私はこれに満足できない気持ちが残りましたので、2002年1月はじめ、 プレホスピタル・ケア誌に以下の「Letter to the editor」投稿しました。 しかし、本稿は採用には至りませんでしたので、ここにウェブ資料として収載し、 経過を記録したいと思います。
Letter to the editor,
拝啓 編集委員殿、
先日は貴誌第14巻4号(通巻44号)に掲載されました、「指導 者のための救急蘇生法の指針(一般市民用)」および「救急蘇生 法の指針(一般市民のために)」に関する書評1)の中に、一部事 実と合わない記載があるのではないかと連絡をさせていただきま した所、ただちに訂正文2)をお出し下さいました。ただこの訂正 文ではどの記載に問題があるかやや明瞭でないように思われまし たので2、3追加させていただきます。
1つは American Heart Association(AHA)が1999年から2000 年にかけて、心肺蘇生法の見直しのために国際的検討委員会を開 催しましたが、日本からの参加者はいずれもAHAより旅費等を支給 され招聘の形で出席しました。それゆえ、「押しかけ」という表 現があたらないのは明かです。
つぎに、わが国の心肺蘇生法の新指針策定の場は当初から日本 救急医療財団心肺蘇生法委員会(JRC)に設定されており、各分 野からの参加者により精力的な策定作業が行われました。この過 程におきまして「我が国の指針を誰がまとめるかという主導権争 いとも見られかねない」混乱等はあり得ませんでした。
また、今回のガイドライン策定において AHAは世界の研究者 から推奨勧告を公募し、Evidence Based Medicine (EBM)を土台 とした意見集約を行いました。これはまさに「百家争鳴」の、密 度の高い情報交換のプロセスであり、同時にAHAの公開性と懐の 深さを感じさせるものでした。このAHAのガイドライン策定の方 法論と日本の蘇生研究に及ぼした影響につきましては拙著3)でも 報告しました。
最後に、「指導者のための救急蘇生法の指針」をいち早く書評欄 に取り上げられた編集室のご慧眼に敬意を表します。
愛媛大学医学部救急医学 越智元郎――――