 成人用のパッドで除細動が可能とのことです。 しかし薬事法違反のため、AHA BLS HCPコースでも使用しないに統一されてい ます。 最近出された応急手当講習会のAED追補テキストにも8歳未満で25Kg以下の小児に は使用しない旨が記載されています。



Date: Mon, 21 Feb 2005 20:47:57 +0900 Subject: [eml-nc5: 0347] Re: 小児に対する AED From: 徳田 秀光 徳田です 問題は元々心疾患のある患児で親がAEDを必要と感じたとき 医療側が手元に小児用PADがないので使えないと判断したときだと思います その場合,日本では,司法の判断が入ってくるとどうなるか 予断は許さないと思われます



From: Subject: [eml-nc5: 0351] Re: 小児に対する AED Date: Tue, 22 Feb 2005 05:41:50 +0900 こんばんは  Bです。 小児用AEDは承認されていませんし、講習会においては成人対象ですが、手持ちのAHA関連資料 から次のように考えておりました。乱暴な解釈だったかもしれません。ご助言お願いいたします。 原則、小児/乳児にAEDは使用できないが、小児の心肺停止場面で決断を迫られた時に成人用 AEDを使ってもやむなし。 AEDの記載に関しては2003年12月出版の「Heatsaver AED」が最新刊です。 従来の約8mmの厚さのテキストよりもかなり薄い77ページの本ですが、小児・乳児の救命を 含んでいます。 このテキストの訳で日本の実情に合わせて編纂されたのが、2004年4月15日発行の「実践AED マニュアル」で、子どもに関する記載を大胆にカットし成人の救命中心にまとめられています。 この日本語版はJRCとAHAのロゴつき、JRCと循環器学会を代表されるおふたりの医師の監訳で あり、英語版には書かれていない内容が<補足>として色を変え、書かれています。 先に三田村先生が執筆された一般向けの本でも心臓震盪への警鐘が書かれていました。その影響 あってか、小児用AEDが承認されていない日本の現状にてらした道を示してくださったものと 理解しておりました。 なお当社の使用基準は従来どおりです。 以下、日本語版から抜粋します。 ******************************************* 岡田和夫/三田村秀雄監訳、実践AEDマニュアル、JRC, AHA、中山書店、2004.4.15 はじめに 本マニュアルは、市民が自動体外式除細動器(AED)を使用するにあたっての講習用テキストと して、アメリカ心臓協会が編纂した"Heartsaver AED" (2003年)の日本語版です。 (略) p.20 重要 特殊な状況 特殊な状況に応じてAEDの使用法を変更しなければなりません。下記の内容に目を通せば、 どうしたらよいかがわかります。 1〜8歳までの小児の場合:1〜8才までの小児に対しても、心肺蘇生法を1分間に約20サイ クル行っても意識がなく、正常な呼吸がなく、循環のサインもない場合には、AEDを使用して かまいません。AEDのなかには・・・・・・ (略) 指針:心肺蘇生法を1分間行ったあと、AEDを使用してください。8歳までの小児に大しては、 もしあれば小児用電極パッドを使ってください。8歳以上の傷病者に対しては、小児用より大き い成人用電極パッドを使用します。成人用電極パッドを小児に使おうとして、2つの電極パッド が互いに接触したり、重なったりする場合には、小児用電極パッドを使用します。 <補足>  小児用電極パッドがなければ、たとえ傷病者が小児であっても成人用電極パッドを使用してかま いませんが、2つの電極パッドが互いに接触したり、重なったりしないように注意してください。 どうしても重なる場合には、胸部と背中に貼付けることも可能です。 ↑ これは日本語版独自の記載です。 ***以下、英語版*******(該当する部分のみ) p.22 IMPORTANT Special Situations Special situations will change the way you use an AED. Take a moment to review this box so that you will know what to do. Children 1 to 8 years of age: AEDs can be used for children 1 to 8 years of age..... (略) Because child pads will probably not deliver enough energy to treat an adult, be sure that you do NOT use child pads for an adult victim. Action: Use the AED after 1 minute of CPR. For children up to 8 years of age, use the child pads, if available. For victims 8 years of age and older, use the larger adult pads. If you use the adult pads on a child and they touch or overlap, use the child pads instead. 以上です。 徳田さんより > 問題は元々心疾患のある患児で親がAEDを必要と感じたとき > 医療側が手元に小児用PADがないので使えないと判断したときだと思います > その場合,日本では,司法の判断が入ってくるとどうなるか > 予断は許さないと思われます



Date: Tue, 22 Feb 2005 21:07:52 +0000 Subject: [eml-nc5: 0366] Re: 小児に対する AED From: 高橋牧郎(医師) Aさん、Bさん、みなさん、こんばんわ。高橋@鶴岡協立です。  8歳未満の小児用のパッドのことから始まったやり取りは、どうしてもなら成人用 のパッドでも可能とのことになるのでしょうか?として、小生が疑問なのは、エネル ギーはどうなのでしょうか?成人用AEDでは高エネルギーすぎるように思うのです が、緊急時なら許容されるのでしょうか?ILCORが1歳以上でのエビデンスを言 うのは、適切なエネルギーでならということと考えますが、米国のように小児用のA EDがない日本では、心電図の解析プログラムの方は成人用AEDでもほぼ対応でき るとのことでしたので(?)、万が一VFであった場合、公には推奨できないが通電 もありなのでしょうか?一般的には不可で、CPRをしながら手動の除細動器のある ところまで運ぶということとは思いますが・・・。患児をもたれた方には切実かもし れません。



Date: Tue, 22 Feb 2005 22:56:22 +0900 From: Subject: [eml-nc5: 0368] Re: 小児に対する AED Eです。 徳田さんが提起された疑問は、我が国で薬事承認を得られていない使い方をした場 合の使用者の刑事・民事両面の責任の有無と所在についてですね。 医学的な判断としては、ILCOR Advisory StatementあるいはBさんにご紹介いた だいた「実践AEDマニュアル」の記載通りで良いと思います。ちなみに、除細動エ ネルギーは小児に適したエネルギーを選択できることが望ましいですが、成人のエ ネルギー(monophasic 200Jもしくは相当するbiphasicのエネルギー)での除細動 を完全に排除するものではありません。報告数が限られているので、実のところは 効果も弊害も、よくわかっていないのだと思います。 ありきたりの書き方になってしまいますが、結局のところは、ケースバイケース (AED使用・不使用が結果に与えた影響や、AED使用にかかる過失の有無など)で、 刑事では検察が公訴提起をするかどうか、民事では傷病者もしくはその家族が損害 賠償請求をするかどうか、裁判となった場合は裁判官が、個々の事例で証拠を元に 総合的に判断することになると思います。おそらく焦点は、早期除細動を優先させ るのか、過大な除細動エネルギー通電による心筋傷害の危険性を見過ごせない問題 とするのか、ということになるのでしょう。そこでは、ILCOR Advisory Statement や「実践AEDマニュアル」は使用を肯定する側の証拠の一つにすぎません。 ただ、薬剤や医療機器などを、薬事承認はとれていないが医学的に妥当と考えられ る方法で臨床使用する事例は少なくないので、問題はAEDに限定されないと思いま す。薬剤の添付文書などをご覧になれば一目瞭然ですが、特に小児領域では一事が 万事そんな調子(小児では安全性が確立されていない、もしくは使用禁忌など)な ので、いわば常に判断を迫られている日常的な問題です。あとは、使用する個人や 組織のポリシー次第ではないでしょうか。



From: 加藤 Date: Wed, 23 Feb 2005 18:09:51 +0900 Subject: [eml-nc5: 0382] Re: 小児に対する AED 高橋さん、皆さんこんにちは。加藤@浦郷診療所in隠岐の島です。 高橋さんwrote: > 小生が疑問なのは、エネルギーはどうなのでしょうか?成人用AEDでは高エネルギー > すぎるように思うのですが、緊急時なら許容されるのでしょうか? 私も同感です。実際の小児用AEDのJ数をご存知の方教えて下さい。 > 米国のように小児用のAEDがない日本では、 なぜ日本では発売されていないのでしょうか? 需要が少ないから? 米国ではどれ程発売されているのでしょうか? > 患児をもたれた方には切実かもしれません。 不謹慎ですが、もし我が子に心疾患があれば私は常に小児用AEDを購入すると思いま す。



From: H(救急隊員) Subject: [eml-nc5: 0385] Re: 小児に対する AED Date: Wed, 23 Feb 2005 21:52:07 +0900 皆さん、こんにちは。 Hです。 Bさんより(引用部分省略) Bさん、解釈が大胆と思います。 これではみんな成人用AEDを使わないといけなくなります。 小児のパッドからの話題ですが、救急業務を行う救急隊員は基本的に除細動は「8歳 以上、体重25kg以上」に対して実施しますので小児には実施しないと思います。 近い将来は別として、現行では「救急隊員の行う心肺蘇生法等について」(平成16 年8月26日消防救第212号)にしたがっています。 ご承知のように、救急救命士が行う除細動は、当初プロトコールで体重が概ね35キ ログラム以下には使用しないこととされていました。 最近では包括的指示下での除細動で「8歳以上、体重25kg以上」ということに変 わってきております。 最終的には地域MCで決定されますが、「8歳以上、体重25kg以上」ということが 多いのではないでしょうか。 ILCOR Advisory Statement(Use of Automated External Defibrillators for Children: An Update)や Heatsaver AEDのspecial situations in child aed useの記載はEさんが言われるよ うに使用を肯定する側の証拠の一つにすぎません。 今後は日本でもこのように追随することが予想されますが、現行ではまだ見切り発車 は出来ない気がいたします。 話を戻しますと、AEDの使用の前提はAEDを用いた除細動は医行為に該当するとなって おります。 「救急隊員の行う応急処置等の基準」が一部改正され消防庁告示第21号(平成16 年8月26日)により除細動が加えられました。 救急隊員がこの基準にのっとり救急業務を行えば正当業務行為として医師法第17条 違反にならないことをあらかじめ法文上明確にしたものである。と解釈されています。 (消防実務質疑応答集ぎょうせい) また、非医療従事者は下記の条件をみたせば、AEDの使用は医師法違反とならないもの とするとの方針を明らかにしたところです。 1) 医師等を探す努力をしても見つからない等、医師等による速やかな対応を得ること   が困難であること 2) 使用者が、対象者の意識、呼吸がないことを確認していること 3) 使用者が、自動体外式除細動器の使用に必要な講習を受けていること 4) 使用される自動体外式除細動器が医療用具として薬事法上の承認を得ていること 法を遵守するにはこれらのルールに従うことが大切と思います。 AED講習も「8歳以上、体重25kg以上」としていますし、小児用のパッドも薬事承 認を得ていないとすると、日本では成人用パッドを用いて小児にAEDを実施するのは難 しい気がいたします。 また、市中にAEDが少ないのでPhone First(Adult)/ Phone Fast(Infants and Children)が実効性があるかも知れません。



From: Date: Sun, 27 Feb 2005 00:23:33 EST Subject: [eml-nc5: 0402] Re: [0394] 小児に対 する AED Eさん Hさん Jさん ほかみなさま 大胆解釈のBです。 もう少し自問自答におつきあいください。 おっしゃるとおり肯定する側の証拠のひとつであると思います。 小児用パッドが承認されていない日本の現状はアメリカとは違います。 エネルギー量やAED開発のコンセプトはJさんからお答えいただきました。 限られた資料からの私の理解では小児に対応可能なAEDは既に二相性であり、成人用の エネルギー量も少なく設定されている。もっとも先にJさんがお書きになったように 出荷時のエネルギー設定値は各社さまざまであり、二相性AEDであっても初回ショック は200Jのこともある。 小児に使える機種の場合、パッドが小さいだけでなく、ケーブルの中間にあるエネル ギー減衰器を介することで少ないエネルギーが与えられる。 エネルギー量は50Jなどの固定値というよりは初期設定値により違いがあるように想像 しますが、この点はいかがでしょうか? 肯定側の出版物に戻ります。AHAのHeartsaver AEDの小児のショックの項は二相性AED を前提に書かれていると思います。その場合、初期設定が高い機種もあれば低い機種 もあり、万が一の場合で小児用パッドが接続されていない場合に子どもに使用した場 合のエネルギーは200Jよりは低い方が多いと考えます。一方で一相性AEDが市場から消 えてしまったはずはないので、どちらのタイプにも究極の選択として道を示した記述 と考えました。 日本においては小児用は承認されていませんし、当社使用のCardiac Science社AEDは 一相性・初回エネルギー200Jです。この状況下あえて当該箇所を翻訳され補足を加わ れたことは、究極の選択を迫られた時にユーザーに証拠のひとつとしてよいように思 いました。例えば、呼吸停止というよりは心停止が先と思われるようなケース(例え ば心臓震盪)です。 ただし、考えられる法的問題を考えずに躊躇なく使用できる方はないでしょうし、一 般対象の講習会であえて踏み込んで答えることではないかもしれません。またメーカ ー取扱説明書にない使用については責任を負わないでしょう。 一方、AHA のBLSは各地で開催され、Heartsaver AEDコースも開催されています。私は 受講したことがないので具体的にはわかりませんが、日本のHeartsaverコースではこ の「実践AEDマニュアル」がテキストになるものと思います。その場合は、講義では触 れなくともテキストに書いてあることから一般市民(空港職員への講習も含む)へこ のアイディアは広まっていくものとも思います。 小学校へのAED配備も進む中、明らかに8歳/25kgを超えない子どもの心停止例におい ては「使用しない」が鉄則ですが、学校という環境は空港やホール等の公共施設への 配備以上に現実味のある問題と思います。これについてもJさんがお書きになったよ うに各メーカや統括医師への問い合わせ/方針確認なのでしょうね。 最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。 Hさん 救命士が法規を破れないことはよくわかります。看護師もです。



Date: Sun, 27 Feb 2005 16:07:52 +0900 From: Subject: [eml-nc5: 0404] Re: 小児に対する AED ・・病院のEです。 > 日本においては小児用は承認されていませんし、当社使用のCardiac Science社AED > は一相性・初回エネルギー200Jです。この状況下あえて当該箇所を翻訳され補足を > 加われたことは、究極の選択を迫られた時にユーザーに証拠のひとつとしてよいよ > うに思いました。例えば、呼吸停止というよりは心停止が先と思われるようなケー > ス(例えば心臓震盪)です。 ([eml-nc5: 0402] Bさん) 医学的な情報として見る限りは、おっしゃる通りで良いと思います。 ただし、BLS+AEDの啓蒙(教育)という観点からは疑問です。 小児のBLSに関する部分が省略されている点からみても、実践AEDマニュアルは専ら 成人用と考えた方が良いと思います。同マニュアルは小児BLSを教育する目的に使え ないばかりか、小児傷病者へのAED使用に関する記載は混乱を与えるだけであり、 勇み足と考えています。特に小児に関しては、BLS抜きにAEDの使用を説明すべきで はなく、少々不用意であると思います。



From: Date: Sun, 27 Feb 2005 02:23:31 EST Subject: [eml-nc5: 0406] Re: [0404] 小児に対する AED Eさん ご教示ありがとうございます。 Bです。 おっしゃるとおり、「実践的AEDマニュアル」は意図をもって子どもの記載が割愛 されているようです。 日本においては成人のBLS, AEDがまず先決ということからかと想像しております。 特に「BLS抜きにAEDの使用を説明すべきではない」ことは忘れずにまいります。



From: Subject: [eml-nc5: 0407] Re: 小児に対する AED Date: Sun, 27 Feb 2005 17:41:12 +0900 Bさん、皆さん、こんにちは。 H@・・消防です。 Bさんが受講された香港のBLSとACLSの更新コースでは緊急の場合は小児のパッド が無い場合は成人のAEDパッドを貼って小児にAEDを実施しても良いということだ ったのでしょうか。お話を伺っておりますと、AHAでは上記のことも容認している と解釈できるのですがいかがでしたでしょうか。 Bさん > 肯定側の出版物に戻ります。AHAのHeartsaver AEDの小児のショックの項は二相性AED  を前提に書かれていると思います。その場合、初期設定が高い機種もあれば低い機種  もあり、万が一の場合で小児用パッドが接続されていない場合に子どもに使用した場  合のエネルギーは200Jよりは低い方が多いと考えます。一方で一相性AEDが市場から  消えてしまったはずはないので、どちらのタイプにも究極の選択として道を示した記  述と考えました。 > > 日本においては小児用は承認されていませんし、当社使用のCardiac Science社AEDは  一相性・初回エネルギー200Jです。この状況下あえて当該箇所を翻訳され補足を加わ  れたことは、究極の選択を迫られた時にユーザーに証拠のひとつとしてよいように思  いました。例えば、呼吸停止というよりは心停止が先と思われるようなケース(例え  ば心臓震盪)です。 私たち救急救命士の除細動について地域MCで定められたことにしたがって実施して おります。小児に対しても成人用パットをはり、現行の半自動除細動を使用して実 施しても良いという地域MCの決定があれば、我々は実施します。非医療従事者が使 用するAEDに関しても同様のことと思っております。



From: 徳田 Date: Sun, 27 Feb 2005 18:09:40 +0900 Subject: [eml-nc5: 0409] Re: 小児に対する AED 徳田です 僕自身はHAWAIIで教える際に,万が一成人用パッドしかない場合は パッド同士がショートしないように使うと教えています 万が一成人用を使わずに訴えられるとやっかいですから このためHS CPR 講習中も小児のAEDはHS AED(DVD)のところ見せています Hさんより > Bさんが受講された香港のBLSとACLSの更新コースでは緊急の場合は小児のパッド  が無い場合は成人のAEDパッドを貼って小児にAEDを実施しても良いということだ  ったのでしょうか。お話を伺っておりますと、AHAでは上記のことも容認している  と解釈できるのですがいかがでしたでしょうか。



From: Date: Sun, 27 Feb 2005 04:12:52 EST Subject: [eml-nc5: 0410] Re: [0407] 小児に対する AED Hさん  Bです。 言葉が足らなかったかもしれませんが、香港での指導内容については本threadでは触 れませんでした。書かせていただいたのはHさんご指摘のように出版物の「大胆な解 釈」です。 以下、ご指摘の件です。 香港の講習会では、基本通りの指導です。実際に子ども用のパッドもBLS講習会場に あるので(すなわち香港では承認されている)、究極の選択・・といったことは触れ る必要がないと思います。またAHAが「成人パッドの小児使用を容認」のご指摘には あたらないと思います。 私の書いた内容からそのようにとれたのでしたら、そのような意図ではありません。 学習者としての自問自答です。 どうぞご了承くださいませ ご指摘ありがとうございました。



From: Subject: [eml-nc5: 0411] Re: 小児に対する AED Date: Sun, 27 Feb 2005 19:27:48 +0900 徳田さん、Bさん、皆さん、こんにちは。 H@・・消防です。 ご返事ありがとうございました。 徳田さん > 僕自身はHAWAIIで教える際に,万が一成人用パッドしかない場合は > パッド同士がショートしないように使うと教えています > 万が一成人用を使わずに訴えられるとやっかいですから > このためHS CPR 講習中も小児のAEDはHS AED(DVD)のところ見せています Bさん > 言葉が足らなかったかもしれませんが、香港での指導内容については本threadでは触  れませんでした。書かせていただいたのはHさんご指摘のように出版物の「大胆な  解釈」です。 > > 以下、ご指摘の件です。  香港の講習会では、基本通りの指導です。実際に子ども用のパッドもBLS講習会場に  あるので(すなわち香港では承認されている)、究極の選択・・といったことは触れ  る必要がないと思います。またAHAが「成人パッドの小児使用を容認」のご指摘には  あたらないと思います。 1) 医師等を探す努力をしても見つからない等、医師等による速やかな対応を得ること   が困難であること 2) 使用者が、対象者の意識、呼吸がないことを確認していること 3) 使用者が、自動体外式除細動器の使用に必要な講習を受けていること 4) 使用される自動体外式除細動器が医療用具として薬事法上の承認を得ていること 私も上記のことがらを考えながらAEDについて勉強していきたいと思います。 貴重なご意見をありがとうございました。


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