善意に法的責任なし

(毎日新聞 6/07/94)

情報提供:河野 満(9/03/96、eml 1602)


 事故の第三者が応急手当をしたことで被害者の容態が悪化しても、第三者には 法的責任を問われないーーー。総務庁の「交通事故現場における市民による応急 手当促進方策委員会」(座長・川井健 創価大教授)は6日、現行法の免責制度を 明確にし、この周知徹底を求める報告書をまとめた。また、応急手当をした第三 者が血液感染など二次災害に巻き込まれた場合について、補償範囲の拡大や十分 な補償金の支払など制度改善を求めた。

 1992年の調査によると、救急隊が通報を受けてから現場到着まで平均5.5分もかかり、この間の応急手当が重要とされている。しかし、同年の「交通安 全に関する世論調査」では、一般市民による応急手当が積極的に行われていない 理由として、「方法が判らない」(69.2%)に続いて「かえって症状が悪化 すると責任を問われかねない」(36%)が 2番目になり、法的責任の問題が、 応急手当普及の大きな障害となっていることが分かった。

 このため、同庁は法律、医療関係者らでつくる同委員会を昨年7月に発足させ、 これまで明確でなかった民間人による応急手当について法律関係を検討してきた。

 報告書は、法的義務でなく道義的問題の応急手当について、民法の「緊急事務 管理」に当たり、「法律的には悪意または重過失がない限り、善意で実施した救 命手当ての結果に民事的責任を問われることはまずない」とした。また、刑事上 も、救命手当は「社会的相当行為」として違法性を問われず、「注意義務が尽く されていれば過失犯は成立せず、その注意義務の程度は医師などに比べて低い」 とした。

 報告書は、こうした現行法の免責制度を周知徹底することの重要性を強調して いる。同庁は今後、各地の応急救護講習などで、報告書をもとに、法的責任への 不安を感じることなく応急手当ができる事を説明し、応急手当の普及に力を入れ ることにしている。


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