第2章 社会的課題としての障害

ICFの環境因子という概念をふまえ、職業場面における実際の問題への効果的な支援のあり方について、個人と社会の両面からの実証的で科学的なアプローチと、社会的コンセンサス形成を行うことが必要である。

 

第1章で検討した「障害」の考え方はICFで明確に示されたとはいえ、実は既に1980年のICIDHにおいて示されており、もはや議論の余地のないものであった。1980年のICIDHの後に、最も活発な議論があったのは別の問題であり、2001年のICFにおける最大の特徴の一つもそこにある。それは、「障害」は個人だけの問題ではない。企業や地域などの環境側にも、「障害」の原因があり、解決すべき課題がある、ということである。

しかし、これは取り立てて新しい考えではなく今までも当然行われてきた、という反対意見があるかもしれない。確かに、障害者の雇用の促進等に関する法律には、障害のある人の職業能力に対する社会的な環境整備の必要性を示す条項がある。「障害者である労働者は、経済社会を構成する労働者の一員として、職業生活においてその能力を発揮する機会を与えられるものとする(第3条)」「すべて事業主は、・・・(障害者である労働者への)適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るように努めなければならない(第4条)」とある。また、障害のある人への環境整備や雇用管理を重点的に実施することを目的とした特例子会社での取り組みは効果をあげ、職場適応を職場内で実践的に支援したり、職場の同僚や上司等を巻き込んで環境整備や雇用管理の方法を援助したりする「ジョブコーチ事業」も成功している。

もちろん、これらの取り組みは万国共通の有効な方向であり、これを否定するものではない。しかし、事業主のコストで障害のある人の生産性が向上した場合の職業能力の正当な評価の問題や、事業主責任での環境整備の範囲やそのコスト負担の問題は、どう考えられているだろうか。前者の問題は賃金を含む処遇の問題に直結するし、後者の問題は障害のある人の雇用管理コストに直結して、ひいては、障害のある人の雇用可能性にも関連する。また、職業リハビリテーションや障害者雇用支援においては、障害者に対する支援と事業主支援の緊密な連携が重要であるが、その際、どこまでが障害者側の能力開発によるべきで、どこまでが事業主側の「負担」によるべきなのだろうか。これら現実に大きな意味をもつ問題については、いまだ明確なコンセンサスがない、というのが実情であろう。

実は、このような人権問題をも含む障害問題の社会的側面等にかかるコンセンサスの形成こそが、20年前のICIDHと、2001年のICFとの大きな違いであり、多くの関係者を巻き込んだ議論の大きなテーマであった。我々はこのコンセンサスをこの章の検討の基盤とする。

以下の3つの節では、これまで、国によって定義も違い、制度も異なり、しかも、政治的な問題までからみ、普遍的な問題枠組など設定困難と思われていた障害のある人の職業問題について、ICFの環境因子という概念をふまえ、職業場面での実際の問題への効果的な支援のあり方について、個人と社会の両面からの実証的で科学的なアプローチと、社会的コンセンサス形成を行うことが必要であることを示す。

l     第1節 職業的視点からみた障害の環境因子: ICFの環境因子分類を使って、障害のある人の就労支援に関わる全ての要素を分類することができる。

l     第2節 環境因子と障害の関係: 企業の環境整備のあり方や地域の支援のあり方は、職業的視点からみた障害の改善効果から実証的に検討する必要がある。

l     第3節 標準的な環境整備のあり方: 妥当な職業能力評価と職場や地域での環境整備のあり方については、標準的環境のコンセンサス形成が必要である。

第1節 職業的視点からみた障害の環境因子

ICFの「環境因子」分類は、ICFに「社会モデル」の要素を統合するという背景で、「環境因子」タスクフォースによる検討を踏まえて作成されたものである。なお、このタスクフォースの座長は、ICIDHに対して障害当事者の立場から反対を続けてきた(佐藤, 1992)、国際的な障害当事者団体であるDPI(障害者インターナショナル)の議長であった。

こうした経緯もあって、ICFの「環境因子」は、障害に関係する環境の範囲の全てを網羅するように作られており、それは「人々が生活し、人生を送っている物的な環境や社会的環境、人々の社会的な態度による環境を構成する因子(ICF:序論)」のことである。分類は大きく次の5つの領域に分かれている。

l     生産品と用具

l     自然環境と人間がもたらした環境変化

l     支援と関係

l     態度

l     サービス・制度・政策

そこで、この節では、まず、国によって大きく取組みが異なる「制度」や「政策」について整理し、次に、より実際の職業場面に近い、「サービス」を含むその他全ての環境因子について整理することとする。

1 環境因子としての「制度」「政策」

職業的場面において、社会側が変わることによって障害状況が変わるという、具体的な実例はあるだろうか。もちろんある。近年の、様々な国々における、障害のある人への雇用支援にかかる様々な社会的取り組みの成果がまさにそれである。

障害のある人の雇用の機会均等は、通常の機会均等政策の枠組みだけでは十分に目的を達成することができない。障害のない人と同じような機会を保障し、差別を禁止し、同じような扱いをする、というだけでは、障害のある人の多くは健常者と同様の職業能力を発揮することができないことが多いからである。

障害のある人の雇用機会を保障するための、制度や政策には大きく分けて2つある。それは障害のある人の特別の雇用枠を設ける「割当雇用率制度」と、職業能力の正当な評価の前提としての「合理的配慮の義務化」である。さらに、近年、最も重度な障害への対応として、「援助付き雇用」や「特例子会社」という社会的取り組みが注目されてきた。そこで、これら様々な制度を、ICFの「環境因子」として、体系的にその特徴を整理することとする。

(1)割当雇用率制度

わが国をはじめフランスやドイツ等いくつかの国では、障害者雇用率制度によって健常者とは別の雇用枠が設定されている。これは、ICFの障害枠組では、「参加」の問題に焦点をあてた政策である。これによって、障害のある人の一般雇用の可能性が拡大するからである。

この制度は、法定雇用率の分だけ障害のある人を雇用することを、社会的責任として企業に課すものである。この社会的責任に伴う雇用管理上の追加的負担や、生産性の低下等によるに経営的負担については、基本的に企業負担である。

この制度の利点は多くある。

l     一般雇用の社会的な数値目標を明確に設定できる。

l     障害のある人の一般雇用に前提や条件の設定等がないので、企業側の言い訳ができない。

l     企業負担の大きな重度障害のある人の雇用を積極的に推進できる。

l     とにかく雇用を実践させることによって、企業側の理解促進やノウハウの蓄積が可能となる。

一方、問題点もある。

l     障害のある人の雇用が一般雇用と分離された別個の労働市場と化しやすい。

l     環境整備の実施が企業の任意である。このため、障害のある人にとって劣悪な環境が放置されやすい。

l     雇用の可能性が企業側の費用負担の限度に依存しているため、不況などで企業経営が苦しくなると、雇用推進が難しくなる。

(なお、割当雇用率制度とペアになっていることが多いのが、金銭的な調整措置である。わが国では納付金、調整金、報奨金などの制度である。これは、法定雇用率を満たしていない企業から費用を調達して、雇用率を余分に満たしている企業に補助するというものであり、これにより、事業主全体として、社会的負担を公平化するものである。ただし、法定雇用率満足分については差し引きゼロになることで明らかなように、基本的には、障害者雇用に係る全ての負担は企業負担であることに注意が必要である。また、この制度は、本来の費用の調整という意義以外に、経済的なインセンティブや強制力の担保として機能しているという意義があるという指摘(Thornton, 2004)もある。)

(2)合理的配慮の義務化

一方、割当雇用率制度の優遇的措置を逆差別と考えるような、米国や英国、北欧諸国諸外国では、機会均等の前提として、障害のある人の能力を正当に判断するための合理的配慮が最も重要なことと考えられてきた。また、最近は、ヨーロッパ共同体(EU)でも導入され(Council Directive, 2000)、割当雇用率制度をとっているドイツやフランスなどでも取り入れられている。これは、ICFの障害枠組では、「活動」の問題に焦点をあてた政策である。これによって、直接的には職務遂行上の活動制限が改善され、それによって間接的に参加制約がなくなるという考えに基づいているからである。

これは、障害のある人の採用、雇用継続、昇進等、その人が資格ある労働者であるかどうかを判断する場面において、合理的配慮を行う社会的責任を企業に課すものである。基本的に、この社会的責任に伴う追加的負担は、全て企業負担である。なお、この制度では、合理的配慮をしても生産性が低い場合には雇用の義務はないので、生産性低下に関する社会的負担はもともと発生せず、企業負担は純粋に合理的配慮の分だけである。また、この負担は企業にとって「過大でない負担」の範囲でよいとされている。

この政策・制度の利点や問題点は、割当雇用率制度とちょうど裏返しのような関係にある。

この政策・制度の利点は多くある。

l     障害のある人の雇用は、一般雇用と完全に統合されている。

l     障害のある人にとって適切な環境整備が保障されている。

l     生産性の低い人を無理に雇用しているわけではないので、企業負担が比較的少ない。

一方、問題点もある。

l     障害のある人を雇用するように、企業に働きかけにくい。

l     必要な環境整備が「過大な負担」であるとの企業側の言い訳が可能である。

l     企業にとって「過大でない負担」という条件までしか合理的配慮の義務がないので、重度障害のある人の雇用に限界が生じる。

(3)最重度の障害のある人への社会的方策

最も重度な障害がある人の雇用機会の保障は、割当雇用制度でも、合理的配慮の義務化でも対応の難しい問題である。いくら企業が社会的責務として雇用しようとしても一般企業では実質的な対応が難しいし、企業の負担も過大となってしまうのである。

これに対する実績のある方策として、「特例子会社」と「援助付き雇用」についても整理することとする。

ア 特例子会社

特例子会社は、親会社が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立した場合、一定の要件のもとに子会社に雇用されている障害者を親会社に雇用されているとみなして雇用率を適用するという、わが国の方策である。これは、重度障害のある人のための環境整備や雇用管理には、建物の改造、支援者の配置、雇用管理上の配慮など、人数に関わらず全体で必要とされるコストがあるので、障害の人を集中的に雇用する会社をつくることによって、一人当たりのコストを下げられるという利点がある(浅尾, 1998)。これは、合理的配慮に似ているが、障害のある人の能力の向上自体を問題としているわけではなく、主眼は雇用管理の負担の軽減であるため、ICFの問題枠組では「環境」の負担面に焦点をあてた対策と言えよう。

この利点も大きい。

l     同じ環境整備をしても、その相対的な負担を軽減することができる。

l     合理的配慮が義務化されていないわが国において、障害のある人の「活動」面の問題に対する環境整備ノウハウの蓄積という成果を生んでいる実験室的な意義もある。

ただし、次のような問題点もある。

l     明らかに一般企業とは隔離された職場であり、統合的な雇用とはいい難い。

l     費用を共通化できないような個別的なニーズをもつ障害状況には対応できない。

l     環境整備を前提とした仕事の成績は、正当な能力として評価されないことがある。

l     単に企業の雇用率を上げたり、コストを下げたりするために活用され、重度障害者の雇用には実質的につながっていないことがある。

イ 援助付き雇用

援助付き雇用は、ILOによって「競争的雇用に受け入れられなかった重度障害者、もしくは障害が重すぎるため競争的雇用が断続的であったり中止されたりしてきた障害者で、仕事をこなすためには、障害故に継続したサービスが必要なものを対象とする統合された状態の下での雇用」とかなり広い範囲を含むように定義されている。しかし、一般的には、障害のある人に対するジョブコーチという人的支援者と事業主の両面支援による、実際の職場内での職場適応支援の手法という狭義の意味あいで理解されている。このように理解すると、これは、ICFの問題枠組では「環境因子」自体の質に焦点をあてた対策と言えよう。専門支援者の配置やサービス内容を変えたり、職場の上司や同僚の支援技能を高めたりすることによって、新しい「促進因子」を作り出しているからである。

この利点も大きい。

l     職場内でのかなり高度で専門的な支援が、企業の負担ではなく行える。

l     米国でも日本でも、重度障害の人の雇用可能性を拡大した実績がある。

ただし、問題もある。特に、わが国の場合についてあげると、次のようなことである。

l     職業リハビリテーションサービスは期限のあるサービスであるが、企業内で必要な企業自身による継続的支援(ナチュラルサポート)へのバトンタッチがスムーズに行きにくい。

l     精神障害など幅広く、より多くの支援を行うためジョブコーチが必要であるが、専門支援者の養成や配置上の予算の制限がある。

2 職業場面に近いところにある様々な環境因子

職業場面に関連する「環境因子」は、制度や政策以外で、物理的環境から人的環境、多様なサービスなど多岐にわたる。その具体的内容については、我々が以前に障害者雇用支援事業所での配慮事項をまとめたものから知ることができる。

さらに、最近では、ジョブコーチなどの専門的支援者も、職業場面における重要な「環境因子」である。なお、職場内でもともと行われている支援や配慮と、ジョブコーチ等が新たに構築したナチュラルサポート(石渡,1999; 小川,2000)には本質的な区別はない。それぞれの職場によって、特定の支援や配慮を同僚や上司等が行える場合もあれば、外部の専門的支援に依存する場合もある。ジョブコーチ等の外部支援者は、それ自体が一時的あるいは継続的な促進環境と位置付けられる場合(職場内教育を担う人的支援等)以外に、より継続的な職場環境の構築(ナチュラルサポートの構築、支援機器の導入等)を行うための一時的な促進環境と位置付けられる。

そこで、我々は、これらの「配慮事項」や近年の多様な支援について、「環境因子」として分類し整理した(表2-1)。

3 職業に関連する環境因子の拡がり

第T部第1章では、職業的視点からみた障害の範囲を職業範囲に限定し、医療、福祉、教育等の関連分野での問題とは区別する必要があると述べた。しかし、職業に関連する環境因子の観点からは、逆に、いわゆる労働セクターの管轄範囲を超えた社会全体との関連性を明らかにする必要がある。

職業的視点からみた障害に関わる環境因子の範囲は広い。それは、通勤、住居、情報や通信、買い物、健康などに関わる基本的社会インフラの状況が就職や職業継続に影響する他、教育場面での職業準備教育や職業訓練の状況、医療での退院支援や職場復帰支援、その他のリハビリテーションの効果など、福祉施設による就労支援や生活支援などが就労への促進になるとともに、就労を阻害する因子ともなりうるだろう。

ICFの環境因子分類は、障害に影響する環境として、生産品、用具、物理的環境、人的支援、態度、サービス・制度・政策など幅広くカバーしている。わが国では、これまで、障害のある人の雇用支援のための環境整備の社会的責務を議論する場合、企業責任や家族の役割を重視してきた。しかしながら、実際の「職業的視点からみた障害」に影響する範囲を考えると、そのような狭い範囲に社会的責務を限定する必要はない。最近では、特別支援教育や福祉などのサービスとの連携が重視されるが、現実の職業的課題から関連するサービスや制度へとたどっていくと、これまで考えられてこなかったサービスや制度との連携が必要になる。なお、このような地域におけるこれらの幅広い社会的支えの構造については、第U部で詳しく検証することとする。

第2節 環境因子と障害の関係

「職業的視点からみた障害」について第1章での構成要素の洗い出しに続いて、「環境因子」についてもICFの概念枠組に基づいて列挙することができた。これで、我々の検討の対象についてはかなり明確にできたことになる。

これらを踏まえて、効果的な支援のあり方は、どのようにすれば明らかにできるだろうか。ICFは、これについて、特筆すべき方針を示している。それは、効果的な支援のあり方とは、「環境因子」による障害への関連の問題として、実証的に検討する課題であるというのである。少し長いが、以下に引用する。

“この図式では,ある特定の領域における個人の生活機能は健康状態と背景因子(すなわち,環境因子と個人因子)との間の,相互作用あるいは複合的な関係とみなされる。これらの各要素の間にはダイナミックな相互関係が存在するため,1つの要素に介入するとその他の1つまたは複数の要素を変化させる可能性がある。これらの相互関係は特定のものであり,必ずしも常に予測可能な一対一の関係ではない。相互作用は双方向性である。すなわち障害の結果により,健康状態それ自体が変化することすらある。機能障害から能力の制限を推定したり,活動制限から参加の制約を推定することは,しばしば理にかなったことと思われるかもしれない。しかし,これらの構成要素に関するデータを別々に収集し,その後にそれらの間の関連や因果関係について研究することが重要である。”(ICF序論)

この観点からの具体的・実証的な検討は、第U部の第1章で行うこととして、この節では、まず、そのための障害と環境因子の関係についての基本的な概念整理を行うこととする。つまり、「医学モデル」と「社会モデル」の統合における「環境因子」の意義、及び、効果が検証可能な環境因子の範囲とその方法について検討する。

1 「医学モデル」と「社会モデル」の統合に向けて

1980年のICIDHにおいては、障害は生物学的な変異や異常を基礎とするものであり、保健医療福祉セクターの担当においてリハビリテーションを通して社会参加を達成するという「医学モデル」の立場をとっていた。しかし、これは、人権的な視点からも、科学的な視点からも不十分であることが明らかとなっていた。

人権的な視点に関しては、北米や北欧など、障害についてICIDHとは異なる概念枠組みをもっている国や地域があり、また、当事者運動においてもICIDHへの不満がある中、そのような立場を含めた合意形成が重要な課題となった。この概念枠組みは「社会モデル」として、障害を個性として認識し、人権問題として社会側の改善により、障害がある人の社会参加を達成するべきであるとする立場である。この社会モデルに基づいた障害モデルは当事者団体である障害者インターナショナル(DPI)が提案したDPIモデルが典型的である。医学モデルと社会モデルの統合を図ろうとしたモデルとしては「カナダモデル」があった。その特徴は、「環境因子」による「障害」への影響である。(以上の経緯については、佐藤,1992を参照)また科学的な視点でも健康や障害の領域や要素は幅広く、その相互関係も複雑であり、科学的に厳密な共通言語という点でも、1980年のICIDHは不完全であることが明らかとなっていた(Üstün等、2003)。

ICFにおいては、その特徴をより徹底して取り入れており、全ての生活機能と障害は多かれ少なかれ個人と環境の相互作用であるとしている。医学モデルと社会モデルについては、あくまでも理論の問題であり、その妥当性については、実証的に検証されるべき問題であるとしている。

なお、我々は、この考えを検討した結果、実は、この「個人と環境の相互作用モデル」だけでは、「医学モデル」と「社会モデル」の統合の条件を満たさないことを明らかにした。これについては、第3節で述べることとする。

2 効果を検証可能な範囲の環境因子

ICFの環境因子では、リハビリテーションを含め、職場や地域の環境整備、人的支援や支援機器などの全ての支援が、障害に実質的に影響するとする。このような影響を検証することにより、効果的な支援のあり方を検討できる可能性がある。前節で列挙した「環境因子」の中では、国や地域レベルでの比較しかできない「制度・政策」については国際調査で明らかにする必要があるが、その他の様々な「環境因子」の効果については、国内の障害者雇用事業所等におけるデータをもとに、検証できるであろう。

政策や制度の面からは、例えば、雇用率制度及び差別禁止法制のそれぞれの制度のもとにおける障害のある人の失業率等の比較が行われる必要がある。ただし、現在は、両者とも十分な安定期に至っていない。さらに残念なことに、代表的な差別禁止法制のある国である米国では、わが国と比較可能な障害者雇用統計がない(障害者職業総合センター、2001。このようなことから、政策や制度の比較については、今後の課題としたい。ただし、将来のために、いくつかの事項を指摘することとする。

わが国においても、米国で開発された援助付き雇用モデルが導入されて重度障害者雇用が進展したり、米国の連邦政府内では障害がある人の雇用に数値目標を設けるようになっていたり、さらに、雇用率制度と合理的配慮の義務化が同時に実施される国(ドイツなど)がある(障害者職業総合センター、2001)など、それぞれの制度が現実には融合してきている。また、両制度の効果を比較する際には、制度の強制力や経済的インセンティブの有無も考慮しなければならないであろう。さらに、雇用率制度は企業の負担の許容度が大きな要因となるため不景気になると効果が減少することが予測されることや、差別禁止法制は即効性のある結果が出にくいが企業に負担のない効率的な環境整備方法の開発・普及にはつながりやすい、などのそれぞれの政策の前提事項についても考察する必要があるだろう。

3 環境因子の効果の検証

環境因子による障害への影響の仕方は理論的には多様であり、その全てを最初から検討することは困難と考えられた。そこで我々は、環境因子は第1章で検討した障害の要素間の関係のパターンに影響するという見方を作業仮説としてとることとした。このような見方によって、支援方法についての情報を簡単に表現することが可能である。

つまり、ある支援方法を環境因子としてだけ独立に捉えるのではなく、他の障害の構成要素の関係性への影響の観点から捉えるのである。このことは、特定の環境因子が促進因子であるか阻害因子であるかは、障害種類等によって左右され、その評価基準は「本人の視点」であるという特徴からも妥当であろう。例えば、視覚障害者のための凹凸舗装がなされていない場所で歩道の縁石をカットして段差を無くすことは、車椅子使用者にとっては促進因子であるが、視覚障害者にとっては阻害因子である。

このように支援方法の情報を定義することによって、その支援方法の妥当性を実証的に検証する方法も定式化が可能である。つまり、その支援方法の存在によって、ある関係性によい影響があればそれは促進因子であるし、悪い影響があればそれは阻害因子である。これは、その名称や支援専門家の意見にはかかわらない客観的な基準である。つまり、「支援機器」とされていても、それが実際に効果があるかは実証が必要である。これは、専門サービスについても同様である。

具体的には、例えば、ある「支援方法」が特定の「機能障害」による「活動制限」に効果があるかどうかは、実際の支援事例を体系的に収集し、次のような表にまとめることで、簡単に統計的に検証することが可能である。


このようなことは当然のことのように思えるが、第V部第1章で示すように支援方法のデータベース化を行ってみると、驚くべきことに、障害のある人の雇用支援や職業リハビリテーションの分野では、このような実証的な検証を踏まえた支援方法は皆無に等しいことが明らかとなった。なお、医療分野では、このような方法は、「根拠に基づく医療(EBM)」(Sackett,1997)と呼ばれ、従来の治療法の見直しに近年大きな影響を及ぼしている。

また、職場内外で企業が行っている環境整備や配慮についても、同様の方法で検証することが重要である。有効でない支援方法を行った場合、それは障害のある人の雇用のコスト増につながり、ひいては、障害のある人の雇用の障壁となりうるからである。また、障害者雇用に係る各種助成金の効果的な運用のためにも不可欠であろう。このような方法で、実際に、障害者雇用事業所内の環境整備や配慮の効果を検証した結果については、第U部第4章で述べる。

第3節 標準的な環境整備のあり方

ICFの「医学モデル」と「社会モデル」の統合は、実は、単なる「個人と環境の相互作用」に基づく実証的アプローチだけでは実現しない場合がある。

例えば、知的障害のある人の就職後の技能習得には「時間をかけた体系的な指導方法」が有効であるとする。ある知的障害のある人が試行的な雇用の機会をえた際、その会社では、「時間をかけた体系的な指導方法」をやる時間的な余裕もなければノウハウもなかった。このようなケースでは、10年前にはおそらく、この知的障害のある人の能力が低い、と結論付けられたであろう。しかし、現在なら、むしろその会社側に問題があるとみる障害者雇用事業所の関係者も多いであろう。あるいは、これについては、専門支援者は、ジョブコーチ支援が適切だという結論を下すかもしれない。

このように、単なる「個人と環境の相互作用」という考えだけでは、同じ問題状況が、様々な視点によって、障害のある人の個人の問題となったり、企業側の問題となったり、あるいは、社会的支援の課題となったりする問題が残る。

このようなことから、ICFの「医学モデル」と「社会モデル」の統合の要となる概念は、単なる「個人と環境の相互作用」というものではなく、ICFにおいて「能力の評価」と関連して言及されている「標準的環境」という概念であるといえる。この概念を明確化することによってはじめて、関係者のコンセンサスとしての環境整備ガイドラインや、公正な能力評価の前提事項の確認が可能となるのである。

1 環境整備のガイドラインとしての2つの「標準的環境」

ICFの「標準的環境」という概念は、医学モデルと社会モデルの統合の要である。つまり、「能力と実行状況のギャップは現在の環境と画一的な環境の差を反映し、したがって、実行状況を改善するために個人の環境に対して何をなすべきかについての有用な手引きを提供する。」として、社会側の環境整備の目標を示すものであり、同時に、正当な能力評価をも可能とするものである。

しかし、特定の環境が、全ての人にとって、最高の生活機能レベルを示すためのものとはならないことがあることは明らかである。先述のように、歩道の段差は、車いす使用者にとって阻害因子であるが、逆に、歩道の段差がないことは視覚障害のある人の歩行の手がかりを失わせる阻害因子となる。真の意味でのユニバーサルデザイン、例えば、歩道の段差がなく点字ブロックがあるなど、という解決方法を目指すべきではあろうが、その一方で、各人にとってカスタム化された環境の方が、最高の生活機能レベルの達成のためには有効である場合も多い。

そこで、我々は、WHOICFの標準環境として想定している全ての場合にあてはまる「画一的な標準環境」という意味での標準環境に加えて、当該ケースにとって最も合理的と考えられる「個別的な標準環境」という考えを提案する。

(1)現在の「標準的環境」の概念の問題点

ICFに記されている「標準的環境」の概念はいまだ抽象的であり、しかも、2つの問題意識が混乱している。つまり、国際統計を想定した「能力」の評価のための標準化された環境が必要であるという問題意識と、「障害者の機会均等化に関する標準規則(UN Department of Public Information,1994)」を想定した障害のある人の人権を尊重する立場からの環境の標準化の問題意識である。

しかし、WHOが国際比較用に想定している「支援なしでの能力」とは、「ある領域についてある時点で達成することができる最高の生活機能レベル」とは言えない。多くの障害のある人は適切な環境整備や社会的支援を前提にしてはじめて最高の生活機能レベルを示すことができるからである。このような問題点は、既に、ICFの「環境因子」タスクフォース議長であったHurst自身から、障害者権利運動とWHOの新たな対立の火種を作りだすものであると指摘されている(Hurst, 2003)。

(2)「個別的な標準環境」の提案

「能力」の第3評価点で表される「支援ありでの能力」こそが「ある領域についてある時点で達成することができる最高の生活機能レベル」という条件を満たす。「能力」の評価点に、「支援あり」と「支援なし」があるように、標準環境についても「支援あり」と「支援なし」の場合を想定することが、能力評価の考えとも整合性がある。能力の比較の目的用の「画一的な標準環境」とは別に、障害のある人の機会均等の目的のためには「個別的な標準環境」を想定することが必要である。

2 公正な能力評価の前提

障害のある人への様々な社会的取り組みと同時に、その結果である障害のある人の能力の正当な評価を行う必要がある。つまり、障害のある人に対して企業が配慮を行った結果、障害のない人と同様の職業成績を示すなら、その成績をその人の本来の能力とみる、ということである。障害のある人への環境整備をした結果が、いわば「ハンデ」を含んだ成績として扱われたのでは、そもそもの機会均等の趣旨が消えてしまう。これは第1章でも述べた、「活動」における「能力」と「実行状況」の区別の、職業場面での現実的な問題である。これは、職業能力の評価や、障害のある人の賃金や処遇のあり方に直接関係するからである。

(1)職業能力評価の基準

ICFにおける「能力」評価は、能力を最大に発揮できるような環境を前提として行うことになっている。しかし、現在のわが国の多くの職業能力評価の基準は、現実の職場環境である。決して、「障害のある人が能力を最大限に発揮できるように配慮された」職場環境ではない。専門家から素人まで「現実の職場では、こんな作業能力ではやっていけない。こんな対人関係能力ではやっていけない。」と、常に現実の職場環境を基準にすることが一般の感覚であろう。

しかし、現在、多くの職場で障害のある人の雇用についてのノウハウが蓄積され、ジョブコーチ等の専門家による支援が受けられるような状況では、このような古い常識での「現実の職場環境」を想定すると、その評価が、実質上、障害のある人の過小評価につながる危険性は確かに高い。実際、既存の職業評価では低い結果となる「重度障害」のある人が実際の職場で雇用されている場合が稀ではないのである(資料シリーズNo.27参照)。

したがって、企業側の環境整備の支援も行うことを前提として、そのような職場環境を想定して職業能力評価を行う、ということが実際的には必要になると考えられる。この意味で、障害のある人を雇用している事業所の15年以上前のデータを元にして作成されている、「障害者職業レディネスチェックリスト(ERCD)」(雇用職業総合研究所,1989)や、最近数年間のジョブコーチ支援の効果を知らない福祉、教育、医療等の専門家の公式・非公式の職業能力評価の信頼性については、大きな疑問があると考えられる。

(2)事業所での能力の評価

障害のある人の賃金や処遇にも影響すると思われる、職場環境整備、配慮、支援を前提とした職業能力の評価の問題は、以上の議論でも明らかなように、議論の核心部分であり、賃金や処遇に関わる能力評価はそのような環境整備を前提として行うべきものであるということには、もはや議論の余地は少ない。これを蒸し返すことは、ICIDH以降の20年間の、障害のある人の人権をめぐる厳しい議論を最初からやり直すことになる。現在の問題は、そこから一歩進んで、障害のある人に対してどの程度まで環境整備を行うべきか、という標準的な環境整備の具体的内容の明確化にある。

3 合理的配慮との関係

障害者雇用政策における社会的コンセンサスとして位置付けられつつある「合理的配慮」という概念は、環境整備の範囲が企業の責任範囲に限定されてはいるが、具体的内容や、企業側の責任範囲の考えかたなどで、ICFの「標準環境」の具体的検討の参考にできる。しかも、その内容は「画一的」ではなく「個別的」なものである。

(1)合理的配慮の内容

「合理的配慮」(Reasonable Accommodation;「妥当な環境整備」、「適切な配慮」、「適切な設備(配慮)」などとも訳されている。)は、1990年に「障害をもつアメリカ人法(ADA)」に取り入れられ、その後、EU平等取扱い指令(Council Directive,2000)にも含まれるなど、障害者雇用の重要な概念として国際的にも定着しつつある。現在検討中の国連障害者権利条約草案(Bangkok Draft,2003)にも、障害者の労働の権利の一つとして募集と雇用の過程及び職場全般における「合理的配慮」が挙げられており、その欠如は「障害を理由とした差別」の一つであるとみなされている。

「合理的配慮」の具体的内容としては、ADAの「雇用」の章では、(A)従業員によって使用される現存する施設を障害者に容易に利用できかつ使用可能にすること、(B)職務再設計、パートタイムや勤務日程の変更、空き職位への配置転換、機器や装置の獲得や改造、試験・訓練教材・ポリシーの適切な調整や変更、資格のある朗読者や(手話)通訳者の提供、その他の障害者のための調整、を含むものとされている。

また「合理的配慮」は、障害のある人の権利であり、そのコストは企業が負担する。単に企業側のコストパフォーマンスの考えで支援の有無が決定されてはならないし、職場環境整備、配慮、支援を「ハンデ」とみて能力を過小評価してはならない。また、支援のコストを賃金から幾分でも差し引くことなども、差別である。ただし、無条件に、これらの環境整備が企業に義務付けられているのではなく、企業にとって著しい困難又は出費を伴うものではないという条件がある。そして、このような個人と社会の調整の手順としては、判例の積み重ねでその範囲を明らかにしている。

このような具体的な規定は、ICFの能力評価と標準環境整備の実際的検討にも参考にすることができると思われ、第U部第4章において、さらに詳細に検討することとする。

(2)企業責任と地域の支援との関係

前項で検討した「合理的配慮」は、障害のある人の環境整備の範囲の中の企業責任による分を明確化しているだけであることにも注意したい。ICFの標準的環境で想定されている範囲は地域等の支援を含めたより幅広いものであり、「合理的配慮」はそのうちの企業責任分という整理ができるだろう。このような整理によって、「個別的な標準環境」について、地域の様々な支援サービスと、企業責任の役割分担についての基本的方針を明確にできる可能性がある。

ア 企業内で比較的独立した環境整備

重度の障害がある人以外は、通常、職業リハビリテーションサービスを受けず、直接企業に就職する。しかし、現在のわが国では、これらの障害者の職場環境整備は標準化されているわけではなく、職場での障害のある人の問題発生にも企業によってばらつきがあることを我々は明らかにしている(資料シリーズNo.27)。例えば、米国では聴覚障害がある人のための「合理的配慮」に含まれている手話通訳者の配置については、わが国では整備されていない企業も多く、それらの整備状況如何によって、職場内のコミュニケーションや人間関係、職務遂行上の報告や連絡における問題の発生状況にも企業間格差が生じている。企業責任で行われる「合理的配慮」の範囲を標準として明確にしておくことは、職業リハビリテーション専門家が関与しない場合でも一定の環境整備が保障されるため、障害者側にも企業側にも益するところは大きいと考えられる。

イ 専門サービスを活用した企業内の環境整備

ADA施行後の米国において、企業の合理的配慮の範囲内における援助では一般雇用の対象となり得ないと考えられた障害者でも、援助付き雇用によって競争的一般雇用の対象となる例や、そのような専門的支援の結果、企業内でも過大な負担を強いられることなく、重度障害者への企業責任としての支援を継続できる例(ナチュラルサポート)も報告(石渡,1999;小川,2000)されている。このように、専門職の関与を前提とすれば、必ずしも企業負担を増加させることなく、「合理的配慮」の範囲を広げることが可能となることも考えられる。

ウ 地域の社会資源との役割分担による環境整備

わが国で重度障害者を雇用している企業では、仕事の場面だけでなく、就職後の教育訓練や生活面での支援を行っている例も少なくないことも我々は明らかにしている(資料シリーズNo.27)。これは、就職前に、基礎的な職業準備性が確立されるに至らなかったことや、知的障害や精神障害等の場合では、日常生活面での問題が仕事上の問題に波及する場合も大きいためである(松為,2001)。「合理的配慮」の標準化を進めることは、こういう場合、企業責任の範囲を明確化して、むしろ、地域の教育や福祉の機関の支援との役割分担を進めやすくする効果もあると考えられる。

雇用率制度の下では、例えばわが国の場合、重度障害者についてダブルカウント制が採用されるなど、重度障害者も比較的一般雇用の対象になりやすいが、「合理的配慮」が前提となると、社会資源の活用を前提としなければ、重度障害者の過大な負担が強調されてしまい、雇用の阻害要因となる可能性もある。こうした場合、広く地域の社会資源の活用も含めて、企業責任の範囲となる「合理的配慮」の範囲を明確化すれば、現在よりも企業負担を軽減しながら重度障害者の雇用を進めることも可能になると考えられる。

まとめ

ICFの改定の大きなポイントである「社会モデル」の観点を踏まえることにより、「職業的視点からみた障害」について多くの現実的な課題を整理できることが明らかとなった。このような視点から、より具体的な職場環境整備や地域の支援についての検討が求められており、それについては第U部で検討することとする。

しかし、「職業的視点からみた障害」の概念整理について、未だ残されている問題がある。それは、職種によって障害状況が変化するなどの個別性の問題である。これは、ICFに新たに導入された「個人因子」も関わる重要な問題であるので、第T部の最終章では、その検討を行うこととする。

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