大津市民病院AED実習用事前資料  2003918

 

DO AED!

わたしは自動体外式除細動治療を行います。

− 包括的指示のもとでAEDを使用するために −

 

I DO AED」講習を受けられる皆さんへ

 「I DO AED」講習へようこそ!本テキストは大津市民病院AED実施者養成のための事前学習資料です。養成は次の手順で行います。

 

1.事前学習

事前学習項目は「本テキスト(:G2000に準拠したBLSの手引き書を含む)」、「大津市民病院AED治療に関する包括的指示」、「AED治療の実際(mpgビデオ)」の3つです。自習を原則としますが、不明な点・質問はAED指導認定者(救急部スタッフなど)にお尋ねください。

2.筆記試験

 事前学習の3項目に関する試験を所属単位の責任で実施します。各項目とも60%以上の正解をもって合格とします。不合格でも同じ日に1回追試を受けられます。追試に失敗しても再学習の後、翌日以降に受験できます。筆記試験合格者に実地講習を行います。

3.実地講習

 6人の受講生に2−3名の指導者が指導評価を行います。約30分間の実習の後、一人ずつ実際の場面にそくした設定で(OSCE形式)AED使用できるか個別評価します。個別評価は原則として実施可能となるまで繰り返します。当日は動きやすい服装にしてください。手足を動かしたり、立ったり腰をかがめたり持ち上げたりします。もし、背中、膝、腰などに問題がある場合は、当日あらかじめ指導員に申し出てください。

4.研修修了証発行

 研修修了証を発行し包括的指示にもとづく大津市民病院AED実施許可を与えます。

5.指導者認定証

 研修修了証を保有する人で、更に実地講習の指導補助として2回以上参加された方に指導者認定証を発行し指導者として育成に参加していただきます。ACLSコースなどこれに準じる蘇生実習を修了されている方にも発行します。コース修了証明書類を安全推進室に提出して下さい。

 


はじめに

 

 「I DO AED」実習は包括的指示にもとづく自動体外式除細動器(Automated External Defibrillator AED)使用した救命処置を行っていただく上で必要となる技能と知識を習得していただくことを目的としています。それには蘇生法(CPR)AED使用の両方が含まれますが、CPRに関しては一般市民が行う一次救命処置(BLS)は習得していることを前提としています。BLSの内容はG2000(AHA2000年に発表した蘇生指針)準拠の事前資料で確認をお願いします。「I DO AED」実地講習はわずか1時間です。筆記試験に合格された後も、事前資料でしっかりとした予習をお願いします。

 事前資料の使い方として、全ての確認問題に答えることをお勧めします。解答がわからないところは教科書などで調べてください。それでも解らない所は指導者の方々に質問して理解を深めてください。

 皆さんとの実地講習を楽しみにしています。

I DO AED推進係

 

I DO AEDの目次

1.ABCからABCD

2.AEDを使おう

3.CPRAEDを連携させよう


1.     ABCからABCD

l        BLSパンフレットを確認しよう

 まず、ガイドライン2000に準拠した市民用BLS(Basic Life Support 一次救命処置)パンフレットを確認してください。今回の講習は蘇生のABC(Air way, Breathing, Circulation)について一般市民に準じた知識と技術があることを前提としています。

l        頚動脈触知ができることを確認しよう

パンフレットの内容に加えて、皆さんは頚動脈が触知できるように、誰かと組になって練習しておいてください。

l        DDef.(Defibrillation:除細動)

 除細動治療の英語はDefibrillationです。以前はDCと呼んでいましたが、今日からはDef(ディフ)と呼びましょう。

テキスト ボックス:  さて、成人のための救命の連鎖(Chain of Survival)の順を見てください。「早期通報」「早期蘇生」「早期除際動(Def)」「早期二次救命処置」の順にならんでいます。二次救命処置の前に医師以外もAEDを用いてDefを行うことが求められているのです。救命の鎖の順番を覚えてください。

l        1分ごとに10%の命が失われる!

 なぜ、早期Defが重要なのでしょうか?グラフを見てください。心停止発症からの時間経過と救命率が示されています。1分ごとに7-10%づつ救命率が低下することが分かります。CPRはこの低下を緩やかにすると考えられます。

 

確認問題

1.       「救命の連鎖」の4つを順番にいいなさい。

2.       目の前で人が倒れています。最初にすることは?(a. 呼吸確認、b. 脈拍確認、c. 呼びかけ、d. 気道確保)

3.       意識消失患者の呼吸を頭部後屈あご先挙上下に「見て・聞いて・感じて」確認しても呼吸がありません。次にすることは?(a. 2回すばやく息を吹込む、b. 2回ゆっくり息を吹込む、c. 1回すばやく息を吹込む、d. 1回ゆっくりと息を吹込む、e. 心臓マッサージを開始する)

4.       脈拍確認する部位は?

5.       心臓マッサージは1分間に何回で、人工呼吸との比率は?

6.       マスク換気で一番気をつけることは?(a. 鼻と口をしっかりおおう、 b. 一方弁を使う、 c. 透明なマスクを使う、 d. すばやく送気する)

7.       換気が確実であることを確認する適切な方法は?(a. 皮膚の色を見る、b. 脈を確認する、c. 呼吸中の胸の動きをみる、d. 気道確保ができているかを頻回に確認する)

人工呼吸しようとして容易に換気できない場合何をすべきですか?(a. ハイムリッヒ法、b. 指による異物除去、c. 頭部後屈あご先挙上やり直し、d. しっかりと送気する)

 

メモ


2.    AEDを使おう

1.                                                  AED本体および張付け電極2つで構成されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


     AEDの設置場所は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


     1. 2階 外来中央処置室

     2. 3階 3Cスタッフステーション内

     3. 5階 5A〜5Bスタッフ通路5A寄

     4. 7階 7A〜7Bスタッフ通路7A寄        以上4箇所です。

 

     操作方法

操作は極めて簡単です。

@電源スイッチを入れ、あとは音声指示に従って進みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


【音声】電極を接続して下さい。

    患者に触れないで解析ボタンを押して下さい

A解析ボタンを押します

 

B除細動が必要です!

 
 

 


【音声】「除細動が必要です」{充電音}{充電終了音}「患者に触れないで通電ボタンを押して下さい!」

【除細動後】「患者に触れないで解析ボタンを押して下さい。」【AとBを繰返します】

除細動が不要の場合は

「除細動は必要ありません。脈拍を確認して下さい。…脈拍が無い場合はCPRを開始して下さい」

 

電極を身体に張付ける際に皮膚の状態に注意!

     極端に乾燥、落屑がある場合は水を含ませたガーゼで急いで拭き、乾いたガーゼで乾拭きして下さい。

     発汗が多量であるときや体表面が水にぬれているときなどは乾いたタオル等でしっかりと拭取ってから電極を張るようにしてください。

     患者の手足がベッドの金属部分などに触れていないかも気を付けて下さい。思わぬところで感電の危険性が生じてしまいます。

     8歳未満でのAEDの使用は未だに確立していませんので控えてください。但し8歳未満でDEFを必要とするケースは非常に稀です。

     電極を貼る位置に貼付薬を貼っている場合は貼付薬をとってから電極を貼ってください。薬剤が残っている場合は拭取ってください。

     埋め込み式ペースメーカー、埋め込み式除細動器が前胸部(腹部)にある場合は、その部分は避け2〜3cm離したところで電極を貼るようにする。

 

     AED LP-500は賢い!

     電極を張付け、「解析」ボタンを押すと除細動が必要なVT,Vfを判断します。

     「解析」から「通電」上記のA〜Bを繰り返し「通電は必要ありません!」と判断するまで徹底的に繰返します。音声指示通りにボタンを押して下さい。

(何回difを繰返すかは医師に確認のこと、心静止すると「通電は必要ありません」になります、要注意)

     A〜Bを繰返す場合は自動的に通電エネルギーを上昇させます。(初回200J、2回目300J、3回目以降360)

     LP500内部には、電極を張付けた時からの心電図と、除細動や蘇生状況などの重要なデータが記録されています。パソコンでこれらのデータを解析しておく必要があります。使用後はAEDの電源を切り、MEセンターまで本体ごと持ち込んで下さい。処理後はMEセンターから設置場所へ返却します。

     注意

     LP-500は心電図の解析確認やリチウム電池容量確認のため毎日定時に自動的にセルフチェックを行なっています。何か不都合があるとメッセージを黒の表面パネルに赤ランプ(バッテリーマーク、スパナマーク)点滅で警告します。セルフチェックを行っていないAEDを使用してはいけません。

     患者に電極を張付けても「電極を接続して下さい!」が繰返される場合は、電極の劣化か皮膚の状態不良が考えられます。電極の有効年月日と電極張付け位置の皮膚の状態をチェックすること。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


確認問題

     AEDの設置場所を全て把握していますか?

     男性の若い患者です。電極を張付ける時、胸毛だらけの場合どうしたら良いか?

     老人の男性です。肋骨が浮き出ていてなかなか平滑に電極が貼れません。どうする?

     AEDの電源スイッチを入れたら赤いランプ(スパナーの形)が点滅しました。音声ガイドも出ません。どうする?

     AEDが通電を警告している時(ピロピロ・…)、あなたは処置中でどうしても患者から手が離せません。どうする?

     音声指示に従い、かれこれ数回の通電を行ないました。医師とは誰とも連絡が取れません!どうしましょうか?

     AEDの使用後はAED本体をどうしたら良いでしょう?

     お風呂の横で患者が倒れている。AEDを使う際に気をつけないといけないことは?

     子供にAEDを使用したい。適応は何歳以上から?

     左前胸部に手術痕と小さなふくらみをふれる。電極を貼る際に気をつけることは?

 

メモ


3.     CPRAEDを連携させよう

l        包括的指示を確認しよう

 別紙の除細動治療ブロック図にAED治療に関する包括的指示が示されています。Defは医療行為ですから医師の指示が必要です。そこで、Defに関しては医師の包括的指示としてプロトコルがあらかじめ示されているのです。この包括的指示を遵守することで、医師がそばにいなくても心停止発生後直ちにDef治療が行える(行わないといけない)ことになります。この包括的指示に基づくプロトコルは必要により変更されることもありますので内容を常に確認し遵守することが業務上重要になります。

l        CPRAEDを連携させよう

どのような状況でCPRを開始し、いつAEDを使えば良いのか?それがうまく繋がっていなければはせっかくの知識や技術も水の泡です。以下のことを参考にして各自がもう一度イメージしなおしておきましょう。

l        まず人手とAEDを!

 倒れている人を見たら意識(+呼吸、心拍)があるのかをチェックします。意識がなければ迅速かつ冷静にまず人手AEDを!(その場を離れずに!)。次に蘇生のABCDです。前述の通りDDefibrillationです。そこでAEDの出番です。AEDはその名の通り非常に簡単に使えるように工夫されていますが、やはり全く知らないのでは使いこなすことは不可能です。

l        CPRを続けながら

 アンビュマスクによる換気と、心臓マッサージを継続しながら第二または第三者がAEDの準備をします。

l        AEDを準備する

AEDのふたを開けスイッチを入れます。パッドのケーブルを本体にしっかりと指し込みます。心臓マッサージを継続しながら、迅速にパッドを前胸部と側胸部に貼りつけます。(貼る際の注意点は前の項を参照。)

l        解析中は患者から離れて!

続けて解析ボタンを押す。この際患者に触れないよう全員が注意する。特に人工呼吸、心臓マッサージをしている人もこの時は患者から離れるように注意する。

l        DEFがいるとき

もう一度誰も患者に触れていないことを確認する。その後、1、2、3通電ボタンを押す。DEFの後は解析ボタンを押して心電図を再解析しますが、この際も誰も患者に触れていないことを確認します。もし更にDEFが必要なときはあと2回まで(計3回)通電します。(通電のエネルギーはAEDが自動的に設定してくれます)

 

 

l        DEFが必要ない場合(DEF後も含む)

 まず脈拍を確認します。その際必ず頚動脈を触知します。脈拍がなければそのまま1分間CPRを続けます。その後脈拍を確認して脈拍がなければ再度解析ボタンを押します。脈拍があれば次に呼吸を確認します。自発呼吸が不充分であれば人工呼吸を続けます。呼吸も十分であれば患者を回復体位にします。

l        ここで始めて一段落

 お疲れ様です。ここまできたら少し落ち着いて原因の検索、今後の治療方針、看護業務の計画を進めていきましょう。以上の流れを次のページでフローシートにしましたから、確認しておいてください。

 

 


 

AED取り入れたCPRの流れ

意識がない

 

 

 

人・物(AED)を集める

 

 

 

A: 気道を確保する 頭部後屈、あご先挙上

B: 呼吸を確認 見て、聴いて、感じて 10秒以内

 

 

 

自発呼吸なし

呼吸あり

 

 

2回の人工呼吸

循環確認:呼吸不充分なら5秒毎に1回の人工呼吸

 

 

C: 循環の確認 頚動脈触知

 

循環あり

 

循環なし

 

 

CPR実施しつつAED装着

・胸骨圧迫 100/

15回圧迫、2回換気

 

 

 

 

Def.: AEDによる除細動

・電源を入れる

     パッドをはる(その間はCPR中止)

     音声指示に従い3回通電

 

 

 

 

 

3回通電後または、ショック適応なし

・循環の確認

循環がなければ1分間CPR実施

 

 

 

 

 

循環の確認、ない場合

・解析ボタンを押す

音声指示に従い3回通電

 

 

 

 

 


確認問題

1.自発呼吸を認めないが、脈拍は微弱ながら触知する。顔面蒼白でチアノーゼを認める場合すぐにAEDの適応がある?

2.脈拍が触知できず、散発性のあえぎ呼吸を呈している患者にはAEDの適応がある?

3.CPR&AEDの適応がある患者は次のうち(どれか一つ選んでください)a.呼びかけに反応がなく脈を微弱に触れ、呼吸を認めない患者 b.呼びかけに反応がなく、脈を触知せず、微弱な呼吸を認める患者 c.呼びかけに反応がなく、微弱な呼吸と脈拍を認める患者 d.呼びかけに反応がなく、脈も呼吸も認めない患者

4.突然倒れた人を見たときにすることは(次のうちどれか一つ選んでください)a.人と物を集める→意識を確認する→ABCD b.人と物を集める→ABCD→意識を確認する c.意識を確認する→人と物を集める→ABCD d.意識を確認する→ABCD→人と物を集める

5.3回のDEFのあとも脈拍が再開しない場合どうしますか?a.すぐにもう1度DEFをする b.蘇生に詳しい人が来るまでDEFはしないほうがよい c.1分間CPRを継続しその後AEDによる再解析をする d.AEDをはずし、患者を救急処置室へ運ぶ

6.意識がなく自発呼吸、脈拍ともに認めない患者に対し、AEDで解析をしたら通電の必要はありませんといわれた。さああなたならどうしますか?a.とりあえずDEFをする b.CPRを1分間続けた後再解析する c.蘇生に詳しい人が来るまでCPRを続ける d.AEDをはずす