論説 CPRとECCにおけるAHA 2005年ガイドラインの主要な変更内容 ―変更の転換点に至るまで―
Mary Fran
Hazinski et al. Circulation. 2005;112:IV-206 - IV-211 |
■課題 (The Challenge) ■ガイドライン2005における決断:主要な変更点とそれに影響した要因 (The Decisions: Factors Influencing the Major Changes in the 2005 AHA Guidelines for CPR and ECC) ■AHA「CPRとECCガイドライン2005」勧告のハイライト (Highlights of the 2005 AHA Guidelines for CPR and ECC Recommendations) ■要旨 (Summary) □参考文献 |
科学者たちは、(訳者註:心肺停止からの)生存に最も影響を あたえる要因が何かを確認(identify)するために、CPRの各段階の手順 と優先度を注意深く再検討した。 その結果彼らは(訳者註:特に)頻繁にかつ適切に実施される いくつかの処置(interventions)に関する推奨提言を作成した。 救助者が質の高いCPRを確実に実施することの重要性が全員一致 で、これまで以上に強調されて支持された。すなわち救助者は胸骨圧迫 を適切な頻度と深さで行い、それぞれの圧迫後には胸部を完全に戻るよ うにし、また圧迫の中断を最小限とすることが求められる。
「CPRとECCに関する AHA2005年ガイドライン」は、これまで発表された蘇生に 関する文献の最も包括的な再検討を土台にしている1。 エビデンスの評価に際しては、2005年のコンセンサス会議の前の 36カ月間 にわたり研究やトピックそして仮説を評価した、281名の国際的な 蘇生の専門家の意見(input)が取り入れられた。 そのプロセスには、構造化されたエビデンス評価、分析、そして文献の文書調査が含まれている2。 またそれには潜在的な利害対立(conflict of interest)に関する厳格な情報開示と管理も含まれており、 そのプロセスが 2編の論説に要約されている3,4。
数十年にわたりCPRに関する研究と教育を促進するための努力が
なされてきたが、病院外心停止の生存率は、世界的にみても平均 6%以下
と低いままである6-9。
生存率が低いことは、長期にわたる良好な転帰(すなわ
ち、神経学的に損傷のない生存退院率)を示すための十分な力(power)を持っ
た臨床試験を実施することを難しくしている。
(訳者註:2005年カンファレンスにおいて)専門家たちが最近の文
献について評価した際、様々な短期的な転帰指標をエンドポイントとした
臨床研究について、これらの研究の規模が小さ過ぎること(underpowered
or too small)、また無作為化されていなかったり、もしくは多くの介
入の相対的効果の個々の影響を見極め難くするような別系統の研究デザイ
ンの要素が混じっていたりするなどの批判が出た(experts noted)。
これらの困難は、北アメリカ10とヨーロッパ11のイン
フォームド・コンセントの規程によってもたらされた制約によって増幅されて
いる。
研究者たちは短期的転帰を改善するかもしれない治療法を特定
するために努力し続けているけれども、蘇生法研究のゴールが、心停止の後
に神経学的障害を伴わない生存退院の率を改善するための治療法を見つけ出すことである
ことに変わりはないのである。
院外突発性心停止の生存率が低いことは改善可能である
(not inevitable)。
一般人による CPRと AEDに関する組織化された地域プログラムにつ
いて北米で実施された研究で、(訳者註:これらのプログラムのある地域
における)生存率が上昇したことが報告された12。
加えて、空港13やカジノ14の一般人による CPRとAEDプログラムや、
これらを警察官にゆきわたらせたプログラム15によって、目撃
された心室細動(VF)の心停止の生存率は 49〜74%の範囲に至ったことが報告
されている。
これらの成功したプログラムには、いくつかの共通した部分がある。
それらは、計画され練習された通りに反応がで
きるように救助者を訓練すること、突然の心停止(SCA)の素早い認識、バ
イスタンダーによる迅速なCPR対応および倒れてから 5分以内に除細動をすることであ
る。
2005年のコンセンサス会議における特筆すべき発見は、心停止からの生存率の
上昇において早期の質の高い CPRが決定的な役割を果たしているというデータが示さ
れた一方、心停止の傷病者はほとんど CPRを受けておらず16,17、質の高い
CPRを受けているものはさらに少ない18-20ことを示す対照的なデータが示されたこと
であった。
すべての年齢の傷病者への最適なCPRの圧迫―換気比については、
ヒトのデータではまだ特定できていない。(そして)
バイスタンダーによる CPRがほとんど実施されていないこととと
心臓突然死の生存率が低いことへの認識が、推奨する圧迫―換気比を変更
しようとする動きの推進力となった。
科学者たちは、CPRの指導法(CPR teaching)をより簡略化するという CPR教育に関する(on CPR
Education)ウツタ
イン会議(Utstein Conference)の提言に賛成した21。
これらの提言は、CPRコースにおいて参加者がしばしば CPRの技術を修得
することができず、またコース終了後には修得した CPR技術の質が
急速に低下するという事実によって支持されている。
圧迫―換気比の変更(the tipping point for the change)には、近年の臨床観察、理論計算、そして
人体模型や動物を使った実験から蓄積されたエビデンス
の評価と議論が関わっている。
CPRを効果的なものとするためには、それによって適切な冠血流量と脳
血流量を回復させなければならない。
胸部圧迫の中断は冠動脈潅流圧を低め、心停止からの生存率を減少させる。
(訳者註:しかし)胸骨圧迫を何度も中断することで、冠潅流圧は低下し
心停止からの生存率が低下することになる24。
換気は、VF心停止の最初の数分間は胸骨圧迫ほど重要であるとみなされない
が、遷延した窒息性の心停止からの生存には寄与するとみられる25。
確かに、CPR中に正常な換気―血流比を維持するために必要な換気量は肺血流量が低いため、
通常よりもかなり少ない。
2004年と2005年の幾編かのヒトを対象とした少数の臨床シリーズ研究において
明らかになったことは、CPR中ヘルスケアプロバイダーは
不十分な頻度と強さで胸骨圧迫をおこなっており、また
圧迫が頻繁に中断され19,20、さらに、特に患者が挿管されてい
るときには必要以上の換気を行なっていること18,20であった。
一般救助者による人工呼吸も、同様に胸骨
圧迫の長い中断をもたらす傾向にあった26,27。
不十分かつしばしば中断される胸骨圧迫に必要以上の回数で換気を行う
ことが重なると、心拍出量と脳・冠血流量が減少18,24し、
心肺蘇生処置成功の可能性が損なわれることになる。
ひとたび専門家がCPRに関する提言の変更が必要であることに同意
した後の次なる明白な課題は、窒息性の心停止および VF心停止双方に対して、
またすべての年齢層の傷病者に実施される心肺蘇生において個別に、単純か
つ適切な推奨をする上で、上記の必要性をどのように織り込むかという点で
あった。
胸骨圧迫のみを連続して行うことは、VF心停止の最初の数分間においては適切
であろうが、窒息性の心停止(ほとんどの小児の心停止を含む)と
(訳者註:病因を問わず)あらゆる種類の遷延した心停止においては、胸骨
圧迫の中断を最小限にとどめた上での換気がより重要
であろう。
(訳者註:会議に参加した)専門家は、一般の救助者
が異なる原因の心停止の傷病者への異なるCPRの手順を学び、それを選択し、実施することを
期待すべきでないことにおいても、また意見が一致した。
数理モデルおよび動物モデルは、冠血流量と換気の適合には、圧迫―換気比が 15対 2
よりも高い方がより適切であろうことを示している28,29。
しかしながら、特に小児専門家の中では、不十分な換気は小児と窒息性(例えば
溺水による)心停止からの生存を減少させるのではないかという懸念があった。
最適の圧迫回数を確保しかつ圧迫中断の頻度を減少させるために、乳児(新生児
を除く)から成人までの傷病者に対する単独の救助者すべてに対して 30対 2の
共通の圧迫―換気比が、合意によって推奨されている。
その合意はヒト、動物、人体模型からの、また理論的に
得られた、最良のデータを総合した上で形成されたものである。
30対 2の比率は、成人に対する 1人もしくは 2人
の専門的救助者による CPR、そして一般救助者によるすべての(訳者註:成人および
小児に対する)心肺蘇生におけるトレーニングを簡略化するために推奨される。
15対 2の圧迫―換気比は、乳児や小児(思春期の始まりまで)に対する 2人救助者
CPR(主としてヘルスケア・プロバイダーやライフセー
バーに対し指導される技術)において推奨される。
(そして)この推奨は、窒息性心停止の可能性の高い傷病者に対して CPRにおける毎分の
人工呼吸の回数を多くすることにつながるだろう。
救助者には、効果的な胸骨圧迫(強く、速く圧迫)を実施すること、
圧迫後には胸郭がその度に完全にもどるようにすること、胸骨
圧迫の中断を最小限にすることが奨励される。
救助者は CPR中の胸骨圧迫を交代で実施するべきである。それは、
圧迫を数分間実施するだけでも疲労し、この疲労は圧迫の質を劣化させ胸
部の戻りを不十分にする可能性があるからである。
VF 心停止に対し胸骨圧迫が先か除細動が先か(Compression First Versus Shock First for VF
SCA)
最近のデータは、全てのVF傷病者にまず除細動をするという標準
的手順に対して、特に虚脱から救助者の介入まで 4〜5分以上経過している場合
には、否定的である。
院外で発生した VF心停止に関する 2編の研究では、
救急医療サービス(EMS)への通報から最初の除細動まで 4〜5分以上かかった場合には、除細動を行う
前に一定時間 CPRを施行すると生存率が改善
したことを報告している30,31。
しかし 1編の無作為試験(LOE 2)32では、EMSへの通報から最
初の除細動までの時間のいかんによらず、CPRと除細動のどちらが先
に施行されたかによって生存率に差はみられなかった。
(訳者註:上記のことから)全ての VF心停止の傷病者
に対して除細動の前にCPRを行うことを勧告するだけ のデータは十分ではないことが合意された。
市民救助者による除細動プログラム(a public defibrillation program)に関しては、
救助者は可能な限り速くAEDを使用するべきである。
救急隊員(EMS rescuers)は院外発生の VF/脈なしVTの治療に際し、
EMS応答時間(通報から現場到着まで)が 4〜5分以上かかった時、あるいは
救急隊員が心停止を目撃していない時には、除細動の試みの前に 5サイクル(約2分間)
のCPRを行ってもよい。
(訳者註:このことから)EMSのメディカルディレクターがそ
れぞれのシステムの平均反応時間に基づい
たシステムプロトコルを作成することが許容される。
もし複数の救助者がいるときには、1人が除細動器を準備をしている間に他の
人が CPRを施行して、迅速な CPRと早期除細動の双方を満たすことができる。
(1)この勧告が院内心停止にも適応されるべきか否か、(2)除細動施行の前に行
う理想的なCPRの時間、あるいは(3) (訳者註:除細動実施後も)
VFが継続する場合、「まず除細動する(defibrillation first)」と
「まずCPRをする(CPR first)」をどの時点で転換するのか、以上のことを決定すること
に関してはデータはなお不十分であった。
除細動、1ショックか 3連続ショックか(1-Shock Versus 3-Shock Sequence for Attempted
Defibrillation)
ECCガイドライン200033ではVF/脈なしVTの治療に胸骨圧迫を間におかないで
3連続ショックを行う、いわゆる"束ね(stacked)"ショックが勧告されてい
た。
ヒトや動物で 1ショック法と 3連続ショック手順
とで特異的に比較した研究はなかったが、他のエビデンスが
「3連続ショック手順」から「除細動後に直ち
に CPRを行う 1ショック法」への突破口を切り開いた。
3ショックの勧告は単相性正弦波を用いた除細動器の最初のショ
ックの効果が低いことと、素早い連続ショックによって経胸壁インピーダン
スを減らそうという意向に基づいていた。
最近の二相性除細動器は初回の成功率 (ショックから 5秒以内の VF停止と定義
される)は高く、平均して90%以上34,35である。すなわち VFは
1ショックで除細動されるとほぼ考えてよい。
もし 1ショックで VFの除細動が成功しなかった場合、それは低振幅の VF
かも知れず、新たにもう一度ショックをかける有益性は低い。
そのような患者には、迅速に CPRを再開、特に有効な胸骨圧迫を行うことが、
迅速に 2回目のショックを行うことよりも大きな価値が
あると思われる。
除細動に成功しても、ほとんどの傷病者では数分間、灌流のな
いリズム(PEA や Asystole)にとどまることが示されている36-38。その
ような状況で、適切な治療は迅速に CPRを行うことである。
2005年においてさえ、市販の AEDを用いて 3連続ショック手順を行いリズ
ム解析をすると、初回ショックからショック後の胸骨圧迫再開までに29〜37秒以上か
かっている38,39。
ショックの有効性が低いリズムを解析するために、延々と胸骨圧迫を中断
することは正当化できない(This prolonged interruption in chest
compressions cannot be justified for analysis of a rhythm that
is unlikely to require a shock.)。
会議において専門家たちは、救助者が除
細動後直ちに、胸骨圧迫から CPRを再開することを勧告した。
おそよ 5サイクルまたは
約 2分間の CPRを終えるまでは、救助者は循環の確認(たとえば波形や脈拍の確認)のため
に胸骨圧迫を中断すべきではない。
(訳者註:一方)特殊な状況(例えば病院内で持続的モ
ニターを常時行っている病棟など)、この
手順は医師の判断で修正してもかまわない。
この 1ショック方式の提言は新たな課題を突きつけた。それは初
回ショックの最適なエネルギ−レベルを決定
することである。
(訳者註:そして)二相性切断指数波形では 150〜200 Jの初回シ
ョックが妥当で、矩形性二相性波形では 120 Jが適当であるとの合意が得られ
た。
EMSシステムの多くがまだ単相性除細動器を用いているという認識か
ら、コンセンサスでは単相性除細動器のエネルギーの推奨は初回もその後も 360 Jとした。
この勧告の目的とするところは除細動操作の単純化である。
小児では、コンセンサスの勧告は初回のエネルギーでは 2 J/kg(単相性、二相性
ともに)である。そして 2回目以降の二相性ショックには同量エネルギーかあるいはそれ
より高いエネルギー(2〜 4 J/kg)が推奨されている。
除細動器のメーカーは、彼らが発売する製品が、製品それぞれの特定の除細動
波形が VFを停止させるのに効果的であることを示すエネルギーレベルの範囲を
明記するべきである。
ヘルスケアプロバイダーは自分たちが操作することを認可されている個別の
除細動器(the specific device)のエネルギーレベルの範囲を知っているべきである。
血管収縮薬、抗不整脈薬そして心停止中の投与方法 アドレナリンが広く使用され、また幾編かのバソプレシン
に関する研究があるにもかかわらず、ルーチンに投与されるいかな
る薬剤あるいは血管収縮薬も、心停止のいずれか段階において生存退院率の上昇
を示したとするプラセボ対照研究はみられない。
ほとんどの院外の研究では心停止時間が長くまた背景因子が雑多であることで攪乱され、有効性を
秘めている治療方法を特定することは困難である。
5編の無作為院外研究のメタ解析では、心拍再開率、24時
間以内の死亡率または死亡退院率(death
before hospital discharge)に関してバソプレシンとアドレナリンの間に
は有意差がないことが示された40。
血管収縮薬に対してのすべての勧告を除外するという提案も検討されたが、プ
ラセボとの比較研究がないことと、実験室レベルでは循環動態と短期生存率に
血管収縮薬の生理学的有効性が報告されているということから承認されなかっ
た。
心停止のヒトに対する抗不整脈薬のル
ーチン使用が生存退院率を改善させたというエビデンスはない。
抗不整脈薬で唯一アミオダロンだけが、プラセボ41やリドカイン42
と比較したとき、短期の転帰(すなわち生存入院率)を改善させた。しかし生
存退院率は改善しなかった。
こうした心停止からの長期転帰の改善に薬剤療法が効果的であるという報告
が欠如しているため、CPR手順は薬物投与に重きを置かず、
再び BLSに重点をおくこととなった。
ECCガイドライン200043では通電ショックのたびに、脈の有無とリズムの確認
をすることが勧告されていた。
これらの勧告は胸骨圧迫の中断を延長させることにつながった。
胸骨圧迫のこの中断を最小限にするために、2005年 AHA CPRとECCのためのガイ
ドラインでは、救助者は心電図解析(あるいは脈の触知)を差し挟むことな
く、ショック後即座に胸骨圧迫から CPRを再開することを勧告した。
CPR中、血管収縮薬や抗不整脈薬はリズムチェック後できるだけ早く投与されるべきである。
薬剤は除細動器が充電される間に行われるCPRによって、あるいはショック
後即座に再開された CPRによって循環するであろう。
この手順の中で最も重要なことは、中断を最小限にした質の高い胸骨圧迫
を行うことである。
プロバイダーはショックの後ほぼ 5サイクルあるいは約 2分の CPRを行うまで
は、リズム波形の解析のために胸骨圧迫を中断すべきではない。
もしまとまりのある波形(an organized rhythm)がみ
られたら、ヘルスケアプロバイダーは脈を確認する。
ヘルスケアプロバイダーは、除細動が必要なときには、胸骨圧迫を中断する
や傷病者から離れできるだけ素早く電気ショックができる
ように、そのような CPRとショックの流れるような行動
(coordination of CPR and shock delivery)の訓練をすべきである。
胸骨圧迫とショックの間隔を 15秒短くするだけでショックの成功率が増大す
ると報告されている44,45。
除細動器メーカーには、胸骨圧迫を続けたままでリズム解析ができるような
AEDを開発することが奨励されている。
蘇生後の治療(Postresuscitation Care)
蘇生後の治療は緊急心血管治療において近年ますます強調されてはいるが、特定
の治療法を支持するエビデンスはほとんどなく、病院間をこえた標準的な治療
法というものはない46。
プロバイダーは初期蘇生の後には、患者の心機能や臓器機能を保
持するように努める(must be prepared to support myocardial and organ function)。
血圧の維持、体温(特に高体温の予防あるいは治療)と血糖値の管理、
そしてルーチンには過換気にしないことが現在では勧告されている。
治療的低体温は院外発生の成人の VF心停止後、初期には昏睡
状態の生存者の神経学的予後を改善することが示されている47,48。
出生時無呼吸の新生児の諸研究は、患者を選んで脳低温療
法を行うと生存率と神経学的転帰が改善する可能性
を示唆している49。
しかし、院内発生の心停止後のこの治療の役割に関しては、
すべての年齢層や心停止の病因にわたって、さらに一層の確定的な研
究が必要である。
低体温療法の実際の適応にはまだ多くの問題点があるため、クーリングの最適
の方法、最適のタイミングと期間、効果的と思われるクーリングの程度(何度
まで)などを確定するためになお一層の研究が必要である。
小児の蘇生においては、効果的な圧迫そして換気が
強調されている。
前向き無作為比較対照試験では、高用量アドレナリンのルーチ
ン使用には有益性がなく、実際に
は状態を悪化させる率と死亡率を増大させる可能性があることが確認された50。
新生児の蘇生においては、最近の無作為比較対照試験51により
胎便汚染はあるものの元気いっぱいの新生児に対しては吸引が無益であることが示された(showed no benefit)。
この結果は ECCガイドライン2000の勧告を再確認するものであった52。
(訳者註:また)蘇生の際に、室内空気が100%酸素に勝るということを示すに足
る十分なデータは得られなかった。
エビデンスの評価を通じて、新生児蘇生において効果的な換気の確立が最も重要な介入で
あることが再確認された。
急性冠症候群検討委員会は、患者の分類と治療に用いる、心電
図所見を組み込んだリスク階層化の、基本的な位置づけを確立した
(confirmed the fundamental role)53。
この検討委員会は急性心筋梗塞の再潅流療法に至る時間を短縮するために、
院外活動に関する勧告と、搬送先病院へ12誘導心電図それ自体またはその所見を搬送先病院へ到着前に伝達すること
に関する勧告(訳者註:の正当性)を再確認した54。
急性心筋梗塞への勧告は最初の1時間の治療を中心とすることに単純化された。
脳卒中検討委員会はガイドライン2000における、急性虚血性脳卒中
時に院内で医師が NINDS(National Institute
of Neurological Disorders and Stroke)プロトコルに基づいて tPA(tissue
plasminogen activator)療法を厳格な基準(criteria)にのっとって実施することについての勧告
(訳者註:の正当性)を再確認した55。
(訳者註:また、院外治療だけでなく)病院診療が加えられること(hospital commitment)
により、脳卒中治療の転帰を改善させることができる。
多部門から集まった経験豊富メン
バーからなるチームがケアをする、脳卒中専
用病棟は急性脳卒中の患者の生存率、機能転帰、QOLを改善させる56。
ファーストエイド検討委員会は、多数のファーストエイド治療を基礎付けるエ
ビデンスを評価した。それらには、出血コントロール
における直接圧迫止血をするか止血帯法かという問題57や、中毒や環境要
因による緊急事態への対処など含まれている。
この検討委員会の勧告が土台となって、応急手当(first aid)に
関するガイドラインはこれまでより拡張されたものとなった。
CPRとECCのほとんどあらゆる側面について、より一層の調査が
必要である。
明らかになってきたことは有効な CPR
を行うことを重視し、二次救命処置の技術を絶え間ない胸骨圧迫―換気手順
と統合することが必要だというこ
とである。質の高い二次救命処置が質の高い一次救命処置によって決まる
ことは疑いない。
最終的な分析によると、突然の心停止からの生還の最も重要な
決定要因となるのは緊急時に活動する、訓練され、積極的また有能で、
必要な機材を配備された(equipped)救助者の存在である。
われわれの最大の課題でありかつ最も優先されるべき
事項は、救命のために市民救助者とヘルスケアプロバイダーに
単純で質の高い CPR技術を訓練することであり、それは教えやすく
また憶えやすく、かつ実行しやすいものでなければな
らない。
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■課題(The
Challenge)
■ガイドライン2005における決断:主要な変更点とそれに影響した要因
(The
Decisions: Factors Influencing the Major Changes in the 2005 AHA Guidelines for
CPR and ECC)
(Vasopressors, Antiarrhythmics, and Sequence of
Actions During Treatment of Cardiac Arrest)
■AHA「CPRとECCガイドライン2005」勧告のハイライト
(Highlights of the 2005 AHA Guidelines for CPR and ECC Recommendations)
■要旨(Summary)