アメリカ心臓協会(AHA)の心肺蘇生法ガイドライン 2005 第10部(2) ECCにおける中毒学
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■薬剤による緊急症:心停止前 ■要約(Summary) □参考文献 |
この章では中毒学的問題がある患者治療に対する勧告を示している。 (訳者註:この中には)エビデンスに基づいた勧告もあるが、この領域でのほとんどの中毒学的研 究は主には小規模な症例累積研究(LEO 5) 、症例報告および動物研究(LEO 6)からなっている。 そのため、これらの勧告の多くは専門家が合意したということにとどまっており(many of these recommendations are based on expert consensus)、これらを 根拠のあるものとするためには、更なる研究が必要である。
臨床医が未知の物質を摂取した病歴を持つ患者を診るかもしれない。 そのような場合、臨床医は一般的な中毒症候とその治療方法について 知っていなければならない。 そのときの診療の助けになるように(to assist during such encounters)、 表1に薬剤による心血管系の緊急徴候やバイタルサインの変動、 考慮される可能性のある治療方法、禁忌もしくは慎重に行うべき治療について 列挙した。
臨床医が摂取した物質がわかっている病歴を持つ患者に遭遇することもある。 その時に臨床医はその物質から合併症を予測し、それらを治療する準備を しなければならない。 表2には心毒性の可能性のある薬剤、毒性による症候 および考慮すべき治療について列挙してある。
薬剤による心血管緊急症またはバイタルサインの変化* | 考慮すべき治療法+ | 禁忌となる介入(もしくは注意して行う) |
徐脈 |
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頻脈 |
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伝導障害/心室性不整脈 |
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高血圧緊急症 |
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急性冠症候群 |
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ショック |
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急性コリン性症候群 |
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急性抗コリン性症候群 |
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オピオイド中毒 |
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中毒患者(訳者註:の病状)は急速に悪化する可能性がある。
ヘルスケア・プロバイダーは頻回に気道、呼吸、
循環の評価を行い、必要があればその補助をしなければならない。
特殊な毒物や拮抗薬を同定するために、中毒センターや中毒の専門家に相
談することが必要かもしれないが、最優先事項は気道、呼吸、循
環の補助である。
傾眠や昏睡状態にある患者では、胃洗浄をする前、誤嚥の危険性を減らすた
めに迅速導入による気管挿管(rapid sequence
intubation)を行う。
胃洗浄は、致死的な量の薬物や毒物を摂取した患者、もしくは摂取して 1時
間以内と思われる患者のみに推奨される7。
ベンゾジアゼピン中毒をフルマゼニルで拮抗することは、ベンゾジアゼピ
ン依存症の患者8〜12、三環系抗うつ薬のような
痙れん作用のある薬物を同時に服用した患者(coingestion
of proconvulsant medications)の重篤な毒性と関連している
(is associated with significant toxicity)。
しかし、ベンゾジアゼピンが鎮静目的で(for
procedural sedation)使用された場合、過度の鎮静作用
に対し拮抗をすることは有用であろう13。
このように、「コーマカクテル」プロトコル(訳者註)として
フルマゼニルをルーチンに使用することは推奨できない。
オピエート中毒は一般的に、呼吸抑制から呼吸不全あるいは呼吸停止を引き起こす。
ヘロインの過量摂取は呼吸抑制を起こすことがあり、また、しばしば肺水腫
をきたす。
オピオイドの呼吸に対する作用は拮抗薬であるナロキソンによって急速に拮抗
される(rapidly reversed)。
病院内でのオピオイド中毒の管理においては、慢性的中毒でなく心血
管系疾患がない患者であれば、気道が維持され高流量の酸素が投与され
ている状態で、前もって人工呼吸をすることなくナロキソンを投与する
ことで治療に成功してきた(LOE: 414,15; 516,17; 718) 。
しかし、病院外では、救急隊員がオピオイドによる呼吸抑制のあるすべての
患者に対して、ナロキソンを投与する前に人工呼吸(バッグマスクによる
陽圧換気)を行ったとき、より有害事象が少ないというエビ
デンスがある(成人の場合 LOE 519-21、小児の場合は症例
報告からの推定(extrapolated from pediatric cases) LOE 722,23; LOE 824)。
人工呼吸の前にナロキソンを投与された患者に認められる有害作用は、心
血管系疾患や慢性的なてんかん状態が原因である可能性があり、このよう
に一部の症例ではナロキソンの危険性が誇張されて報告されている
可能性があった。
一般的にオピオイド過量摂取疑いがある
場合の治療として、ナロキソン投与の前に換気の補助を試みるべきであ
る。
しかし、ナロキソン投与による重篤な合併症はまれで、オピオイドによる
呼吸抑制の効果的な拮抗が気管挿管を不要とする可能性があるので、挿管の前
(すなわちバックマスク換気時)にこれを投与してよい(may be administered)。
ナロキソンは静脈内、筋肉内、経鼻、皮下の各経路から
投与できる。(訳者註:しかし)
静脈内投与が好ましい。
患者が既に気管挿管されており静脈路がない場合には、他
のルートから投与するより少し高用量が必要となるかもしれないが、ナロキ
オピオイド過量摂取に対するナロキソンの気管投与を支持する
エビデンスとしては単に事例(症例報告)があるだけである。
(訳者註:それゆえ)静脈内や他のルート(皮下、筋肉内)の方が気管投与より好ましい。
ナロキソンの作用時間はおよそ 45〜70分間である。しかし、オピ
オイドの経口摂取や過量摂取では、呼吸抑制が 4〜5時間持続する可能性がある。
このように、ナロキソンの臨床的効果は重篤なオピオイド過量摂取の効果ほ
ど長く続かない可能性があるので、ナロキソンを繰り返し投与することが
必要となる場合がある。
オピオイドに拮抗(をリバース)する場合の目標(the end points)
は完全な覚醒でなく、適切な気道反射と呼吸(訳者註:の維持)である。
オピオイドからの急速な離脱(acute withdrawal)は交感
神経系の興奮と激しい不穏状態を引き起こす。
肺水腫と心室性不整脈はあまり一般的な合併症ではない。
オピオイド依存症が疑われる患者、特に心血管系疾患を合併し
ている場合は、オピオイド中毒に対するナロキソンでの拮抗は注
意して行う必要がある。
緊急の場合、推奨される成人の投与量は 0.4 〜 2 mgの静注、0.4 〜 0.8 mgの
筋注か皮下注で、必要に応じて繰り返す。
オピオイド過量摂取例の中にはナロキソンが
短時間内に総投与量で 6〜10 mg必要となることがある
(may require titration to a total naloxone dose of 6 to 10 mg)。
慢性オピオイド中毒患者に対しては、心血管系の副作用や離脱
症状を最小限にするため、より少ない量を用いゆっくりと調節していく(titrate slowly)。
オピオイドによる心停止患者に対してナロキソンが転帰を改善するという
良質なエビデンスはない。
このように、いったん心停止が起これば、ナロキソンを使用す
る前に、通常のACLSガイドラインに従って気道確保を含む蘇生処置を行
うべきである(Class IIa)19-21。
本項では最初「opiate」が使われているが、その後「opioid」のみとなっ
ている。粗訳担当者には原著者が両語に意味の違いを設けて使っているとは
思えず、たまたまそのような表現になったものと考えている。
なお、MedlinePlus の medical dictionaryでは以下のように記載がある。
また、日本麻酔科学会の用語集には、あへん(阿片)剤 opiate、オピエート(アヘン)作用薬 opiate agent、オピオイド(アヘン様合成麻酔薬) opioid などの記載がある。
中毒や薬剤の過量摂取による血行動態的に重篤な徐脈は標準的なACLSプロト
コルに対して難治性(refractory)である可能性がある。なぜなら、ある毒物
は受容体に結合したり、直接的な細胞毒性を起こすからである。
そのような場合は特異的な解毒薬による治療が必要となる。
アトロピン投与は有機リン、カルバメート、神経ガス中毒に対しては救命
的(lifesaving)なものになるだろう(LOE 4)25。
アセチルコリンエステラーゼ拮抗薬による徐脈に対して、
アトロピンは初回 2〜 4 mg投与され、総量では大量のものが必要になるだろ
う。
プロバイダーは必要により、薬局に大量(例えば、20〜40mgかそれ以上)
のアトロピンを準備するように連絡する(notify)べ
きである。
イソプロテレノールはβ遮断薬による難治性の徐
脈には高用量で有用かもしれないが、アセチルコリンエステラーゼによる
徐脈には禁忌である。
ジゴキシンやジギタリス配糖体中毒に伴う心ブロックや心室性不整脈はジ
ゴキシン特異的抗体フラグメント療法により効果的に治療できるであろう
(LOE 5)26。
抗体特異的治療はジギタリス配糖体を含む植物や中国の漢方薬(Chinese
herbal medications)による中毒にも効果的である(LOE 2,827,28;
LOE 526)。
経皮的ペーシングは中毒や過量摂取による軽度から中等度の、血行動態的に重
篤な徐脈(mild to moderate hemodynamically significant bradycardia)
に対しては効果的であろう。
薬剤による血行動態的に重篤な頻脈は心筋虚血、心筋梗塞や心
室性不整脈を引き起こし、高心拍出性心不全とショックを起こす可能性があ
る。
アデノシンとカルディオバージョンは毒物が体内に残存している
状況では有益とはならないであろう。
しかし、薬剤による頻脈性不整脈でアデノシンが奏効するものもある(LOE 5)29。
低血圧のボーダーラインにある患者は、更に血圧が下がる可能
性があるので、ジルチアゼムとベラパミルの禁忌となる。
ジアゼパムやロラゼパムのようなベンゾジアゼピンは、交感神経刺激薬によ
る血行動態的に重篤な頻脈のある患者に対して安全で効果的である。
大量のベンゾジアゼピンを中毒や過量摂取の治療に用いる場合は、その鎮静
作用が呼吸抑制や防御的気道反射の消失を招く可能性があるため、患者の
意識レベル、呼吸努力および呼吸機能を注意深く観察しなけれ
ばならない。
フィゾスチグミンは純粋な抗コリン薬中毒による血行動態的に重篤な頻脈、
中枢性抗コリン性症候群に対して用いられる(preferable)特異的な解毒薬である30。
フィゾスチグミンは、過量に投与されたりあまりに急速に投与されると、
大量の気管・気管支分泌物(頻回な吸引が必要となる)、痙攣、徐脈
ひいては心静止といったコリン作動性クリーゼ
(cholinergic crisis)の症状を引き起こすことがあるので、注意して投
与しなければならない。
抗コリン薬中毒の患者はしばしばベンゾジアゼピンのみで管理できる。しか
し、少なくとも一つの臨床研究は、フィゾフチグミンを適切に使うことで、
より優れた結果をもたらすであろうことを示唆した(LOE 4)30。
フィゾスチグミンは三環系抗うつ薬過量摂取による抗コリン症状に対して使用するべきではない。
中毒の専門家や地域の中毒センターに相談することが推奨される。
ベンゾジアゼピンは内因性カテコラミン放出の効果を減弱するので、薬剤に
よる高血圧に対する第一選択の治療薬>である。
薬剤による高血圧の後に低血圧が起こりうるし、血圧をきちんとコントロールできるとは限
らないだろう(aggressive control of blood pressure may not be warranted)。
このことから、ベンゾジアゼピンによる治療にも難治である
患者に対しては、ニトロプルシドのような短時間作用性の降圧薬が奨
められる(preferred)。
プロプラノロールのような非選択的β遮断薬は交感
神経刺激薬による中毒では禁忌である。
α受容器への刺激を伴うβ受容器のブロックは高血圧を悪化させてしまう31。
αおよびβ遮断薬であるラベタロールは
薬剤性の難治性高血圧の患者に対する、第三の治療として、注意して使うことが
できるであろう。
コカイン過量摂取の患者では急性冠症候群(ACS)が進行する可能性がある。
過剰な交感神経系刺激による頻脈と
高血圧によって引き起こされた冠動脈の攣縮のために冠虚
血となり、その結果 ACSが起こる。
線溶薬は、薬剤によるACS、特に重篤な高血圧がある場合に使われるとき、
利益より危険性が高いと考えられている、そのため、もし使用するなら注
意して使用すべきである32。
線溶薬や冠拡張薬の冠動脈内投与は末梢投与より望ましい。
コカイン過量摂取でおこる血管攣縮がニトログリセリンと
フェントラミンで拮抗されることが、心臓カテーテル検査で示されている。
(訳者註:これに対し)ラベタロールには有意な効果がなく、
プロプラノロールは悪化させる33-36。
このため、コカインによるACSに対して、ニトログリセリンと
ベンゾジアゼピンが最初に用いられる薬剤、フェントラミンが次に使われる
薬剤であり、プロプラノロールは禁忌である。
ラベタロールがコカイン中毒に奏効したという散発的な報告は
ある。しかし、この薬剤の使用については、これが痙攣のような中枢神
経作用への影響をもたらすことなく、薬剤(訳者註:コカイン)による
末梢交感神経系の亢進症状に拮抗する(blocks the peripheral signs
of drug-induced sympathetic excess)ものであるため、意見が分かれ
るところである37,38。
エスモロールとメトプロロールは低血圧を引き起こす可能性がある39。
患者が急に低血圧を伴う QRS幅が広いリズムに
変化したら、薬剤による心室頻拍(VT)の可能性があり、除細動
の適応がある。
もし、患者が不安定で多形性のVTであれば、
高エネルギ−(除細動の用量)で非同期ショッ
クを行う。
血行動態的に安定している、薬剤によるVTの症例では抗不整脈薬が適応となる。
薬剤による単形性VTの多くの症例ではリドカインが第一選択の抗不整脈薬となる。
三環系抗うつ薬や他のナトリウムチャネル拮抗薬による中毒例では、タイプIA、IC
や他のナトリウムチャネルをブロックする抗不整脈薬(例えばソタトール)は、
相乗的な毒性の危険性があるため禁忌である。
三環系抗うつ薬中毒に対するフェニトインの効果と安全性は疑問視されてお
り、もはや推奨されない40,41。
マグネシウムは薬剤によるVT症例に対して有効なこともある(LOE 542)が、
薬剤による低血圧を悪化させることもある43,44。
治療のために投与したあるいは中毒で摂取した様々な薬剤がト
ルサードドポアンツを引き起こす可能性がある。
トルサードドポアンツの患者には、た
とえ血漿中のマグネシウム濃度が正常でも、マグネシウムの投与が推奨され
る(Class IIa)。
治療に関するまとめとして、
薬剤による多形性VTに対する本ガイドラインの推奨治療に関し
て、その安全性と効果ともにレベルの高い研究では確認されていない(クラス未確定)。
高張食塩水とアルカリ化薬の全身投与
(systemic alkalinization)は、カルシウムチャネル拮抗薬
(例えば:プロカインアミド、フレカイニド)や三環系抗うつ薬中毒による
VTを防いだり、止めたりするかもしれない(LOE 5)46,47。
重炭酸ナトリウム液の投与により全身のアルカリ化がはかられ、副次的に高張食塩水が投与され
る。上記薬剤に伴う伝導障害の治療に有効なのは(訳者註:重炭酸イオンでなく、副次的に投与さ
れる)高濃度塩化ナトリウムなのかもしれない(訳者註)
48。
不整脈と低血圧に対して重炭酸ナトリウムを使うとき、アルカリ化の目標と
して 1〜2 mEq/Kgを繰り返しボーラス投与し、動脈血pHを 7.45〜7.55に維持す
る。
重炭酸による治療の適切な目標pHについて調べた
研究はないが、このpHの範囲は一般的に受け入れられ、理にかなっている。
150 mEq/Lの重炭酸ナトリウムと 30 mEq/Lの KClを 5%ブドウ糖液
に加えた維持輸液が推奨される(クラスIIa)。
QRS幅が 100 msecを超えるか、低血圧が進行する急性代償不全に対しては、
重炭酸ナトリウムのボーラス投与は、前もって血漿中pHを測定することなく
使用される。
カルシウムチャネル拮抗薬を過量摂取した成人に対する重炭
酸ナトリウムの使用を推奨する、またはこれに反対するための十分な
エビデンスはない(クラス未確定)。
カルシウムチャネルブロッカーとβ遮断薬の過量摂
取によって重篤な伝導障害となる可能性がある。
これらの患者では、アドレナリンのような変時作用性のアドレナリン作動薬、
高用量のグルカゴン(このことを支持するデータは動物研究に限られた、不
十分で基礎的なものではあるが)、もしくは可能性としてはペーシングを必
要とするだろう50。
ある種の薬剤や化学物質(例えば亜鉛塩)は消化管より過量の体液喪失を
引き起こし、さらに純然たる(pure)循環血液量減少を引き起こす。
しかし、薬剤によるショックでは通常(typically)、心収縮
力の減弱と SVRの低下を伴う心血管系の機能不全が起こり、これらに
対しては輸液療法と心筋補助の両方を必要とする。
初期治療には相対的な循環血液量減少を補正し前負荷を適
切にする、輸液負荷が必要である。
心毒性のある薬剤による中毒では、うっ血性心不全によって輸液投与の許容量と反応
が制限されるかもしれない。
輸液量の調節には肺動脈カテーテルによる中心血行動態のモニタリングが
必要となるかもしれない。
輸液療法に反応しない患者では、変力作用薬(inotrope)か血管収縮薬
もしくはその両者が必要になるかもしれない。
最初の薬剤としてドパミンがしばしば推奨される
しかし、ある種の薬剤(例えば、カルシウムチャネル拮抗薬)の過量摂取
によるショックでは、様々な心血管作動薬の投
与とその調節が必要となるであろう。
血液分布量異常性ショックでは、心拍出量は正常(時に高値)で全身血管抵抗(SVR)は減少する。
ノルアドレナリンやフェニレフリンといったαアドレナリン作動薬が必要と
なるかもしれない。
症例報告では、バソプレッシンもまた有用かもしれないことを示唆してい
る51。
エンドテリンのような更に強力な血管収縮薬はまだ米国では使用できない
し、十分には研究されていない。
これらの薬剤を使用するときには心室性不整脈に進展しない
かどうか注意する。
注意:ドブタミンとイソプロテレノールはさらにSVRを下げて低血圧を悪化
させるので使用しない。
薬剤による心原性ショックでは心拍出量が低下し SVRが減少する。
これらの患者は心虚血を伴うかもしれない。
同定された中毒物質によっては、輸液量の調節とドブタミンのような交感
神経作動薬の使用に加え、イナムリノン(アムリノン)、カルシウム、グ
ルカゴン、インスリン、そして時にイソプロテレノール(or even
isoproterenol)などによる変力作用的補助(inotropic support)が
が必要となる54。
同時に、血管収縮薬による治療がしばしば必要となる54。
電気的除細動は薬剤を原因とするVTや心室細動のために脈の
ない患者、そして多形性VTのある循環動態が不安定な患者に対して妥
当である。
難治性VFのある交感神経作動薬中毒の症例では、アドレナリン投与の間隔
を広げ標準投与量のみを使用する。
コカイン過量摂取の場合プロプラノロールは禁忌である。
プロプラノロールは交感神経作動薬中毒には禁忌と考えられていた。
しかし、いくつかの症例報告はエフェド
リン、シュードエフェドリン過量摂取の治療には有用かもしれないことを
示唆している55。
中毒もしくは過量摂取の患者、特にカルシウムチャネル拮抗薬の中毒患者では、
より長時間心肺蘇生を
行うのが当然であろう(LOE 5)56。
重篤な中毒患者の中に、長時間(例えば、3〜5時間)の心肺蘇
生を受けた後によい神経学的転帰をみた(recovery with good
neurologic outcomes)例があること報告されている52,53。
体外循環(膜型人工肺)は重篤な中毒患者の蘇生で、成功裏に使用されてい
た57。
脚注:「Circulation」誌のこの特別増刊号は http://www.circulationaha.org において無料で入手できる。
References
■薬剤による緊急症:切迫心停止
(Drag-Induced Emergencies: Prearrest)
opiate=1 : a drug (as morphine, heroin, and codeine) containing or derived from opium and tending to induce sleep and to alleviate pain; broadly: NARCOTIC、2 : OPIOID
opioid=1 : any of a group of endogenous neural polypeptides (as an endorphin or enkephalin) that bind especially to opiate receptors and mimic some of the pharmacological properties of opiates -- called also opioid peptide、2 : a synthetic drug (as methadone) possessing narcotic properties similar to opiates but not derived from opium; broadly : OPIATE■要約(Summary)
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