ARCチェアマン Ian Jacobs、2008年4月2日 |
オーストラリア蘇生協議会(Australian Resuscitation Council: ARC)によるCPRガイドラインは、現在、以下のように推奨している。
上記の推奨は、国際蘇生連絡協議会(International Liaison Committee of Resuscitation: ILCOR)の後援を受けて行われた、大規模な蘇生科学の国際的検討を受けて取りまとめられたもので、2005年11月に出版された1。それ以降、CPR中に人工呼吸を行っても、胸骨圧迫のみを行う場合と比較して、生存率に関して特段のメリットがないことを示唆する多くの研究結果が報告された。これらの研究はマスコミでも声高に取り上げられ、ガイドラインを変更して胸骨圧迫のみのCPRを推奨せよとの声につながった2-4。
2008年3月、アメリカ心臓協会(American Heart Association: AHA)は、バイスタンダーがCPRの訓練を受けているか否かにかかわらず少なくとも胸骨圧迫のみのCPRを行うべきであると推奨する、声明を発表した。救助者が訓練を受けていてCPRに自信がある場合は、従来どおり、胸骨圧迫と人工呼吸を30:2の比率で行うべきであるとしている。この声明は、従来よく報告されているようにバイスタンダーの多くがCPRに消極的で、病院外心停止の生存率が低いことも認めている5。
その後オーストラリア蘇生協議会(ARC)は最近のエビデンスを広範囲に検討して来たが、それらが現行ガイドラインの変更を正当化するに足るものとは認められなかった。今回の判断に際して、ARCは以下の点を考慮した。
以上により、オーストラリア蘇生協議会(ARC)は現行のガイドラインを変更しないことを決定した(the ARC recommends no change)。ARCを初めとする各国の蘇生関連団体は引き続き、新たな科学的データが得られ次第それを速やかに評価し、その知見の裏付けの基にガイドラインを策定して行くものである。なお、本勧告声明が示す推奨内容はヨーロッパ蘇生協議会(European Resuscitation Council: ERC)の推奨内容とほぼ一致している。
まとめると、ARCの推奨内容は次の通りである。
参考文献
1. [全訳] International Liaison Committee on Resuscitation. Consensus on Science and Treatment Recommendations. Resuscitation 2005;67:181-314.
2. [全文] [和文抄録] Iwami T, Kawamura T, Hiraide A, et al. Effectiveness of bystander initiated cardiac only resuscitation for patients with out of hospital cardiac arrest. Circulation 2007;116:2900-7.
3.[Abstract] [和文抄録]Nagao K, Cardiopulmonary resuscitation by bystanders with chest compression only (SOS-KANTO): An observational study. Lancet 2007;369:920-6.
4.[全文] [和文抄録]Bohm K, Rosenqvist M, Herlitz J, Hollenburg J, Svensson l. Survival is similar after standard treatment and chest compressions only in out of hospital bystander cardiopulmonary resuscitation. Circulation 2007;116:2908-12.
5.[全訳]http://circ.ahajournals.org/cgi/reprint/CIRCULATIONAHA.107.189380