乳児の突然死撲滅キャンペーン

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質問1 母乳と人工乳について

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質問1 母乳と人工乳について

(980723)

 現在七ヶ月目になる女の子の母親です。SIDSについて今色々な所で 話題になっています。特に私が気になるのは危険因子の中に人工乳だと 危険度が高くなるという点でした。母乳の方が危険度が低いと言われ ますが人によっては母乳が出ない、あるいは少ないというのがあります。 私も量が少なくて人工乳に頼らざるを得ません。人工乳のどういう点が いけないのか、又、どういう点に気をつければいいのか教えて下さい。 それから子供がよく熟睡している時にいびきをかくときがあります。 これは何か危険なことの前触れなのでしょうか。


回答1:愛媛大学 越智元郎

      Subject: [neweml: 03700] Fwd:母乳と人工乳 
      From: Genro Ochi  
      Date: Thu, 23 Jul 1998 23:37:21 +0900 

 愛媛大学の越智元郎です。私共の「乳児の突然死撲滅キャンペ
ーン」をご覧いただき有難うございました。

 ごらんになられたと思いますが、厚生省ホームページの「平成
10年6月1日 乳幼児突然死症候群(SIDS)対策に関する検討会
報告」では、わが国における調査結果から SIDSに対する母乳栄養のリス
クについて、以下のようにまとめています。
http://www.mhw.go.jp/houdou/1006/h0601-2.html
|「人工栄養」は、「母乳栄養」に比して約 4.8倍程度SIDS
|  発症のリスクが高まることが示唆される。

 栄養方法による発症率の違いについては以前から指摘されていましたが、
私共のホームページにも書きましたように、
|(SIDSは)母乳児に少ない。これは somoke exposed SIDSは哺乳力が弱
|いために、母乳で育てることが困難な事が多い。
という考え方もあります。これは人工栄養が SIDSの原因になるというよ
りも、SIDSを招く要因と、人工栄養を必要とする要因が重なっていること
を示唆しているのかも知れません。人工栄養(原因) → SIDS(結果)と
いうことが証明された訳ではないと思います。

 人工栄養を要する児では、ある意味ではそれがベストの育て方であり、
SIDSの率が高いと言われてもご両親は不安になるだけではないかと思いま
す。私共がお願いしたい点は以下のような所です。

1)乳児を持つご両親や保育関係者には、SIDSの危険因子などをよく理 
  解した上で、ゆったりとした気持ちで育児にあたっていただきたい
  と思います。禁煙など、可能な範囲で努力する価値があると思いま
  すが、改善しようのない点について心配し過ぎるのは逆効果だと思
  います。

2)もし発症した場合に早く対応できるように、できれば短い時間間隔
  でお子様の様子を観察する習慣をつくっていただくのがよいと思い
  ます。

3)乳児を持つご両親や保育関係者には、もしお子様の無呼吸や心停止
  に気づいた時に、的確に119番通報や心肺蘇生法などを実施する事が
  できるよう、あらかじめ訓練を受けていただきたいと思います。

 (私共も各地で乳幼児の救命救急講習会を計画していますが、お近く
  の消防本部や日赤支部にご相談されましたら、講習会の機会を設け
  て下さると思います。)
  
4)SIDSに備えた救急対応は窒息や溺れなどの、お子様のほかの事故や
  急病にも応用が可能です。さらにこれらの知識や技術は、乳幼児よ
  りも大きな子供さんや成人、お年寄りへの救急対応にも大変役に立
  ちます。

 いびきについては、顔色がよく、呼吸に伴う胸郭の動きがスムーズで
したら問題はないように思います。頭の向きや枕(頭の下に薄いタオル
などを敷いている時)の高さなどを変えると、いびき様の呼吸音が軽減
するかも知れません。呼吸が頻回となり苦しそうで、吸気のときに胸の
上部や喉仏の下部が陥凹するような時は、異物などによる気道閉塞が疑
われ、用手的な気道確保や異物除去の処置が必要となります(勿論、消
防本部にもすぐ通報をして下さい)。

 本日はご連絡をいただき有難うございました。

        〒791-0295,愛媛県温泉郡重信町志津川 
              愛媛大学医学部救急医学教室 越智元郎 
              TEL 089-960-5710(直通),FAX 089-960-5714
                http://apollo.m.ehime-u.ac.jp/GHDNet/jp/


回答2:金沢大学 住田 亮

      Subject: [neweml: 03703] Re: Fwd:母乳と 
      From: Ryo Sumita 
      Date: Fri, 24 Jul 1998 10:31:57 +0900 

住田@金沢です。

>>母乳の方が危険度が低いと言われ
>>ますが人によっては母乳が出ない、あるいは少ないというのがあります。
>>私も量が少なくて人工乳に頼らざるを得ません。

以前から感じていたのですが、行き過ぎた母乳育児啓蒙運動によって母親の悩みをか
えって増やしているのではないかという気がします。母乳育児を絶対のものとして勧
めるあまり人工乳の完全否定になり、成長障害を来した例というのも見聞しています。
SIDS予防のキャンペーンも「できれば母乳育児が望ましい」くらいの表現で良いの
ではないでしょうか?母乳育児のすばらしさは十分わかっているつもりですが、母乳
育児が出来ないお母さんの悩みもくみとってあげるべきです。人工でも母乳でも児の
発育には差がないのが現状で、ただその育児環境(児とのふれ合い等)が問題なので
はないでしょうか? ただし、新生児期・乳児期初期には母乳栄養が母子共に有利で
あることは間違いなく、この時期は特に母乳栄養が望ましいのは云うまでもありませ
ん。

ご質問の例では、子供さんが 7カ月であればもう人工乳で全く問題なく、離乳を進め
ていけば良いと考えます。

**********************************************************
金沢大学医学部小児科                                                       
                     
                                          住田 亮
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回答3:市立秋田総合病院 円山啓司

      Subject: [neweml: 03707] Re: Fwd: 母乳と人工乳 
      From: Keiji Enzan  
      Date: Fri, 24 Jul 1998 22:16:51 +0900 

円山です。
今回の厚生省の報告で、母乳児に少ないと書かれています。しかし、母乳児と人
工乳児の出生体重(未熟児の有無)との間に差があったかかどうかはわかりませ
ん。未熟児で生まれた子供の方が人工乳で育てられている比率が高いと思います
ので、今回の結果は母乳と人工乳の相違というよりは未熟児との関係で説明でき
るのかもしれません。個人的には、未熟性と関係があるように思っています。人
工乳で育てられた赤ちゃんが使用していた乳首の種類によっては、ほ乳力の必要
なものから弱くてもほ乳可能なタイプまでいろいろあるようです。人工乳で育て
られている赤ちゃんの使用している乳首についての検討も必要ではと思っていま
す。もしほ乳力が弱いため、ほ乳しやすい乳首を使用していた子供の割合が多け
れば、未熟性との関係で説明つけられます。これはある一面からみた結果であ
り、SIDSすべてを物語っているわけでもありませんし、危険因子をすべて除いた
から、もう安全だとも言えません。
我々の周りには常に危険のものが存在するとの認識を持ち、ゆったりとした気持
ちで子供と接しながら、育児に心掛けて戴ければと思います。親と赤ちゃんとの
スキンシップは子供の成長にとって非常に大切なものです。

いびきをかかれるのは、扁桃腺等が大きくなって、空気の通り道が狭くなってい
るのかもしれません。いびきをかいても、息を吸ったときに、胸が上がっている
ようであれば、まず問題はないと思います。普段いびきをかかない子供がいびき
をかくようであれば、扁桃腺が腫れている可能性があります。熱があるかチェッ
クしてみましょう。
息を吸ったときに、胸が上がらないのであれば、要注意です。いびきをかいてい
た赤ちゃんがいびきをかかなくなった場合は、まず胸が上がるかもう一度みてみ
ましょう。(危険なサインかもしれません)。

http://apollo.m.ehime-u.ac.jp/~enzan
http://www.alles.or.jp/~enzan119

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