看護師による院内除細動に関する申し合わせACLS関連メーリングリストより(2004年 4月) |
文責:県立新居浜病院麻酔科 越智元郎
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愛媛県立新居浜病院では平成16年3月8日(月)に開催された倫理委員会において、「看護師による自動体外式除細動器(AED)を用いた院内除細動に関する申し合わせ」が了承されました。訓練を受けた看護師が心肺停止患者に遭遇し、医師がその場に居合わせない場合に、看護師がAEDを用いて除細動を行うことについてはすでに厚生労働省から容認されています。今回 倫理委員会で審議していただきましたのは、看護師によるAEDを用いた除細動の重要性について院内に広く周知していただくという面もありました。
最近、医療事故防止、院内緊急事態への対応能力の向上が強く求められていま す。院内で突発的に発生した心肺停止患者への対応は特に重視され、病院評価で もその対応能力が問われるとお聞きしております。一方、2000年に米国心臓協会 (AHA)および国際蘇生法連絡委員会(ILCOR)が発表した「心臓血管蘇生に関す る国際ガイドライン(Guidelines 2000)」におきましては、心肺停止患者を重 篤な中枢神経系後遺症なしに救命する治療手順として「早期除細動」の重要性が 強調されており、院内心停止患者におきましては循環虚脱から3分以内の電気的 除細動を実施することが求められています。
元来、看護師は医師の指示のもとに医行為を行い得るものと法的に位置づけら れておりますが、除細動についてはその侵襲性の高さゆえ、医師のみが行い得る と慣習的に認知されて来た経緯があります。しかし、心室細動による心停止に対 する一刻も早い除細動の有効性は科学的に立証されており、すでに我が国では救 急救命士による除細動が法的に認められております。また、最近の国際的な流れ としては自動診断機能を有する自動体外式除細動器(AED)を用いて、医師など の有資格者がいない場面では一般市民にも使用が許されています。AEDについて は厚生労働省も看護師による使用を正式に容認しており、全国の医療機関の中で も看護師が除細動を実施する施設が増加しつつあります。その結果、すでに岡山 大学附属病院などから看護師の除細動による救命例が報告されています。当院に おきましても本年はじめにAEDが導入される予定になっており、看護師が除細動 を実施できるようにするか、実施できるようにするとすればどのような要件・手 順により実施できるとするかについて院内申し合わせが必要になって参りました。
以上のことから「看護師による院内除細動に関する申し合わせ」を作成致し、 平成16年4月1日以降、この申し合わせに沿って看護師による緊急対応を行いたい と思います。
以下、本文中のAEDは自動体外式除細動器または自動体外式除細動器と手動式 除細動器を兼ねた除細動器を指す。またAEDによる除細動とは、AEDの心電図自動 解析機能を用いて除細動を実施することをいう。
患者が院内で突然意識を失った場合、看護師は所定の緊急コールにより医師お よび他の看護スタッフを集め、同時にAEDなど必要な蘇生機器を持ってこさせる。 このとき以下の要件をすべて満たす場合、看護師がAEDを作動させて心電図解析 を行い、除細動が必要と判定された場合には国際指針に基づく3回までの初期除 細動とその後の蘇生処置を実施することが推奨される。
(1)AEDを用いた除細動を許可する要件
心肺停止の認識には応答(意識)なし、自発呼吸なし(gaspingと呼ばれる死戦期の弱い不規則な呼吸はあってもよい)、頸動脈などの脈拍の消失を含む循環のサインの消失の3兆候が必要である。
過去1年以内に東予救命救急センター主催の「ACLS院内講習会」を受講し、 救命救急センター長から「AED院内認定看護師(仮称)」と認定された看護 師はAEDを用いた除細動を実施することができる。ただし、AEDの装着とこれ による心電図自動解析については特に制限を設けない。なお、東予ACLSセミ ナーをはじめ、各地で行われるACLS(二次救命処置)1日コースを受講した者 も、受講証の写しを添えて救命救急センター長に申し出れば「AED院内認定 看護師(仮称)」に認定される。
「AED院内認定看護師(仮称)」は毎年、研修状況などを救命救急センター長に報告する。過去1年間に所定の研修等を受講していない場合はその資格を失うものとする。
(2)AEDを用いた除細動の実際の手順
院内プロトコルまたは米国心臓協会のG2000に沿ってAEDを用いた除細動を含む 一次救命処置を実施する。具体的な手順は表1に示す。AEDを用いた除細動を実 施した場合には表2に示す報告書を看護部長ならびに救命救急センター長へ提出 する。
これについては今後の検討課題となりました。