Part 9: Stroke
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2005コンセンサス会議では急性脳卒中管理に関連したエビデンスを評価した。急性脳梗塞からの生存と回復の為に は、脳卒中の早期警告症状を迅 速に認識すること、搬送先の病院へ脳卒中であることを到着前に知らせて脳卒中の傷病者を迅速に救急車で搬送するこ となどを促進するシステムと プログラムの確立と、効率よく効果的な脳卒中の治療が出来る病院システムの確立が必要である。経静脈的(静注)線 溶療法は急性脳卒中の罹病率 を減少させるのに効果的であるが、厳格なプロトコルを用い、また治療成績を向上させる努力をしている急性期脳卒中 治療システムにおいて行なわ れなければならないことが証明されている。この章では脳卒中のトピックスを病院前の治療、線溶療法、そして病院内 における急性期治療に分けて 述べることにする。
酸素投与(W241)
灌流不全と低酸素状態が組み合わさると虚血性脳傷害は増悪し範囲が広がり、脳卒中の予後を悪化
させる。酸素投与は、脳梗塞
の体積(範囲)を少なくすることを示唆する少数例における無作為化臨床試験(LOE2)が一つあるが、もっと多数例で
の臨床試験(LOE3)において
は、脳梗塞の患者にルーチンに酸素を投与しても臨床的効果が無いことが示されている。対照的に、低酸素状態ではな
い脳卒中の患者に酸素を投与
することに関しては、酸素投与の頻度が高い熱心なストローク・ケア・ユニット(脳梗塞専門ユニット)で治療された
患者の機能予後と生存率が改
善していることを示したいくつかの研究結果(LOE7)をもとに、間接的にではあるが、その適応が支持されている。
推奨される治療:
低酸素状態にある脳卒中の患者には、医療者により、病院前と入院後に酸素を投与する事が推奨さ
れる。低酸素状態に無い脳卒
中の患者に酸素を投与することが良いかどうかに関しては賛否両論あり、酸素を投与するかどうかは個々の医師が個別
に検討しても良い。
病院前での脳卒中評価ツール(W238)
科学的なコンセンサス:
パラメディックが脳卒中の患者を見分ける標準的な訓練をつむと、脳卒中の患者を見分ける感度は
61%〜66%である(LOE5)。これ
が脳卒中の評価ツールの訓練をつんだ後では、感度は66%〜97%にまで上昇する(LOE3,LOE4,LOE5)。
推奨される治療:
パラメディックは、Cincinnati Prehospital Stroke ScaleやLos Angeles Prehospital Stroke
Screenのような妥当性のある、
簡便な病院前の神経症状の評価ツールを用いて脳卒中の見分け方の訓練をされるべきである。
病院前のトリアージ(W240A)
科学的なコンセンサス:
研究レベルとしてfairレベルからgoodレベルの研究デザインの成人の集められた症例集積研究
(ケーススタディ)(LOE5)とそ
れに付随するpoorレベルの研究(LOE7とLOE8)からのエビデンスでは、病院外で発症した脳卒中の可能性のある患者に
おいて、脳卒中専門病院へ搬
送することによって、より病院内での患者到着から最も重要な脳卒中評価を完了するまでの時間が短くなり、また死亡
率が減少することが示されて
いる。しかし脳卒中の可能性のある患者を脳卒中専門病院へ搬送することそれ自体については、安全性、適切性、また
その臨床効果に関して現在ま
でのところは証明はなされていない。この問題に関する臨床治験は現在進行中である。
推奨される治療:
初期のレベルの低いエビデンスでは、脳卒中の患者を脳卒中センターへ搬送することの利点が示さ
れたが、このことはより厳密
なエビデンスレベルで調査・解析されなければならない。
経静脈的(静注)線溶薬投与(W245)
tPAの経静脈的投与(静注)は、NINDSの示す症例選択基準と治療計画のプロトコルがしっかり守ら
れた上で、成人の急性虚血性
脳卒中の患者に発症(症状の出現)から3時間以内に病院内で医師により行われた場合に、機能予後がgood〜excellent
となる可能性がより高いと、
レベル1の研究で証明された(LOE1)。成人における質の高い(good〜excellent)レベル1の研究では、治療の開始が早
いほど高い治療効果が得られ
る可能性大きいことも証明されている(LOE1)。いくつかの研究で、推奨された適応基準からはずれた症例にtPAが使わ
れた時には、症候性の頭蓋内
出血の頻度が高いことが報告されている(LOE5)。
推奨される治療:
明確なプロトコルを持ち、治療に精通した脳卒中チームが治療にあたり、献身的な努力をしている
施設で、NINDSの選択基準に
合致した急性虚血性脳卒中の患者に対して、という条件を満たす場合には、経静脈的に(静注で)tPAを投与すること
が推奨される。いかなる遅延
も避け、できる限り早く治療を開始することを推奨するための強いエビデンスがある。
すべての病院が安全に線溶療
法を行うために必要な人材・
資材を組織できるわけではないが、救急部のあるすべての病院では、その病院で急性虚血性脳卒中の患者をどのように
治療するかが記載された計画
書・手順書を持つべきである。その計画書には、急性脳卒中の患者の治療における医師や医療従事者の役割、どのよう
な患者に対してその病院では
線溶療法を行うか、いつ専門の脳卒中ユニットのある病院に転送するのが適切なのか、などが詳細に記載されているべ
きである。急性脳卒中が疑わ
れる患者の緊急のCTやMRIは、読影に熟練した医師により迅速に読影されるべきである。
経動脈的(動注)線溶薬投与(W246)
二つの成人を対象にした前向き無作為化研究(LOE1とLOE2)と、さらに、症例集積研究とメタ分析
(LOE3とLOE5)において、急性虚
血性脳卒中の患者に発症から6時間以内にプロウロキナーゼ、ウロキナーゼ、tPAが経動脈的投与(動注)された場合、
1〜6ヵ月後の NIH Stroke
Scale とmodified Rankin Scaleが改善することが示された。
推奨される治療:
標準的な経静脈的(静注)線溶療法の適応とならない急性脳卒中の患者に対して、発症から6時間以内で、必要な人
材と資機材のあるセンターで
あれば、経動脈的(動注)線溶療法を行うことを考慮してもよいかもしれない
脳卒中ユニット(W239)
複数の無作為化臨床試験とメタ分析、それに付随する研究において、病院内の専用の脳卒中ユニッ
トで専任の職員が急性脳卒中
の患者の治療に当たった場合には、1年後の生存率と機能予後において、一貫した改善と費用の減少が示されている
(LOE1)。
推奨される治療:
脳卒中で入院した患者は、脳卒中の治療に熟練した集学的チームにより治療された場合に転帰が改
善している。したがって、入
院が必要な脳卒中の患者は、空床があれば、脳卒中ユニットに入院するべきである。
血糖値のコントロール(W244A)
前向き比較コホート研究(LOE3)と、付随するいくつかの研究(LOE4,LOE5,LOE7)において、高血糖の
脳卒中の患者では転帰がより
不良であったことが示された。しかし急性虚血性脳卒中の患者の血糖値を積極的にコントロールすると転帰が改善する
ことを直接的に示したエビデ
ンスは存在しない(LOE2)。脳卒中以外の重症患者においては、インシュリンを用いて高血糖を治療すると生存率が改善
するというエビデンスがある
(脳卒中に対してはLOE7)。
推奨される治療:
American Stroke AssociationやEuropean Stroke Initiative Guidelineとの一貫性を保つため、
入院後、病院内においては急
性脳卒中の患者に対して、血糖値>10mmol/L(約200mg/dL)の場合にはインシュリンの静注または皮下注を考慮してもよ
い。
低体温療法(W243,W243B)
コクランデータベースにおけるレビューでは、急性虚血性脳卒中の患者にルーチンに低体温療法を
行うことを支持するエビデン
スは、前向き無作為化比較試験(LOE7)から得られなかった。二つの、少数例を同時対照患者とともに観察したの観察比
較研究(LOE3)では、脳卒中の
患者を冷却ブランケットや冷却ヘルメットを用いることで、合併症を増加させずに35.5°C(97.9°F)まで冷却できる実
現可能性が示された。
同時に観察する対照患者10例とのオープン観察比較試験(LOE3)では、合併症を最小限に抑えて急性
虚血性脳卒中の患者を32°C
から33°C(89.6°Fから91.4°F)まで冷却することができた。しかし、2つの少数を集めたの症例集積研究(ケーススタ
ディ)(LOE5)(うち一つは血
管内から冷却する方法を用いた(LOE5))では、33°C(91.4°F)まで冷却することと、重篤な合併症を起こすことの間に
関係が認められた。中大脳動
脈閉塞による重症脳卒中で脳浮腫のある25例を集めた症例集積研究(ケーススタディ)では、33°C(91.4°F)までの冷
却では、冷却と合併症の関係
についてはどちらともいえない結果であったが、患者の最終転帰は不良であり、対照群がないために合併症率を評価す
ることが困難であった。これ
らの症例集積研究において報告されている合併症は、復温時の反動的な頭蓋内圧亢進、重篤な凝固障害、心不全と不整
脈、肺炎と感染症などであっ
た。これらの一連の報告において、脳卒中の発症から冷却までの時間や、冷却の方法と程度、復温の方法、線溶療法を
行ったかどうか、等に関し
て、ばらつきがあり均一ではなかった。
一つの、少数例を集めた症例集積研究では、意識があり人工呼吸をしていない脳卒中の患者を冷却
マットレスを使って「低正常
体温」(目標36°Cから37°C[96.8°Fから98.6°F])に維持することの実現可能性が示された。
推奨される治療:
急性虚血性脳卒中の患者の治療にルーチンに低体温療法を行うことは、それを支持する科学的エビ
デンスも否定する科学的エビ
デンスも未だ不十分である(Class Indeterminate)。
■病院前の場合
■線溶療法
■病院内での治療
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