救急医療お知恵拝借:

餅で窒息しかけた時に掃除機は有効?

(990110、eml-9: 097)


質問:先日あるテレビ番組で、お餅をのどに詰まらせて窒息しかけたお年寄りの 口の中へ掃除機をノズルを入れ、お餅を吸引して除去でき た例を紹介していました。ものをのどに詰まらせた場合の 処置法としては、掃除機を使用するのが1番よいのですか。 危険性などはないのでしょうか。


回答A:掃除機による異物の除去は世界的に認められた方法では なく、むやみにはお勧めできません。日本で採用されている救急処置の手順は、アメリカ心臓病協会(AHA)のテキストに沿って決められています。AHAのテキストに記載されている気道異物の除去方法は、ハイムリック法が中心となっています。実際の施行方法については、以下のように書かれています。

(参考文献:古賀俊彦、福山尚哉、基礎的救命法、(株)マルコ出版部、4-16)

○傷病者が立位や座位の場合のハイムリック法

  • 傷病者の背後に立ち、傷病者の脇に手を回す。
  • 片手で拳を作る
  • 拳は親指側を患者の腹部に押しつける。拳は剣状突起の十分下に、臍よりやや上方に置く。
  • もう片手で拳をつかみ、傷病者の腹部の内部方向へ押し、次に上方に素早く引き上げる。
  • 異物が吐き出されるか、傷病者が意識消失するまで突き上げる動作を続ける。
  • 各々の突き上げ動作は一つ一つ間を置いて、確実に行う。

○傷病者が臥位の場合のハイムリック法のやり方
 (詳細、省略)

○自分で行うハイムリック法
 (詳細、省略)

○傷病者が立位または座位での胸部圧迫異物除去法
 (詳細、省略)

○用手異物除去法
 (詳細、省略)

 掃除機で吸引して異物除去に成功した例が時々報道されますが、ハイムリック法を試みてうまくゆかず、掃除機を用いたのでしょうか。わが国ではハイムリック法が行える一般市民はかなり少なく、まずはハイムリック法の普及が先決ではないでしょうか。


回答B:お餅はわが国では非常に多い窒息の原因なのですが、お 餅の場合、どの家庭にでもある掃除機で吸引する方法は、わが国で提唱された有用な方法です。現に消防本部や医師による救急処置の指導においても、この方法が取り上げられています。また異物除去に用いる専用ノズルも市販されています。

 掃除機接続用吸引ノズル(IMG吸引ノズル)
 総発売元 アイ・エム・ジーホスピタル サプライ株式会社
      (TEL 03−3812−4221、FAX 03−3812−4774)
 製造元 (株)イマムラ
 定 価  2400円

 IMG吸引ノズル(商品名)パンフレットから引用

 使用方法(相消式):パンフには図解あり

  1. 電気掃除機と吸引ノズルを用意する。
  2. 口を開けて、ノズルを口の中に5pくらい入れる(球状は掃除機側)
  3. ノズルを入れたら口と鼻を手でふさぎ、掃除機のスイッチを約2秒〜3 秒入れてスイッチを切る。
  4. 1回で取れない場合は、2〜3回繰り返す。
  5. それでも取れない場合は、直接ノズルを異物に近づけて吸引する。

 ☆注意:スイッチを長く入れると吸引力が強いため、自発呼吸が出来にくくなるので注意して ください。

資料提供 坂出市消防署 笠井さん


web担当者より

 皆様はどちらの考えが正しいと思いますか。お考えをお聞かせ下さい(連絡先:愛媛大学医学部救急医学 越智元郎 gochi@m.ehime-u.ac.jp

 また私たちは、救急車が到着するまでに、異物除去法として掃除機の使用を含みどのような方法が行われ、その効果や合併症がどうかについて、余り調べられていないのに気づきました。そこでそれぞれの消防本部で、1998年1年間に、気道異物の通報によって出動した事例を、詳細に調べてみることにしました。これはできるだけ多くの消防本部が協力して下さると、より正確な結果を導くことができます。多くの消防本部(支所単位でも結構です)の方々が調査に加わって下さることを希望します。

 資料

  1. 研究のプロトコル(案)
    データ記録用紙(案)

  2. 気道異物に対する救急隊員並びに市民による異物除去の検討
    (平成11年度自治省消防庁委託研究 報告書)

 調査に関する問い合わせや申し込みは、以下までお願いいたします。

竹田 豊 kkta@smn.enjoy.ne.jp
出雲消防署
TEL0853−21−6926
FAX0853−21−6927


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