照会先:厚生省健康政策局指導課
目 次
(1) 病院前救護体制におけるメディカルコントロールと評価について
ア.病院前救護に関するメディカルコントロールの不在
イ.救急業務において実施されている処置及び指示体制の実態
ウ.メディカルコントロールとは
ア.直接的メディカルコントロール(オンライン・メディカルコントロール)のあり方
イ.間接的メディカルコントロール(オフライン・メディカルコントロール)のあり方
(1) 病院前救護体制を構築する主体となる救急医療協議会について
ア.現状と課題
イ.救急医療協議会(二次医療圏単位)の機能強化
(2) 地域の救急医療体制及び救急搬送先の確保体制について
ア.救急医療体制の一元化について
イ.救急医療情報センター(広域災害・救急医療情報システム)について
(3) 病院前救護体制への医療機関の取り組み
ア.現状と課題
イ.病院前救護体制への医療機関の積極的な参加・支援方策
(2) 救急救命士の業務内容の充実
ア.電気的除細動
イ.器具を用いた気道確保
ウ.薬剤の投与
エ.その他の救急救命処置
(1) 現状と課題
ア.救急救命士の卒前教育及び国家試験
イ.救急救命士の就業前教育及び生涯教育
ウ.救急救命士の養成体制
救急救命士制度の意義は、医師の指示の下で「救急救命処置」を行う救急救命士が消防機関内の資格としてではなく、病院前救護体制の充実を図るために、国家資格を有する新たな医療関係職種として位置付けられたことである。
病院前救護における救急救命士による医療の提供が法的に位置付けられた一方、病院前における医療の質を確保するという観点からは、これまで救急救命士制度が運用されてきた中で救急救命士が救急救命処置を実施する際の医師の指示体制のみならず、平時からの継続した教育体制や救急救命処置の事後評価をも含めた、いわゆる「メディカルコントロール」の体制は全国的に整備されておらず、今後はこの「メディカルコントロール」の体制を充実強化することが救急医療及び救急搬送業務に携わる関係者に課された火急の責務である。
本検討会は、平成7年の行政監察結果に基づく勧告や平成9年の救急医療体制基本問題検討会報告書において、救急救命士の業務内容の見直しを行うべきとの指摘を受け、効果的なメディカルコントロール体制の確立と、救急救命処置の効果評価に基づく業務内容の検討、さらに、これらに見合う教育体制のあり方について、平成11年6月より5回にわたり検討を行った。
ア.病院前救護に関するメディカルコントロールの不在
イ.救急業務において実施されている処置及び指示体制の実態
ウ.メディカルコントロールとは
病院前救護体制における「メディカルコントロール」とは、救急現場から医療機関へ搬送されるまでの間において、救急救命士等が医行為を実施する場合、当該医行為を医師が指示又は指導・助言及び検証してそれらの医行為の質を保障することを意味するものである。すなわち、病院前救護においてメディカルコントロールは、傷病者の救命率の向上や合併症の発生率の低下等の予後の向上を目的として、救急救命士を含めた救急隊員の質を確保するものであることから、地域の病院前救護体制の充実のための必須要件であるとみなすことができる。
メディカルコントロールは、下記のように整理される。
<直接的メディカルコントロール>(オンライン・メディカルコントロール)
(例示)
<間接的メディカルコントロール>(オフライン・メディカルコントロール)
a.前向き(事前)の間接的メディカルコントロール
b.後ろ向き(事後)の間接的メディカルコントロール
ア.直接的メディカルコントロール(オンライン・メディカルコントロール)のあり方
イ.間接的メディカルコントロール(オフライン・メディカルコントロール)のあり方
ア.現状と課題
イ.救急医療協議会(二次医療圏単位)の機能強化
ア.救急医療体制の一元化について
イ.救急医療情報センター(広域災害・救急医療情報システム)について
ア.現状と課題
イ.病院前救護体制への医療機関の積極的な参加・支援方策
特定行為に係る指示要請を行う時機については、時間的な損失を可能な限り少なくし、効率的な医師の指示体制を確保する必要がある。
ア.電気的除細動
イ.器具を用いた気道確保
ウ.薬剤の投与
エ.その他の救急救命処置
オ.今後の対応
ア.救急救命士の卒前教育及び国家試験
イ.救急救命士の就業前教育及び生涯教育
また、一部の消防機関では病院内実習等の長期の生涯教育を通じ、将来的に指導者として後輩救急救命士の教育に当たる救急救命士の養成を行っている。
ウ.救急救命士の養成体制
その後、財団法人日本救急医療財団の中に厚生省、文部省、消防庁、警察庁等の関係省庁、日本医師会、日本救急医学会、日本麻酔学会、日本循環器学会等の関連学会及び消防機関、日本赤十字社等の関係団体によって構成される「心肺蘇生法委員会」が平成11年7月に発足し、本年度中に我が国における心肺蘇生法の標準化とその講習方法の確立し、引き続き蘇生法一般の研究開発を行うこととしている。
今後はこれまで以上に心肺蘇生法の官民挙げての啓発・普及に努めるとともに、我が国における心肺蘇生法の標準化を早期に実現し、講習実施機関ごとに同じ手法で 講習が実施できるよう、講習テキスト等の標準化を図る必要がある。
今後の展望
心肺停止患者の救命率を向上させるためには、救命効果検証委員会の調査分析結果から明らかなように、救急現場又は搬送途上における心拍再開の割合を高めることが喫緊の課題である。また、科学的な根拠に基づき、充実したメディカルコントロールの下で、必要な資質を備えた救急救命士による救急救命処置の高度化を図ることは、大きな社会的要請となっている。行政機関等の関係機関及び関係者は、本報告書における指摘事項について、引き続き施策の企画立案及び実施に積極的に取り組み、メディカルコントロール確立のために必要な財源措置を講ずるなど早急に救急救命士制度を含めた病院前救護体制の基盤整備を更に充実させ、地域社会の要請に応えるべきである。
本報告書における指摘事項の趣旨を踏まえ、すべての関係者は、病院前救護体制が、地域住民が日々安心して暮らせる社会を構築していく基本(セイフティ・ネット)であることを再認識する必要がある。その上で、既存の価値観や権益にとらわれず、地域住民の生命・健康を第一に考えた、「健康大国日本」にふさわしい病院前救護体制が構築されることを願ってやまない。
(参考)
平成11年度医療技術評価総合研究事業
Endotracheal Intubation & Confirmation
1:プレホスピタル・ケアにおける気道管理の手段として,気管挿管の必要性は明かであるが,現状では必要な体制が整っていないため,具体的な体制づくりについて,早急に検討を行うべきである。
2:救急救命士が気管内挿管を行うことについては,下記ような要件等が満たされ、必要な体制が整うことが条件となる。
3:一地域に留まらず,全国規模での救急救命士の特定行為における事後検証やEBM確定のために弛まぬデータ集積を行うことが重要であり,共通のデータ・フォーマット/テンプレートの作成および記録,さらにその解析が今後のプレホスピタル・ケアの方向性を探る上で重要となる。
はじめに
1.病院前救護体制におけるメディカルコントロールについて
(1) 病院前救護体制におけるメディカルコントロールと評価について
(2) 病院前救護におけるメディカルコントロール体制の確立2.地域における病院前救護体制を支える体制作り
(1) 病院前救護体制を構築する主体となる救急医療協議会について
(2) 地域の救急医療体制及び救急搬送先の確保体制について
(3) 病院前救護体制への医療機関の取り組み3.救急救命士の業務内容について
(1) 救急救命士の業務に対するこれまでの評価
(2) 救急救命士の業務内容の充実
(3)救急救命処置録の内容と開示について4.救急救命士の教育と養成
(1) 現状と課題
(2) 救急救命士の教育内容(生涯教育を含む)及び養成体制の充実方策5.心肺蘇生法の啓発・普及
6.その他の事項
(1) ドクターヘリの導入
(2) 病院前救護体制の充実を実現するための支援
「プレホスピタル・ケアの向上に関する研究」
─気管内挿管とその確認法─ストレチャー
分担研究者:美濃部 堯 (財団法人日本救急医療財団)
研究協力者:中川 隆 (名古屋市立大学病院救急部)
谷川 攻一 (福岡大学救命救急センター)
金子 高太郎(県立広島病院救命救急センター)【結語】