歯科医師医科研修裁判判決に対する全国保険医団体連合会声明
全国保険医新聞 第2242号 (2003年4月15日発行)より
ウェブ担当者:県立新居浜病院麻酔科 越智元郎
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関連資料
歯科医師医科研修裁判判決に対する全国保険医団体連合会声明
市立札幌病院救命救急センターにおける歯科医師の医科研修行為が医師法一七条違
反にあたるとして、同センター部長の松原泉医師が管理責任を問われ起訴された裁判
の第一五回公判が札幌地方裁判所(井口修裁判長)で三月二八日に開かれ、「罰金六
万円」の判決が言い渡された。判決は、量刑理由の中で、「歯科医師が師のような能
力を修得することは、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、国民の健康な生活を確保す
ることにつながるというべき」、「本件各行為を行った歯科医師らは、いずれも歯科
口腔外科という医科と重なる領域の専門分野で相応の経験を積んでおり、本件各行為
を実施するについて、医師の資格をもつ研修医と比較して能力的に劣るところはなか
ったと認められる。実際にも、本件各行為によって、その対象となった患者の生命、
身体等に具体的な危険が及んだという事実は認められない」など、公判における弁護
側の主張を認めた。
しかし判決は「医師と歯科医師の資格を峻別する法体系の下では許されない」と建
前上の解釈にとどまった。この判決は「六割の口腔外科で医科領域の研修を行ってい
る」(日本口腔外科学会調査)など歯科医師の医科研修レベルや卒然の医学教育のあ
りかたをも後退させかねない。
本来裁判所の判断には、社会情勢を鑑みて、国民の真の利益を確保する方向での法
解釈が求められるが、本判決がその役割を果たし得ていないことはきわめて遺憾であ
る。被告弁護側は即刻、札幌高等裁判所に控訴したが、控訴審では、本来の裁判所に
求められる社会的役割に則って、地裁が避けた医業と研修としての医行為を区別する
ことにまで踏み込んだ判決を希求する。
同時に、我々は、厚生労働省に対して、本地裁判決で認められた「歯科患者の急変
の状態等に適切に対応する能力、全身管理の能力を身に付けられるための歯科医師の
医科行為の研修」を参加型で保障するような医師法等の制度改正を早急に行うよう強
く求める。
我々は、健全な歯科医療とそのための参加型研修の確保をめざして、引き続き「松
原医師と医科研修を支援する会」とともに、支援活動をさらに強めるものである。
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