事例1 関西福祉系大学救援グループ
事例2 B大学の場合
ボランティア先進国といわれるイギリスの例を見てみよう。第一の例として、英国ボランティアセンターがあり、ボランティア 活動の情報、文献を集めて、データベースと図書館の運営、ボランティア活動のリーダーのための研修プログラムなどを行って いる。また、第二の例の一つであるエイジコンサーンでは、団体の収入を寄付金や賛助金、団体の行う営利事業から得ている。 そして、有給スタッフとボランティアが協力して、運動を展開している。有給スタッフは、プロのワーカーとしてその仕事に携 わり、その組織と事業を一層意義のあるものに発展させていくことが可能になる。このことより、さまざまな動機を持って参加 するボランティアに、適切なガイダンスを行い、より質の高い経験へと、成長を促す機能が不可欠といえる。
(1) 群集事故の起こり方を知る。
(2) どの場所で起こりやすく、誰が犠牲になりやすいかを知る。
(3) 有効な群集事故対策を立てる。
これらはいずれも事前対応は可能であるが、事後対応できるものは(3)のうちの一部に過ぎない。 雑踏する会場やその周辺にいる人々は、自分の周りのごく限られた空間で起こっていることしか認識できないという情報過疎の状態に置かれ、最も混雑した場所から離れた所にいる雑踏警備の担当の人たちにとっても、最過密な位置で一体何が起ころうとしているのか、あるいは現に起こっているのかをすぐに知ることは不可能である。 したがって、大規模なイベントの開催に当たっては、いかに事前準備が大切かが理解できる。
今回の花火大会は、会場を従来までの市役所周辺から大蔵海岸へと変更した。これは、十分な保安距離を取れなくなったことや、住民に不便をかけることやゴミなどが道路に放置されるなどの問題があったためである。しかし、会場変更に伴う新たな警備上の問題点を十分に協議しないまま事故当日を迎えるに至った。そこで得られる提言は次のとおりである。
提言1:新しいイベント会場の設定は、新しい事故環境をもたらす。したがって、従来になかった新しい問題点を洗い出して、会場設定が妥当かどうかを関係者間で慎重に検討しなければならない。検討項目は、来場者予定数、会場の広さ、見晴らしなどの周辺環境、通路の許容通過量、迂回路の妥当性、交通渋滞、夜店の規模と位置、暴走族対策などである。
花火の場合、よく見えるところでは、たとえ歩いている最中であっても、花火が上がれば見物客は足を止めて眺めるため、群衆中により圧力が大きくなるところが出てくることになる。今回の場合も朝霧歩道橋上の南端は絶好の花火の見物場所で、加えて夜店が歩道橋直下から出店していたため、群集が容易に歩道橋から会場に降りることができず滞留が発生し、いわゆるボトルネックの状態になっていた。朝霧歩道橋は夏の海水浴客のピーク時の通行量を考えた設計であったため、花火大会の開催に当たっては、その事情を熟知する歩道橋を管理する関係部局から積極的な助言が得られるようなシステムが必要であろう。
(2) 来場者の制限
群集の滞留が予想される場合、進入する来場者を物理的に制御できるようにする必要がある。警備員がロープで遮断することは、群集の場合逆に危険であり、また効果が疑問であることがわかっている。簡易ゲートなどの付帯施設を設置することが望ましいが、年に一度の花火大会のために、そのような施設を設置することが行政にとって合理的であるとは言えない。そこで、来場者を合理的かつ有効に制限するには、警察官のような制服・制帽を着用した人員により、バリケードなどの資材を有効に活用した組織的な分断が必要であると考える。
(3) 適切な迂回路の条件
迂回路として有効に活用されるための条件は、会場までの距離が適度であり、かつ花火を見るために立ち止まらないような工夫をし、さらには事前に迂回路があることや駅の出入り口に看板を設置するとともに、誘導員を配置するようなことが必要である。今回は朝霧駅から会場東交差点付近まで約1,200メートルもあり、かつ迂回路があることを事前に来場予定者に伝えていなかった。
(4) 円滑な救命活動
事前に救急車の出動を想定した対応策がないと、事故が起こって救急・救命活動するときに、救急車が迅速に現場に近づけないなどの問題が起こる。今回の花火会場の場合では、国道28号を一般車両通行止めの措置を実施し、国道2号に迂回させる必要があったのではないかと考える。
(5) 夜店の位置がポイント
夜店の位置については、明石警察署が暴走族対策を主眼にするあまり、朝霧歩道橋の南端を取り囲む形にしてしまった。この階段下に18メートルの幅の海岸への開口部が設けられたものの、夜店の配置が歩道橋から会場への円滑な流出を阻害した。
(6) 雑踏警備より重視した暴走族対策
朝霧歩道橋を含む会場周辺の雑踏警備はわずかに8人で、警察は雑踏警備を重視していなかったことがわかる。警察の警備の主力を暴走族対策に置いたことは諸般の事情から理解できるが、新しい会場における雑踏警備を考えると、雑踏警備の担当にもそれなりの人数を割り振る必要があったと考える。
第2節 従来通りの会場を使ったイベント計画
従来通りの会場で花火大会を開催した場合に、問題が起こらなかったかどうかについても考察する必要があり、次のような提言が得られる。
提言2:従来通りの会場でイベントを継続する場合でも、これまでに経験しなかった新しいタイプの事故が発生する可能性を考える必要がある。
今回花火大会が行われた大蔵海岸では平成10(1998)年に初めて花火大会が開催されたが、当時は今回事故が発生した朝霧歩道橋はなかったのである。このような会場を取り巻く環境も変化する可能性があることを考えると、従来通りの会場であるからといって、雑踏警備計画をおろそかにしてはいけないことがわかる。
さらに環境変化の事例として指摘できるのは、同じ会場で開催されたカウントダウンイベントと今回の花火大会の場合である。カウントダウンイベントは真冬の真夜中に行われたために家族連れが少なく、若い男女が多いと推定されている。したがって、群集事故の犠牲になる可能性のある弱者の数が少なく、しかも人がひしめき合っている状態であっても、防寒衣を着ているために、群集密度は夏の薄着の場合に比べて小さくなり、胸部圧迫の圧力も小さくなっていた。今回の夏まつりの花火大会では、当日の写真等の解析から、来場者は家族連れが多かったと推定されている。さらに真夏のイベントであるから全員薄着である。子供や高齢者という弱者が多かったために彼らが真っ先に群集事故の犠牲になったのである。
このように、同じ会場でのイベントであっても、季節や時間帯によって来場者の年齢構成が異なり、これが同じ程度の混雑であっても、人身事故につながったりそうでなかったりする原因となることも十分考慮しなければならないだろう。
生命を救うため、ただちに処置を必要とするもの。窒息、多量の出血、ショックの危険のあるもの。
第二;待機的治療群(中等症群)
第三;保留群(軽症群)
上記以外の軽易な傷病で、ほとんどの専門医の治療を必要としないもの。
第四;死亡群
すでに死亡しているもの、又は明らかに即死状態であり、心肺蘇生をしても蘇生可能性のないもの。
医師以外の場合;以下の3説がある。1.搬送順位選択説 2.拠点病院体制確立説 3.形式説
災害時では医師を含む多くの医療職の不足が考えられるため、医師はその専門技能を生かす部門で働くことが医療資源の合理的活用活の観点において重要であり、トリアージは医師だけに許されるというのは現実的でない、とする見解であ る。
トリアージは原則として医師が実施することを前提としながらも、拠点病院にあらかじめトリアージ責任者を置き、そのトリアージ責任者を中心として、日ごろから適正なトリアージの実施に向けて救急救命士、看護士を実施補助者として教育し、指示連絡システムのもとにトリアージを実施する。また、その実施及び法的責任を、トリアージ責任者に出来る限り集中させる。トリアージ責任者については一定の認定制度が必要かどうかを検討する必要がある。
トリアージは診療行為であり、医師のみが行なわなければならない、とする説。
(1) 除染を行う被災者の優先順位の決定(一次トリアージ)
化学災害時のウォームゾーン内で行われるトリアージは、他の一般的な災害時に行われる多数傷病者 に対するトリアージとは異なり、除染を行う優先順位の決定である。また、化学災害時では防護服を 着用した状態で、傷病者の観察をしなければならない。災害現場で行われるトリアージの手法として 簡便なものでSTART法がある。Blanchテスト(爪床再灌流時間)は施行可能と思われるが、しかし防護 服着用下では傷病者との会話や正確な呼吸数を把握することが困難であり、脈拍を触知することは不 可能で、防護服着用下ではトリアージの精度が低くなると考えられる。この場所における患者重傷度 の評価は、
(2) 一次救命処置
一次トリアージポストで行うべき救命処置は、気道確保(気管内挿管)、酸素投与、人工呼吸のみで ある。
(3) gross (dry) decontamination(乾性除染)
gross (dry) decontaminationの方法は
ウォームゾーンで行われる除染は、皮膚の露出部分に付着している液体の除去と衣服の交換である が、これで約85~95%の化学物質が除去されるとされている。脱衣・衣服裁断によって発生する問題 として、プライバシーの侵害、心理的負担、貴重品の紛失などが考えられ、脱衣の指示には十分な説 明が必要である。
(4) 原因物質の鑑別と拮抗剤の投与
被災者の症状から、原因物質の鑑別をすすめる必要がある。化学兵器テロの場合、想定される原因物 質の種類は、神経剤(サリン、ソマン、タブン、VX)、シアン化合物、窒息剤(ホスゲン、塩素ガ ス)、びらん剤(マスタードガス)、催涙ガスなどである。ほとんどは対症療法だが、症状で縮瞳、 頻呼吸、発汗著明など神経剤の使用が考えられる場合、一次救命処置よりも硫酸アトロピン投与を優 先させたほうがよい。また一刻も早い解毒剤の投与が必要なシアン化合物など、早期に鑑別して、適 切な拮抗剤を投与することが有効な治療となりうるものがある。
人的被害は、死者5,502名、行方不明者2名、負傷者4万1,500余名、住宅被害は、全壊が約10万棟、半 壊が約10万7,000棟で、最近建てられた新耐震基準に適合した住宅は構法の違いによらず、被害が少な かった。地震発生直後から各地域で同時多発的に火災が発生し、瀬戸内海沿岸地域を中心に大規模な 液状化も発生した。公共土木施設関係被害については、直轄管理河川4河川、府県・市町村長管理河川 ではすでに応急工事を完了し、本復旧工事に着手した。2次的な土砂災害防止対策を緊急的に実施す る必要のある個所については、避難体制を強化するとともに、土砂災害防止施設の整備等を実施して いる。
各被害金額の統計は約9兆6,000億円となっており、マクロ経済への影響も著しい。
5時55分 大阪管区気象台が関係行政機関等に地震情報を送付。
6時4分 気象庁本部が国土庁など関係省庁などに気象情報同報装置により地震情報を送付。
「平成7年(1995年)兵庫県南部地震非常災害対策本部」を設置。
2次災害防止対策として、地震計とGPS観測装置、GPS機動連続観測点を設置し、得られたデータ
を防災関係機関に提供することで余震に対する監視等を行った。
土砂災害危険個所に対しては、以下のことを実施している。
(1)国と地方公共団体とが適切に役割分担し、協同して、地域住民の意向を尊重しながら、1)生活の再建、2)経済の復興、3)地震等の災害に対して将来にわたって安全な地域づくりを緊急に推進すること
(2)これらの活動を通して活力ある関西圏の再生を実現すること
が定められている。政府は、この基本理念に基づき、必要な法律を整備するとともに、各種助成制度等の創設等を実施した。
税制面においては、被災地の納税者の申告・納付期限の延長等がこうじられ、また、震災損失の繰戻しによる法人税の還付等を行うために法律等を整備した。さらに、平成7年度補正予算において、復旧・復興施策を可能な限りもりこむこととし、1兆4,000億円を上回る経費を計上した。
復興に関わる政府組織として、総理府に「阪神・淡路復興委員会」、「阪神・淡路復興対策本部」を設置し、緊急に検討すべき7つの特定課題として、1)復興計画の策定、2)復興住宅の供給、3)がれき等の処理、4)まちづくりの当面の方策、5)神戸港の早期復興、6)経済復興と雇用、7)健康・医療・福祉について提言を行い、緊急を要する1),2),3)については、平成7年度補正予算において重点事項とするとともに早急な実施を行うこととした。また、政府の当面こうずべき措置として16項目にわたる施策をとりまとめた。
復興計画の策定や実施、あらたなまちづくりや経済の復興は、地元地方公共団体が住民の意向を尊重し、地元の熱意をくみとりつつおこなわれているものであり、県や市町の役割は非常に大きい。政府としても、県・市町と十分に連携をはかりつつ、阪神・淡路復興対策本部が中心となって、これらの施策を積極に支援していきたいと考えている。