日本では異物による気道閉塞により年間2700人が死亡する。
(欧州蘇生会議 第5回学術集会・抄録、2000年6月、アントワープ)
竹田 豊、越智元郎*、畑中哲生**、白川 洋一*
出雲市外4町広域消防組合、愛媛大学医学部救急医学*、救急救命九州研修所**
日本では年間7000人が窒息で死亡する。窒息の主たる原因は食物に関する物だと考え
られているが、その詳細は依然不明である。さらに、日本では窒息事故に対する処置
の教育が一貫しておらず、一般市民の間に混乱を来たしている。この研究の目的は気
道異物による窒息事故に関する社会統計と臨床的背景を明らかにすることである。人
口11,874,648人を管轄する96消防本部において、1998年の気道異物事故の搬送記録を
調査した。一般市民によって行われた異物除去努力、異物のタイプと医療従事者から
得られた臨床的情報について、死亡率と合併症発生率との関係を調査した。810件の
異物事故の原因は、餅18.3%、ご飯10.7%、肉4.8%であった。全体の死亡率は31.3%で
、これは日本全体(人口126,000,000人)では2700人の死亡に相当する(2.2 死亡 /
100,000 /年)。背部叩打を行ったのは36.8%、指拭法は10.0%、ハイムリック法は1.5%
で、それらの成功率(それぞれ、64.0%, 76.5% and42.9%)には統計学的有意差はなかっ
た。ロジスティックモデルを用いた多変量解析の結果、生存率に有意な影響を与える4
つの要因が明らかになった。これらの要因とそのオッズ比は、性別(男):0.65( CI:0.49-0.87), 年齢:0.974(CI:0.967-0.981),異物のタイプ (餅):0.56(CI:0.39-0.79), 市民による異物除去努力の有無:3.0(CI:2.2-4.0)であった。この結果は、一般市民による気道異物除去努力が、患者の生存率にもっとも大きな影響を及ぼすこと、今後も気道異物事故に対する市民教育を推奨する必要性が大きいことを示唆している。
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