救命救急センターでの歯科医師の研修問題:

関連新聞記事など

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 目 次

歯科医研修*資格外診療が生む不信(北海道新聞 2002/01/13)

歯科医師が専門外治療? 医師法違反の疑いで札幌地検に書類送検(日本歯科新聞 2002/01/15)

センター部長を医師法違反で起訴 市立札幌病院の専門外診療で札幌地検(北海道新聞 2002/02/13)


歯科医研修*資格外診療が生む不信

北海道新聞 2002/01/13

 市立札幌病院で歯科口腔(こうくう)外科の研修を受けていた歯科医が資 格外の医療行為をしたとして、責任者の救命救急センター部長を含む四人が 医師法違反の疑いで書類送検された。

 患者は医師に生命をゆだねている。専門分野でない診療ではとても安心で きない。これを長年認めていた病院の責任が問われるのは当然だろう。

 しかし、背景にあるのは、歯科口腔外科という新しい分野を担う医師養成 の方針が明確でないことだ。放置してきた厚生労働省の責任も免れない。

 歯科口腔外科では、例えば舌がんなどの腫瘍(しゅよう)や事故で損傷し たあごなどの治療も行う。麻酔をはじめ身体全体について、医師同様の高度 な知識と技術が必要だ。

 全国の大学や公立の病院で歯科医を対象にした臨床研修が行われ、日本口 腔外科学会が専門医と認定している。

 診療の原則は耳鼻咽喉科や形成外科など医師との連携である(一九九六年、 旧厚生省の検討会指針)。しかし、実際は認定を受けた専門医が単独で行っ ても、「暗黙の了解」事項になっているという。

 歯科口腔外科を持つ道内の病院は三十五カ所、入院患者は六千人を超して おり、増加する傾向である。

 歯科と一般の医療の谷間と言える分野を担う医師の研修過程で起きたのが、 今回の資格外診療だ。

 問題は救命救急センターに配置されていた期間の医療行為である。歯科医 は四人の当直グループの一員となり、搬送される患者を担当した。容疑は口 腔内の疾病と関係のない患者をも診察したり、強心剤を注射した点などだ。

 関係者は、診療は「チーム」で行い、医師の指示を受けているので違法で はないという。センター研修は臨床例を多く得る狙いだったらしい。

 しかし事故が起きた場合に、資格外の医療を行った歯科医に責任を負わせ られるのか。研修プログラムを作成、指示した病院側の責任は免れまい。

 研修は本来の歯科口腔外科を中心に組み立て、同センターでは補助的な役 割にとどめる慎重さが望まれたのではないか。

 同病院の救急医療は医療と消防のスタッフの連携の良さが、全国的なモデ ルになるほど評価されている。それだけに残念な失点だ。

 高齢化の進展で、歯科医がさまざまな疾病に遭遇するケースが増え、全身 に及ぶ管理の知識がより重要になっている。

 時代に応じた歯学教育と研修の整備が必要という指摘がある。口腔分野の ように、歯科医と医師の役割分担も明確にする必要がある。

 誤診による医師不信が強まっている。市民の納得できる医療体制づくりが 信頼を取り戻す根源ではないか。


センター部長を医師法違反で起訴
市立札幌病院の専門外診療で札幌地検

北海道新聞 2002/02/13

 市立札幌病院の救命救急センターで歯科医が研修の際に医療行為をしていたと して、札幌地検は十二日、医師法違反(医師以外の医業禁止)の罪で、同センタ ー部長で研修責任者の松原泉医師(51)=札幌市豊平区=を札幌地裁に起訴した。 松原被告は「歯科医の医療行為は医師の指示のもとに行われており、医師法違反 には当たらない」として全面的に争う姿勢だ。

 同法違反容疑で書類送検されていた歯科医三人について、同地検は「研修は松 原被告の主導で行われ、従的、受動的立場だった」として起訴猶予処分とした。

 起訴状などによると、松原被告は一九九八年八月から昨年三月にかけて、歯科 医三人が医師免許がないことを知りながら研修医として受け入れ、当直医や担当 医として配置。歯科医は研修期間中に計七人の救急患者に対して≪1≫ドクター カー内で気道確保のため気管内に挿管≪2≫手術の際に助手を務めた≪3≫患者 側に手術の危険性などを説明して同意を得た―などの医療行為を延べ十一回にわ たって行った。

 医師法違反事件は昨年六月に判明。札幌市保健所長の告発を受けて道警が今年 一月、四人を同法違反容疑で書類送検していた。研修は九七年に始まり、これま でに計四人が研修を受けているが、既に中止されている。

 同地検の幕田英雄次席検事は「医師でない者が、歯科に属さない疾病の患者に 対して医療行為を行ったことは明白。現行法は医師と歯科医の資格要件を厳格に 区別しており、研修目的でも医師法違反になる」としている。


■救命救急センター等での歯科医研修問題について