PTSDという言葉が誕生する前は、外傷性神経症、戦時神経症、頭部外傷後遺症、驚愕神経症などと して扱われていたが、1978年に米国で「ベトナム帰還兵におけるストレス症候群」が刊行され、これ を契機にPTSDの研究は進んだ。
A、通常の人が体験する範囲を越えた出来事で、殆どすべての人に著しい苦痛となるものを体験 したこと
B、外傷的事件の持続的再体験(想起・悪夢・解離的エヒソードなど)
C、類似状況の持続的な回避(心因性健忘も含む)または反応性の鈍麻(興味の減退、疎遠感、 感情の収縮など)
D、覚醒の亢進症状(睡眠障害、易刺激性、集中困難、驚愕反応など)
E、障害の持続(B、C、Dの症状)は少なくとも1ヶ月
また、同診断基準では子供における症状として、「心的外傷の主題あるいは側面が表現される遊び を繰り返す、トイレのしつけや言語のような、最近獲得した発達的技能を失う。」といったことが述 べられている。
1994年のDSM-IVではIII-Rに加えて、症状の持続期間が3ヶ月未満の場合を「急性」に、3ヶ月以上の 場合を「慢性」に分類し、さらに、症状の始まりがストレス要因から少なくとも6ヶ月経過している 場合は「発症遅延」と特定することが示された。
今後は明確な診断基準による診断群を評価した研究結果を他の外傷性ストレッサーを契機に発生す るPTSDの研究成果と比較検討していかなければならない。
一方、同意なく行われた治療行為や同意の範囲を超えて行われた治療行為は「専断的治療行為」と呼 ばれ、たとえ病気が治ったとしても、民事・刑事責任を追及されうるというのが一般的な考えであ る。
本論文では将来予想されるバイオテロリズム由来の感染症に関する初期対応、病原体の識別、および麻酔科および集中治療的観点から見た生物兵器による感染者のケアについて論じる。
炭疽菌はグラム陰性桿菌感染症で感染経路によって病態が異なる。起因菌の吸入による肺炭疽、経口摂取による腸炭疽、接触による皮膚炭疽がある。
肺炭疽は3つの中で最も重症であり、ウイルス性上軌道感染症に似た短期間の前駆症状で発症する。一時的に症状が軽快する場合もあるが2~4日後には低酸素血症、呼吸困難、髄膜炎などに陥る。腸炭疽は重度の腹部全域に及ぶ腹痛で発症し発熱、肺血症の症状をきたす。皮膚炭疽は無痛性の皮疹が水疱性に変化し、陥凹性の痂皮に変化する経過をとる。肺炭疽と異なり適切な抗生物質投与により良好な治療成績が得られる。
毒力、感染力ともに強化された改造型天然痘ウイルスが保管されていると報告されている。天然痘は感染力が強く、患者の口咽頭由来の飛沫感染、衣服、寝具を介する直接接触によって伝染する。
媒介者としてのノミが必要ないエアロゾル投与によって生物兵器として使用される可能性がある。病原体の吸入によって感染する肺ペストは、死亡率が25%と報告されている。
ペスト菌感染症よりも軽症で死亡率は低いが、未診断、未治療の患者では再燃をきたす場合がある。
芽胞形成性のグラム陽性桿菌であるC.botulinumが産生する無色、無味無臭の毒素であり、最も毒性が強い。神経筋接合部でのAchの放出を非可逆的に阻害する。
自然界では主として節足動物が媒介するが感染力が高く、エアルゾル化することによって生物兵器として使用され得る。